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刺繍してみた

元々ドット絵を打つのが好きだったのもあり、近くに手芸屋のユザワヤが出来たのもあり、勧められて(というよりやりたい!!!と食い気味で話を聞かせて貰った)思い立ったら即行動、手当り次第買い漁って必要なものを揃えてみた。(給料日後だったので。)

なんかガチャゴチャ動く機械が昔から好きで、中学2年の時に父に強請って買って貰ったものがミシンだった。何故ミシンを選んだのかは覚えていない。当時はただ切れ端を縫うだけで楽しかった。中学2年生とは思えない精神年齢をしていたと思う。オレンジにアースカラーの〇がたくさん付いたよくわからん布で、マチも何もない小さい手提げを作って犬の散歩用の持ち運びちり紙入れとして母に押し付けた記憶はある。

初めて就職したのが工業用ミシンを扱うところで、私は全く違う部署に配属したが、自社製品の作り方を知りなさいとの命令で暫く自社工場に毎日5時間程研修に行っていた。自社工場といっても立派な工場ではなく、内部は木造でクーラーも無く、夏場はクソが付くほど暑い二階建ての作業場だった。周りはシニア層ばかりで、当時高校卒業してすぐだった私はおじいちゃんおばあちゃんのどぎつい名古屋弁が飛び交う場でなんぞかんぞ可愛がられながら物凄い勢いで進む工業用ミシンを使ってひたすらエプロンを縫っていた。素材はビニール、よく魚市場のおっちゃんがゴム長靴と一緒に身に付けているアレ。アレを作りまくった。

そこを退職してから今日に至るまで手芸だとかハンドメイドの類に触れることなく、たまに面倒臭がって靴下の穴をミシンを使って縫ったり、裾上げテープがうまくくっつかず怒り狂いながら縫い上げたりするくらいしか針や糸を扱うことは無かったが、ちまちました作業は好きなので、華やかな刺繍の世界に思い切って飛び込んでみることにした。

刺繍といえば編み物と同じく、微笑みを湛えながら白魚のような指をちょこちょこ動かし、大体緩いワンピースを着ていて、「ついつい時間を忘れて没頭してしまうんです…えへ」と少し照れ気味に言う、そんな淑やかな女性にだけ許された趣味のような気がして、私には縁遠いものだと思っていた。でも実際は手芸屋に行けば、ド田舎のヤンキー崩れのような、ヤンキーに憧れた陰キャのような、目付きの悪さだけは一人前といった私のような風貌の女でも道具を揃えることができた。金さえ出せばどうとでもなる。

実際に購入したのはクロスステッチ用の布、フランス刺繍用の布、刺繍糸、刺繍針、刺繍枠などの必須アイテムの他に、糸切りばさみだとかチャコペンだとかの無いと困るアイテム、その他諸々。それをジャージ(しかも上下バラバラ)の仕事帰りの女がレジに持ってくるもんだから店員さんはきっと「コイツ刺繍始めてみる気だな?」「続けられるかな、お前に…」なんて思われているんじゃないかと気が気じゃなかった。自己肯定感などは皆無で生きている。

道具も揃えた所で、まず私が挑戦したのはクロスステッチ。布は布だが専用の織り方で小さな網目状になっている。ドット絵で言う1ピクセルを目視しやすい布になっていて、1ピクセルに糸をバッテン印になるように通していって形を作る刺繍法らしい。多分そんな感じだ。出来上がったものがこちら。

この子は「どうぶつの森」に登場する「シェリー」というアネキ系サル住民。刺繍を勧めてくれた方が好きだと言っていたので記念に作ってみた。この通りバッテン印のまま一つ一つ縫い上げていくが、頭の毛並みを縫っている最中、唐突に面倒になって、いや簡略化できないかと思い立って、バッテンではなくスラッシュだけで半分以上は構成されている。
目に至っては最初の段階から顔の幅を小さくしてしまっていたために両目ぱっちりにすると面倒くさい、いや寄り目になって不気味かもしれない、と思って強制的にウインクさせた。
ド素人の一発目、処女作にしてはまあまあ健闘した方ではないだろうか?頭の毛並みと口周りは違う糸を2種類使い、ドットで言うところのメッシュを掛けて中間色に見せる方法をイメージしてみた。勿論歪だし手直しするところは沢山あるだろうが、ド下手なりに味のあるシェリーさんになったのではないか、とここでは自己肯定感高めでいく。

これが完成して、「私でもなんとか作品を作れた!」とテンションの上がってしまった私は、私の思うThe・刺繍、サテンステッチに挑戦してみた。布はクロスステッチの時に用いたものではなく、シーチングと呼ばれる刺繍界では最も一般的な布だ。色んな技法があるが、面を一本の線で塗りつぶすように縫うサテンステッチ、くっきりした線を縫うバックステッチ、点を表現するのに適したフレンチノットステッチの3種類の縫い方を使って、オリジナルキャラクター「おにぎりくん」を縫ってみた。

なんともまあ緩い仕上がり。
オリジナルキャラクターと言っても、商標登録はできないであろうなんの捻りもない名前とフォルム。使いたけりゃどうぞ使ってください、許可はいりません。私がOKを出してもこのおにぎりくん自体がきっと何やかんやに引っかかっていると思います。
でもまあ、ガタガタにしても「それなりに」「なんとなく」、刺繍界の皆様に鼻で笑われることはあれどぶん殴りはされない程度の作品が作れたのではないか、とそこそこ満足はしています。始めて3日、4日でここまで出来たら素質アリと言ってもいいんじゃないでしょうか?そこまで言ったらぶっ飛ばされるでしょうか?

繊細なタッチの花の模様だとか、風景画だとかを縫う予定はないにせよ、人に言えない趣味ばかりの中でようやく「刺繍が趣味です」と胸を張って言えるような気がして人間的にステップアップできた、いい機会だと思います。
ドット絵が好きな人、ちまちました作業が好きな人、趣味は?と聞かれた時に「……映画鑑賞…かな(アニメ映画も映画だし、嘘はついていないし)」「音楽を聴くのが好き…かな(アニソンでもアイドルでも音楽は音楽だし、嘘はついてないし)」と毎度自分と戦っている人にはとてもおすすめです。レッツエンジョイ刺繍!

おわり

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