サンタはどこにも居ないんだって
「サンタさんって居なかったんですね。」
私がそうやって笑うと、今更ですかと笑う。
私の「居ない」という言葉の真意を知る由もない事がありがたい。軽やかに笑い飛ばしてくれるから、私は今日も嘘くさく軽やかに笑える。
母親が出ていって、父親がクリスマスを恋人と過ごすようになった頃には、何時に寝たって誰も文句を言わなくなった。
私のサンタはもうどこにも、「居なくなった」のだ。
もう誰も、サンタが居ると嘘ついて「何が欲しい?」と聞いては来ない。「いい子にしてないとサンタさんが来ないぞ」なんて言われもしない。
大人はもう、私達に見向きもしない。
そんな当たり前の事が、まだ少し寂しいうちに、わたしのサンタは居なくなった。
それでも家に帰り、あかりをつけて、食卓を飾ろう。部屋を暖かくして、火を絶やさず。
サンタはどこにも居なかった。
私が少し頑張って、夢の続きを作ろうと思う。
私に赤い帽子を乗せて、まだ誰かがもう少しでも、綺麗な夢が見れますように。
メリークリスマスの続きをしよう。
サンタはどこにも居ないんだなんて、貴方が悲しくならないように。
最低なことして最高になろうよ