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技術かセンスかという使い古された二元論によって今後の商業写真を考えてみる回(会)
僕がもし、写真家になりたい学生に"おじさん、技術とセンスどっちが大事なの?"と聞かれたらどう答えよう。
当然、そんな二律背反ではなくどちらも大事だよという大人の答えが大半であると思うが、僕は敢えて"そりゃセンスに決まってるだろ"と答えてしまいそうだ。
独学マンである僕のポジショントークでもあるが。
技術とセンスの話は、旅行に例えるとわかりやすい。
技術は乗り物を含めた移動手段であり、センスはどこを目的地にするかだ。
この両者が比較的固定されているのが写真作家で、いつも同じ目的地(自分が行きたい場所)に同じ手段で向かい、その行為そのものが価値を生む。
近年これら写真作家に商業界からオファーがあり、その結果アウトプットのクオリティがコントロール出来なかったというトラブルをよく耳にするが、これはオファーした側が作家の価値を全く理解していないという事に問題がある(作家も安易に引き受けるべきではないとは思うが)。
これは毎回東京から青森までチャリで何ヶ月もかけて行くという行為そのものが評価を受けている作家に、"同じ東北だし秋田まで日帰りで行ってくれませんか"と頼むようなものだ。
その作家の価値は"なぜそのプロセスを経てそこに行くのか"で、産み出された視覚的情報(だけ)ではないからだ。
ちょっとわかりずらいか。
商業写真界に話を戻すと、これは常に相手ありきである。
"ちょっと都会に疲れちゃったから、どこか暖かい所でゆっくりしたいなぁ"というクライアントに"じゃあハワイに行きましょう"と言うのか、"じゃあ南仏のどこそこに行きましょう(知らんけど)"と提言する能力がセンスで、"そこに行くには〇〇航空でどこどこ経由で行くのがいいですよ"というのが技術である。
前者は絶対的な正解の無いある種の情緒的な価値で、後者は"速く正確に"の機能的価値だ。
当然、商業写真界の頂点に君臨するプレイヤー達はどちらも兼ね備えている。
生息するジャンルによってその比重は変わってくるが(広告は目的地を決めてくれる人が他にいるから技術偏重で、ファッションはそれがいないのでセンス偏重など)、高いレベルで融合されていることは間違いない。
では技術はあるけどセンスがない場合はどうか。
本来奥多摩に車で行くべきところを、ラオスの秘境にジェット機を乗り継いで行ってしまうかもしれない(予算の話は置いといてね)。
もう戻れないのである。
仮に早期に"あ、間違った"と気付いても、変更した目的地がまた間違っていたりする。
こういうどこにも着陸できずに長ーーーい時間、大空を彷徨うジャンボジェットを実はよく見かける。
センスはあるけど技術がないケースはどうだろう。
ここでも確かに問題は起きる。
目的地は明確にわかっているのだけど、どうやってたどり着いていいのか分からないのだ。
ただ、最悪徒歩で向かえる。
"じゃあ海外はどうすんだ"、などと言われそうだが、そんな遠方に行かなければならない案件は、この問いを考察しているフェーズではやって来ないから安心して欲しい。
つまり
技術もセンスもある > センスしかない > 技術しかない
だ。
更に今世の中はHow toで溢れているので、"センスしかない"人はその目的地に合わせて都度学べばいいが、"技術しかない"人にセンスを教えてくれる人はいない。
そんな需要に応えるべくYoutubeチャンネルを開設したので、興味のある人は観て欲しい(この集客の為にこのnoteを書いているわけではないよ)。
前置きが異常に長くなったが、ここでコロナ後の商業写真について考えてみたい。
早速、撮影そのものをオンラインにそのままトレースした形のリモート撮影や、モデルが自宅で自らを撮影するセルフィ型の撮影が出現した。
先の旅行の例で言うと、前者は "航空業界が崩壊した為もう陸路で国内を旅行するしかありません!" で、後者は "いや、もう旅行とかいいから現地の人に映像撮らせてそれを見せて" といった感じか。
両者に技術的な違いは殆どなくなり(むしろ前者の方が制約あり)、あとはセンスとブランドの勝負となるだろう。
"あれ、もうセルフィでいいんじゃない?"という流れには抗えないし、前者で生き残るのは、"立派な自家用ジェットを持っているのにわざわざ車で連れて行ってくれる〇〇先生"というブランド価値を有している人だ。
写真センスのあるモデルと強力なブランド価値を既に有している御大。
それ以外の持たざる者は淘汰される可能性が出てきた(もちろんゼロイチではない)。
ここで僕ら、その他商業写真家とその志望者に残された道は二つ。
センスを尖らせ、"国内のここにもこんな秘境がありますよ!"でブランド価値を地道に築くか、"そもそも旅行である必要ある?"というゲームチェンジャーとなるか。
冒頭で僕が学生に話した(夢の中で)、技術センス二元論の答えは益々信憑性を増してくる。
いや、でも撮れるモデルが強いかなぁ。
という実現可能性5%の空想の話。
*上の写真は未来のアンドロイドを描いたストーリーをインドネシアの雑誌に掲載したというカオス
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