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夜の散歩、未来が不安になる

自分の未来を正確に予想する方法がある。この言葉を聞いた人が期待することとはおそらく違うだろうけれど、それは「何もしないこと」だ。何かをしたり、人と関わると予想だにしないことが起きて、未来の不確実性は高くなる。一方で、人と関わらずに何もしなければ、大して変わらない日々が続くから未来は予想しやすい。

数年前、大学を休学して実家に帰っていた僕はこの事実に気づき、このまま実家で何も成さずに時間が経つことが恐ろしくなって、家を飛び出した。今、また戻ってきてその実家で過ごしている。家を出たときと比べて成長したのかは分からないけれど、考え方は大きく変わったと思う。ただ生きるために生きることを肯定できるようになったから。

今日は台風の影響で雨が降っていて、日中はあまり体を動かせなかった。夜になって雨も止んでいたので、散歩に出かけた。

いつもの道を歩きながらぼんやりしていると、未来のことを考えて不安になって、少し苦しかった。「これから何もせずに、食べて寝るだけで満足できるだろうか?」と自分に問いかけると、答えはNoだった。何を望んでいるのかは分からなかったが、このまま何も起こらないことは嫌だと思っているようだった。

モヤモヤを客観視してみると、「自分が今未来を不安に思っていること」と「”今は”気分が落ち込んでいること」を認識できて、楽になった。未来のことで悩んだとしても、できることはそんなにない。今日やるべきことをすることと、未来の計画を立てるくらいだ。そう考えてからしばらく経つと、モヤモヤした気持ちは消えていった。

どんな感情もずっとは続かない。「生きているだけで幸せだ」という気持ちも、今日のような不安な気持ちも、どちらも正直な気持ちで、どちらも時間が経てば消えていく。

エピクテトスは「欲しがっているものを手に入れられない人や、避けようとしたものに遭遇する人は不幸である」と言っていた。そんなこと当たり前じゃないかと思うけれど、僕が不安になった原因の一つはこれだった。今の自分の状況や持っているものを否定したり、漠然と”今のままではない”未来を期待していた。

今持っているもので満足することは大事だ。そのためにできる、ちょっと変わった方法を見つけた。それは持っているものを欲しがることだ。普通は持っていないものを欲しがるけれど、持っているものを欲しがった方が幸せになれると思う。

目の前に水があったから「水が欲しい」と言って飲んでみた。なんだか指差し確認みたいだなと思った。水は冷たくて美味しかった。これが僕の見つけた幸せだった。

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