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2022年 年間ベストアルバム 30

パンデミックは落ち着きを見せ始めたと思えばロシアによるウクライナ侵攻が始まった2022年。
それ以外でも国内外含め嫌なニュースが目立った。
フィクションであってくれと思うことも多く疲弊した人も多くいただろうと思います。
自分も疲弊していたが、ポップミュージック、映画、そして今年はワールドカップなど多くのポップカルチャーに救われた年でもある。
こういう時にポップカルチャーが好きで良かったと思う。
何よりこんなタフな時代、社会でこんな最高の作品を作っている人間がいる事実に感動しかない。
もちろんそのタフの時代、社会を創作意欲に繋げて制作しているクリエイターも多くいるだろうが、ただ怒っているだけでなくポップカルチャーとして成立させていることに感動している。

今回はそんなポップカルチャーの2022年の総括としての年間ベストアルバム発表です。
今年は30枚選びました。
今年の特徴としてポストパンデミックということでライブ興行が完全にストップしていた欧米のアーティストはライブの現場が戻ってきて「もう踊るしかないよね!」というモードでハウスミュージックを大胆に取り入れているアーティストも多く、自分が選んだアルバムの中にも多く入っている。
また2010年代後半日本以外の全世界的にカルチャーの真ん中にあった北米のラップは2020年代に入り落ち着きをみせグローバルの音楽界の景色は変化してきている。
その中でも大きくグローバルで躍進をみせているのがナイジェリアを中心としたアフロビーツ。今回30枚からは漏れてしまったがWizkid、Burna Boyの新作は素晴らしかった。

そしてアジアでいうとK-POPは相変わらず強い。NewJeansはEPだったから今回入れませんでしたが最高です。特に新曲の「Ditto」はヤバすぎ。

そして88risingがコーチェラのメインステージに出演したのもアジア的には大きな出来事である。
最後にわれらが日本のガラパゴス化は相変わらずですが、来日公演は活況で特にサマソニでの海外アーティストのステージにも多く人が集まった景色は意外だったけど嬉しい出来事。
これがポストパンデミックのブーストがかかっていただけなのかは来年以降見ていかないと分からない。
そして藤井風の「死ぬのがいいわ」のTikTok経由バズは誰も予想できなかったが、最高に嬉しいこと。

今パッと浮かんだ2022年を書いただけでもこれだけあって、もうシーンなど存在しないくらいいろんなカルチャーが混ざりあって、人によって見えている景色は全く違う、そんな2022年だった。

10年後、2022年がどういう年だったか振り返ったとき人によって出てくるアーティストの名前はバラバラだろう。
そういう時に各メディアが作っている年間ベストなどは語る軸になる。
そういう観点で自分は今年の年間ベストを作りました。
最高だったな!というアルバムであることはもちろんのこと、後から振り返ったときに2022年に存在感のあったアーティストを選ぶことを意識しました。
昨年同様トップ10には簡単にコメント残しました。(気が向けば他の作品にもコメントするかも。。)
それでは年末年始のお時間あるときにでもチェックして頂けたら幸いです。


30.Preacher's Daughter - Ethel Cain


29.Lowlife Princess: Noir – BIBI

28. Fragments - BONOBO


27. The End of Yesterday - ELLEGARDEN


26. I Love You Jennifer B – Jockstrap


25. Girls – aespa


24. Sometimes, Forever - Soccer Mommy


23. HEROES&VILAINS - Metro Boomin


22. roman candles|憧憬蝋燭 - Laura day romance


21. Mr. Morale & The Big Steppers - Kendrick Lamar


20. Hellfire - black midi


19.AFJB – AFJB


18. Wet Leg - Wet Leg


17. The Car - Arctic Monkeys


16.Honestly, Nevermind – Drake


15. Actual Life 3 - Fred Again..


14. プラネットフォークス - ASIAN KUNG-FU GENERATION


13.SOS – SZA


12.Hold The Girl - Rina Sawayama


11. Harry's House - Harry Styles


10.Natural Brown Prom Queen - Sudan Archives

サウンドが多彩過ぎて聞くたびに発見があって面白い作品。
R&B、ソウル、ヒップホップ、ディスコなど全18曲でいろんなビートがどんどん耳に飛び込んでくる体験は最高です。
何よりイヤホン、もしくはかなり良いスピーカーで聞かないと聞こえないような音の音色にも拘りが強く表れている。
最初聞いた時は良い曲が数曲あるな、くらいの印象だったのに聞くたびに自分の体もSudan Archivesの音楽にフィットしていくのが体感しどんどん曲の聞こえ方が変わり今ではかなりお気に入りの作品。
2022年を代表する作品だと思います。


9.NO THANK YOU - Little Simz

2021年に『Sometimes I Might Be Introvert』という大傑作アルバムをリリースし英国最高峰の音楽賞マーキュリー賞を受賞したLittle Simzは12月にサプライズで新作をリリースした。
各メディアが年間ベストを確定させた後くらいにリリースしたのはたまたまではなく完全にそういったものから距離を置きたいからだろう。
傑作をリリース後に予定していたアメリカツアーは資金面で中止した。
傑作アルバムを出そうとも周りから評価されようとLittle Simzはインディーアーティストで資金面が良くなることは無くツアーは出来なかった。
そういったストレス、業界への不満などがラップされた作品が今回の『NO THANK YOU』。
前作と異なり軽やかで聞きやすいサウンドだが、ラップは前作以上に研ぎ澄まされ鋭角で入ってくる。
今一番パンクなアティテュードなのはLittle Simzかもしれない。


8.Three Dimensions Deep - Amber Mark

「Mixer」という曲でドはまりしてアルバムを待ちわびたアーティストの一人でしたが2022年にようやくリリースされました。
なんか一応デビューフルアルバムの扱いのようです(『3:33am』という作品の扱いがよくわかってません。)。
いきなり傑作R&B作品を作り上げてしまったAmber Mark。
ビートが多種多様で複雑化しているように思うが、スモーキーな歌声で歌われる歌はかなりキャッチーなものでポップに仕上がっていると思います。
日本でももっと聞かれてほしいのでみなさんぜひ一度聞いてみてください。そして来年は来日公演をぜひ。


7.Dawn FM - The Weeknd

The Weekndの最高傑作なのでは?と個人的に思っています。
もちろん初期の作品が最高という方が多いのは分かるのですが、The Weeknd史上大衆性のある作品で一枚通して多くの方が好きになる要素が詰まっていると思います。
「How Do IMake You Love Me?」から「Take My Breath」への繋ぎが最高で何度聞いても痺れます。
そして驚きの亜蘭知子「Midnight Pretenders」のサンプリングをした「Out of Time」も最高。
個人的に一番好きなのは「Less Than Zero」。
自分はポップで死ぬほどキャッチーなものが好き。


6. Special – Lizzo

Lizzoの作品にあまりハマっていなかった自分だが今作は何回も聞いている。
ひたすらポップでキャッチー。
人種や体型などで誹謗中傷を受け辛い想いもしているだろうが、自分を肯定しポジティブな空気を纏ったアルバム。
弱さを知っている強さをもったLizzoだからこそできる優しく、この作品を聞いてくれている人にあなたはSpecialだと伝えるメッセージの強さ、両面を持った傑作アルバム。


5.Capricorn Sun – TSHA

こういう音楽ってみんな好きなんじゃないの?何で盛り上がってないの?って今年一番思った作品。
Ninja Tune所属の次世代スターだと個人的には思っています。もうひたすらキャッチーでポップで最高です。
リリース直後はこれが今年のNo.1って思うほどだったのですが、年末に冷静に今年リリースの作品をいろいろと聞いていたらこの順位になりました。でも本当にずっと最高。


4.MOTOMAMI – Rosalía

ジャケットに驚かされたが作品のビートには更に驚かされた。
鋭利なビートで耳を突くが、そこに乗っかってくる歌は少し甘ったるいRosalíaの歌声。
このミスマッチがクセになるし、定期的に鋭利なビートで耳を突いてほしいし、甘ったるい声が体にまとわりついてほしい。
そんな最高のアルバム。
そして日本人としてどうしても耳に残ってしまう日本語タイトル、日本語詞。違和感があるが結果的にこれまたクセになる。
今パートナーのRauw Alejandroと日本に遊びに来ているしぜひ来年は二人とも来日公演をしてほしい。


3. Being Funny in a Foreign Language - The 1975

現行の海外アーティストで、日本で一番人気があるアーティストと言っていいThe 1975の新作。
今年のサマソニのライブからも分かったように、今のThe 1975はバンドであること、仲間と音楽をやる楽しみを改めてかみしめる、そんなモードのように思う。

だからこそ5枚目にして一番シンプルで、良いメロディが並ぶ名刺代わりの作品が出来上がった。
そして今一番の売れっ子プロデューサーJack Antonoffを招聘した作品でもある。Jack Antonoffみを一番感じるのは「Part of the Band」。
打ち込みでは絶対できない、人が演奏している楽器の音だからこその点として捉える音ではなくモザイク状に拡がる音を録る、これこそがJack Antonoffの特徴だと思っているので、それが一番感じられかつThe 1975に無かったタイプの曲なのでアルバムの代表曲だろう。
ただ個人的に一番好きなのは「About you」。
この曲のアウトロは一生聞いていたい。最高。
4月での単独ライブが楽しみで仕方ない。


2.BADモード - 宇多田ヒカル

リリース前の時点で収録曲のほとんどは既発曲でそこまで期待していなかったこのアルバム。
リリース直前?直後?にFloating Pointsプロデュース曲が3曲も入っていることが発表され驚かされたとともに一気にテンションが上がった。
1曲目、中盤、そしてラストに配置していることも絶妙で既発曲の聞こえ方も変わったし、ちゃんと一つの作品として全く飽きることなく終始聞ける。
個人的には宇多田ヒカル史上最高傑作だと思っています。
Floating Pointsと共作した「Somewhere Near Marseilles ーマルセイユ辺りー」は長い曲だけど何度聞いても最高。
あと何度も書いているかもだけど既発曲の「Time」のキックとスネアの音は最高。
この構成は2010年代後半の北米ラップミュージックの形式されたしまった構成に近いけどスネアの入るタイミングが微妙にズレたりしていてこの曲の中でも時間の感覚をズラしていることにいつも感動してしまいます。
宇多田ヒカルの新作レビューみたいになりそうだからこの辺にしておきます。笑


1.Runaissance – Beyoncé

今年はここ数年の中でも1位を決めるのが難しい年だった。
ただ2022年を象徴する作品を聞かれた時、この作品は欠かせない。
そういう意味で数ある1位候補からBeyoncéの『Runaissance』を2022年の1位に選んだ。
パンデミックで完全にライブ興行がストップした2020年はTaylor Swiftの傑作『Forklore』『Evermore』に象徴されるように内省的なムードがあったが2021年あたりからライブ興行も少し戻りつつあり、そして今年2022年は海外の大型フェスも通常通り開催され、もう踊るしかない!というムード。
そんなパンデミック経ての2022年のムードが一番詰まった作品はこの作品。
ハウスを始めディスコ、アフロビーツなどこの作品を聞いていてフロアで踊ることがテーマにあることが分かる。
フロア、フィジカルを取り戻すことと切り離せない性的マイノリティも当然テーマになっている。
2020年代的社会的な問題と失ったものを取り戻す2022年を誰も文句のつけようのない歌声で強く美しく歌っていて、もうこれ以上ないく作品に仕上がった。
実はこのBeyoncéの『Runaissance』は3部作の1作目とのこと。
このレベルの作品があと2枚もあると思うとお腹いっぱい感が既にあるのだが楽しみで仕方ない。ちゃんとリリースされるかは知らないが。。笑



今年のトップ10にバンド(グループ)はThe 1975のみ、男性アーティストはThe 1975とThe Weekndの2組のみと狙ってはないけど昨年に引き続き今っぽい結果になりました。
ただ昨年年間ベストの記事にも書きましたが、パンクの復権は遠くないと思う。
実際今年の30枚からは漏れたがAvril Lavigneの新作もパンクで素晴らしかったし、来年にはParamoreも新作が控えています。
今回の30枚にも入れたSoccer Mommyの新作はパンクとは言えなくてもこの2組のエッセンスは凄く感じるアルバムだったし、来年はこの2組に強く影響を受けているであろうOlivia Rodrigoが新作を出すとか出さないとか。
パンクは女性のもの、しかもソロアーティストのものになりつつありますが着実に戻ってきていると思います。
そうなると「バンド」がどうなるのか今後も気になりますね。
来年の夏フェスのラインナップやその他フェスのラインナップにバンドがどういう位置づけになっているか気にしつつ、とりあえず全体のラインナップがもう既に気になって仕方ないですね。

それでは来年もよろしくお願いします。


Telkina

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