自死の特異日に思う事　今、つらい人逃げて　そして周辺の大人達へ

今年は２学期の始業式が、今日、9月2日(月)になっています。そう、多くの生徒の皆さんにとって憂鬱な日の始まりでしょう。

そして、学校に行きたくない方にとっては、憂鬱どころでは無い地獄の門が再度開くような苦しみでしょう。

周りの大人や世間は、つらくても地獄の門をくぐれと言うと思います。そして、始業式の校長のくだらない長話の中に、「全ての先生方は君たちのことを大切に思っているから、困っている事があったら遠慮無く相談してください」と言うでしょう。

もし、まともな相談が出来ていれば、今のあなたはつらくないはずです。こんな薄っぺらい表面だけの言葉は信じられないですよね。

いいんだよ。逃げてください。地獄の門をくぐらないでください。

私は、よく生徒達にこんな話をしていました。(実は、大人向けの研修にも使ったことがありますが....)

もしゴジラが来たらどうする？　みんな逃げるでしょ？　生徒達は頷きます。　それはそうです、人に手には終えない事態なのですから。　そして続けます。いったん逃げて、体勢を立て直してゴジラに立ち向かったって良いじゃ無い。　でも、どうしても立ち向かえないほどゴジラが強大な存在なら逃げっぱなしでいいんだよ。強大なゴジラに立ち向かって死んでしまうなら、逃げて逃げて逃げてそこで暮らせば良いじゃ無い。死んだら、何もも残らないのだから。

ツナミが来たら、高台に逃げます。この度の迷走？台風10号でも、風や大雨の被害が想定されたとき、『緊急安全確保』が発令されました。(『緊急安全確保』の前に避難を完了するのが想定なので、この宣言が出された場合には『逃げる』には該当しませんが）要するに、命を守ってくださいという事です。

最近は、社会契約説も受験との関連が薄いからと教えない場合もあるようですが、近代民主主義国家に取って一番大切な価値は『いのち』です。

国家も憲法も基本的人権も『いのち』を守るために存在します。(だったら、なんで戦争という人の殺し合いをするんだ。当然の疑問です。別の機会にちゃんと解説します。)

だから、『いのち』が脅かされる時には逃げて良いのです。誰が何と言おうと逃げてください。

その結果、何かあるかも知れません。またつらい思いをするかも知れません。そうだとしても、私はあなたに死んでほしくない。あなたの存在を知ってしまった私の魂は、全力であなたの生存を願っています。あなたが死んでしまったら、本当に悲しい。

に・げ・て！

周りの大人達へ

『(2024年8月)３１日夕方、ＪＲ横浜駅に直結する商業施設から１７歳の女子高校生が飛び降り、下を歩いていた３２歳の女性が巻き込まれました。
２人は死亡が確認され、警察が当時の詳しい状況を調べています。
３１日午後６時前、横浜 西区のＪＲ横浜駅に直結する商業施設の屋上広場から女子高校生が飛び降り、下を歩いていた会社員の女性が巻き込まれました。
２人は、意識不明の重体で病院に運ばれましたが、その後、死亡が確認されました。
警察によりますと、飛び降りたのは千葉県君津市の１７歳の女子高校生で、巻き込まれたのは横浜市緑区の３２歳の会社員の女性だということです。
現場は当時、大勢の買い物客などでにぎわっていて、警察は当時の詳しい状況を調べています。』首都圏 NEWS WEBより

またか。忸怩たる思いです。背景は定かではありませんが、新学期が始まる前に死に至ったのでしょう。

そして最悪なのは、巻き添えの女性も死んでしまった事です。

きっとこう思う方がいるでしょう。迷惑なやつだ。死ぬのなら、一人で誰にも迷惑を変えずに死んでくれと。

私の見解は違います。おそらく無意識に自分自身の存在を知ってほしいと考え場所を選んだろうなと。

無論、巻き込まれた方は不運という以外の何物でも無く、立派な殺人な分けですから自死を図った事を肯定するものではありません。そして、巻き込まれてしまった方のご冥福をお祈りするばかりです。

でも、防ぐことが出来なかった死なのか、本当に後悔が残ります。

ちなみに、刑法には「自殺罪」罪はありませんが、「自殺幇助罪」というのはあります。もし、自殺が刑法で認められたものなら「幇助罪」は成立しませんので、自殺は条文いなくてもしていいこととの認識は誤りだと考えます。

皆様は、よくご存じでしょうが、実は日本は自死大国です。

厚生労働省の統計　https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/suii09/deth8.html　によると

10～14 1.悪性新生物 2.不慮の事故　3.自殺
14～19 不慮の事故/自殺
20～24 自殺
25～29 自殺
30～34 自殺
35～39 自殺

となっています。14～19 不慮の事故/自殺はどちらか判然としない場合があるからでしょう。

ただ、10～14 1.悪性新生物 2.不慮の事故　3.自殺　も十分恐ろしいと思います。

そして、年間の自死者数は、21000人ほど。一時期の34000人からは大分減りましたが多い人数です。(東日本大震災の死者数は15844人ですから、とんでもなく多い数字だと思います)

また、G7の中で自殺率は一位です。厚生労働省　7 海外の自殺の状況　https://www.mhlw.go.jp/content/r5hs-1-1-07.pdf

直近では、2023年の自殺者数は2万1818人（暫定値）で、うち小中高生は507人で、過去最多の22年に次ぐ水準で高止まりしています。

文科省も看過は出来ないので、「18歳以下の日別自殺者数（平成27年版自殺対策白書（抄））」https://www.mext.go.jp/content/20200824-mext_jidou01-000009294_011.pdfで以下の様に述べています。

『18歳以下の自殺者において、過去約40年間の日別自殺者数をみると、夏休み明け
の９月１日に最も自殺者数が多くなっているほか、春休みやゴールデンウィーク等の
連休等、学校の長期休業明け直後に自殺者が増える傾向があることがわかる。

学校の長期休業の休み明けの直後は、児童生徒にとって生活環境等が大きくかわ
る契機になりやすく、大きなプレッシャーや精神的動揺が生じやすいと考えられる。こ
のような時期に着目し、彼らの変化を把握し、学校や地域、あるいは家庭において、児
童生徒への見守りの強化や、児童生徒向けの相談や講演等の対応を集中的に行うこ
とは効果的であろう。』

なので、校長は学期はじめの話しに上記なようなものを挟み込んできます。また、担任各位には、今日の朝の時点で登校していない生徒を把握し副校長に連絡すること。また、欠席者に連絡を取り、生存確認しろとお達しが出ます。

担任は、新学期初日から業務が煩雑になるわけですから、あいつも来ていないなんて悲鳴が聞こえてきます。

で、大抵は病気だったりサボりだったりするのですが、上から言われてやっていることだし、それにめったに自殺者なんかいないと高を括っていますから、事務的な対応に終始して終わります。

これでは、いざと言うときに担任を当てにするわけがありません。

新学期の初日、登校はしても教室にいたくない生徒で保健室は溢れかえります。

無論ただのサボりも一杯いますが、何らかの不調を訴えてくる生徒も多数います。ご存じのように、保健室が自死の危険を察知する最前線である場合が多いのです。

しかし、特に若い先生方は、養護教員がみてくれれば安心と考えるのか、養護教員の方から出向かないと生徒の抱えている困難を知ろうともしません。

また最近は、一人一台端末ですから、朝、その日のメンタルを含めた体調を答えるソフトが流行っており入力が求められていますが、小学生ならともかく高校生は何のための質問か分かっているので、真っ当には答えてくれません。

すなわち、健康であると回答するのです。仮にメンタルの不調を訴えても、聞く耳を持たず一方的に説教する教員など相手にするわけがありません。

そして、上がってきたデジタルデータをみて問題なしと考えるのです。万が一、不調が訴えられても養護教員に任せてお終い。

一人の養護教員が面倒を見れる人数は限りがありますが、そんな事はお構いなしです。

カウンセラーの力も借りるわけですが、週一、しかも長期休業中は来校しません。YSWの派遣も要請できますが、同じく学校に常駐ではありません。

自死を我がことと考えるのでは無く「ひとごと」なのです。

私自身は、40年間の教員生活の中で、在学中も含めて実際に４名以上の生徒を自死で失っています。

希死念慮、自殺企図との生徒のやり取りは数え切れない程です。

あなたは、こんな現状でも自死は個人の問題、社会的な問題であり自分には関係は無い。それに、自分自身が手に負える問題でも無いし、専門家に任せておけば良いと考えるのですか？

いのちを教員なり担任なりに丸投げしてその責任を負わせるのは違うだろうという意見は確かにその通りです。

だから、専門家も交えて複数の人間で考え生徒支援していく必要があるのです。

そのためには、まずアンテナを張り巡らせて生徒の困難をキャッチすること、そしてキャッチした困難を自分の物差しで判断せず、共有しなければなりません。

一応書いておきますが、困難に対する耐性は人それぞれで、あなたにとって何でも無いことでもその人にとっては酷くつらい事とであるのです。

ですから、何の評価無いし価値判断をせずに共有し、教職員みんなで考えて行く必要があるのです。

多くの教職員の関わりの中で、生徒困難がよりハッキリすることもあるでしょう。解決の方向性も、可視化しやすくなります。

私は、声を大にして言いたい。自殺といいますが、それは誰かがかかわらなかったしっかりと見ようとしなかったことに起因する他殺であると。

あなたは、殺人者になるのですか？