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狂気のパズルゲーム『The Witness』3年半越しの考察というか個人的解釈みたいなもの。結局、作者は何が言いたかったのか?

ゴールデンウィークなので下書きを供養しよう!!!!!!!!

ということで、ずっと書いたり消したりしていて結局公開していなかった『The Witness』の個人的解釈みたいなやつを、実に3年半越しで引っ張り出してきました。

過去に「狂気のパズルゲーム『The Witness』をクリアして、文字通り“世界の見え方”が変わる体験をした話」というnoteを書いたんですが、自分の中でこのゲームの体験がすさまじすぎたのか、あれ以上の感想を文字に起こそうとすると、何を書いても陳腐に思えてしまってですね……。

そうこうしているうちに早3年半、さすがに寝かせすぎたので腐る前に放出しておこうと思った次第です(もう半分腐りかけてるかもしれない)。

なお公開にあたり、当時のメモからちゃんとした文章に書き起こそうかとも思ったんですが、これ以上こねくり回していると「やっぱ公開しない方がいいな!」とか言い出しかねないので、あえてメモ状態のまま放出することにします。読みにくいと思いますが公開優先で!!!

では、前置きはこれくらいにして、僕のThe Witness解釈メモです。


↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓ ↓


おことわり

大前提としてこのゲーム、明確な答えはあえて用意していないと思うので、あくまで解釈の一つとしてお読みください(あとストーリーの解説とかではないので、そっちを期待していたらすいません)。

自分がずっと気になっていたのは、

  • 結局、作者は何を言いたかったのか?

  • なんでタイトルが『The Witness』なのか?(※Xbox版だけなぜか日本語タイトルが『目となる者』

※英語の「the witness」は名詞だと「証人」や「目撃者」といった意味

――の2点なので、以下はそれについての個人的考察です。

(ここから先ネタバレ注意)

なんで?


「詩篇46篇の謎」について

最初の足がかりになるのはやっぱり「詩篇46篇の謎」

  • 全レーザーを解放し、山の奥の最終パズルを解いた人だけが見られる最後のシアター映像

  • ゲーム開発者、ブライアン・モリアーティが2002年のGDC講演で話した内容の再録(モリアーティはテストプレイ協力としてスタッフにもクレジットされている)

  • 約1時間あり、ゲーム中に収録されている音声、映像コンテンツで最も長い

  • 出だしの1文目でなにげにゲームタイトルも回収している

絶対なんか核心に絡んでくるやつでしょこれ!

テストプレイ協力:Brian Moriarty
How many of you here have personally "WITNESSED" a total eclipse of the sun?

ここで話していた内容おさらい(文字で読みたい人はWikiで全文書き起こしが見れます

  • 皆既日食の話

  • 絵本「仮面舞踏会」の話

  • イースターエッグの話

  • バッハが用いた数秘術について

  • サンタクロース反キリスト説

  • シェイクスピア別人説 etc.

超ざっくりまとめると、イースターエッグの話から転じて「人は奇跡のような偶然を目の当たりにした(=witnessed)とき、真に畏敬の念を覚える」みたいな内容

なぜそれがこのゲームの、しかもこんな重要そうな場面に?

自分はこれを「視点を変えると何かが見える話」だと受け取った

  • なぜ地球から見た月と太陽の大きさがほぼ同じになるのか?(皆既日食の話)

  • シェイクスピアの墓にジェームズ王聖書の詩編第46篇が置かれているのはなぜなのか? 最初から46番目の単語と、最後から46番目の単語を拾って読むと「shake(シェイク)」「spear(スピア)」になるのは偶然なのか?(シェイクスピア別人説)

なぜ地球から見た月と太陽の大きさがほぼ同じになるのか?
講演のタイトルにもなっている「詩篇46篇の謎」

いずれも「ただの偶然」と見るか「偶然ではない」と見るかで受け取り方はまったく変わってくる
サンタクロース反キリスト説にしてもバッハの数秘術にしても、全て「視点を変えると何かが見える話」として共通している

もしかして他のシアター映像も?

ここで「ひょっとしたら他のシアター映像も全部『視点を変えると何かが見える話』だったのでは?」と考えた

シアター映像は「詩篇46篇の謎」を含めて全部で6本

  • ジェームズ・バークの「科学的知識大事だよ」

  • タルコフスキーの『ノスタルジア』ラストシーン

  • ガンガジの「欲しい物を探すのをやめなさい」 etc.

これも文字で読みたい人はWikiをどうぞ

ジェームズ・バークのスピーチ。イギリスの科学番組『Connections』からの抜粋

一見共通点はないように思えるが、これも「視点を変える話」なのでは?

※そもそも「視点を変える話」という表現のカバー範囲が広すぎるやろがいというツッコミは一旦おいといて

例えば『ノスタルジア』のラストシーン
あれは「ロウソクを消さずに広場を渡りきることができれば救いが訪れる」と信じている男の映像
事情を知らない第三者から見れば単に「ロウソクを持って広場をウロウロしている男」だが、男にとってはそうではない(男が最後どうなったかは映像の通り)

タルコフスキーの映画『ノスタルジア』のラストシーン

じゃあボイスレコーダーも?

島のあちこちに置かれたボイスレコーダーは全部で49個。自分が真ENDまでに発見したのは多分このうち半分くらいだったと思う

内容はというと、例えば……

  • 科学者がドアをくぐりぬけるのはラクダが針の目をくぐるよりも難しい

  • 1時間半ごとに地球を1周する宇宙飛行士の話

  • ボロ船を信じて航海に送り出した船主の話

  • 曹洞宗と臨済宗の話

  • 他にも科学とか神とか宗教とか禅とかいろいろ

これも全部「視点を変える話」でほぼ共通している

文字で読みたい人はWiki(略)

科学者がドアをくぐりぬけるのはラクダが針の目をくぐるよりも難しい(アーサー・エディントン)
1時間半ごとに地球を1周する宇宙飛行士の話(ラッセル・シュウェイカート)
ボロ船を信じて航海に送り出した船主の話(ウィリアム・K・クリフォード)

もしかしてゲーム内の要素全部そうなのでは?

こうなるともう全部気になってくる

  • ノーマルエンド時のポエム(仏教の経典『金剛般若経』からの引用)

  • 島のあちこちに仕込まれた錯視

  • 最後の山のチャレンジの曲がなぜ「ペール・ギュント(アニトラの踊り→山の魔王の宮殿にて)」なのか(故郷を飛び出し波乱万丈の人生を送った青年が、最終的には故郷の古い恋人の元で人生を終える話)

  • 今まで解いてきたパズル(記号の意味を理解したり、風景から答えを探し出したり)などなど

  • 特に風景パズルはまさしく「視点を変えると何かが見える」そのもの

意味ありげなポエムは『金剛般若経』からの引用
島の随所に仕込まれている錯視
風景パズルについては言わずもがな

最後に見た真エンドの実写パート

自分は「ノーマルエンド」→「詩篇46篇の謎」→「風景パズル回収のため詩篇46篇の謎2回目」→「真エンド」という順で見た

それまで単なるおまけのコンプ要素だと思っていた風景パズルが、
実は真エンドへの最後の鍵だった――という流れも好き
  • 完全に風景パズルに脳を侵された人物が描かれる

  • ゲームをプレイしていない人には、彼がなぜ丸いものをなぞってしまうのかわからない

  • でも、ここまで来た人にはわかってしまう……

完全に風景パズルの脳を侵食されている男性

自分はこれを見て「これもう答え合わせじゃん!」と内心叫んだ
このゲームを遊んで、自分もこの人と同じように「現実の中で風景パズルを探さずにはいられない脳」になってしまっていた
「視点を変えると世界が変わる」ということを、言葉ではなく「体験」として理解させられていた

(恐らくパズルの難易度がやや高めだったり、ちょっと意地悪な問題が混ざっていたりするのは、「あらゆる可能性を疑う視点」をプレイヤーに植え付けるためのイニシエーションだったのでは)


もちろん、これも単なる僕の妄想であって、考えすぎかもしれない
でもこの「考えすぎかもしれないし、そうでないかもしれない」という状態もまた「The Witness的」なのではないか

以上を踏まえた、自分的な結論

Q:結局、作者は何を言いたかったのか?
A:同じものを見ていても、少し視点を変えるだけで世界はまったく違って見えたりするよ

Q:なんでタイトルが『The Witness』なのか?
A:視点を変える話、すなわち「目となる者(The Witness)」の話だから



おわり



(画像:すべてPS4版『The Witness』スクリーンショットより)


赤ちゃんのおむつ代にします。