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今世で料理はしないけど |ハコミドリ 周防

親しくなった人には、「わたし今世では "料理する" ことを、諦めてるんです」とハッキリ告げてきた。

理由は主に2つ。


① やりたいことと睡眠時間と、その他(掃除やスキンケアなどなど)を盛り込んでいくと、1日=24時間では足りない すなわち【料理をする時間が無い】から。

② 食物アレルギーや好き嫌いが無く、美食家という訳でもなく、なんでもうまいうまい とよく食べる、【自分がそこまで食にこだわり・執着のない人間だ】から。


「今世で料理することを諦めている」と告げると、

「あなたらしい」と笑う人も居れば、「え…」と明らかに引く人も居た。

料理の楽しさ・奥深さ、自炊がいかに健康的かを説いて下さる方々にも何十人とお会いしてきた。「意外と簡単だよ!」という人にも。

"男受け" とか、 "モテ" といわれる項目からだって逆走甚だしいし、

実際、過去の交際相手の顔をそれとなく思い返すと、

『あの人はきっと料理上手な子が良かったんやろな…』と合点がいったりもする。

しかしそれらを理由に料理を頑張れるなら、もっと若かりし日に尽力・工夫しているだろう。

34才になる今もなお、私は初志貫徹で料理をしていない。

今まで触れてきたメディア、エンタメの中で二人だけ、この思想に寄り添ってくれそうな主義主張の方々が居た。

一人は文筆家でタレントの、能町みね子さん。ある日公式ツイッターで、

『自炊の野郎、持ち上げられてばかりいるのでdisり倒してやった。レペゼン外食』と呟き、

(今ツイッター / X を見返したところ、この投稿には30イイネと1件の同調リプライしかついていなかった…能町さんには18万人以上のフォロワーが居るというのに……)

彼女はその後こんな関連エッセイも執筆している。

料理をやめてみた|能町みね子

そしてもう一人は、実在の人物ではなくキャラクターなのだが、

ゆざきさかおみさん作の【作りたい女と食べたい女】という、NHKで実写ドラマ化もされた人気漫画に出てくる、矢子 可菜芽(やこかなめ)というキャラクター。彼女は “食べるのは好きだが作れない” 、よって 主にテイクアウトや友人の手料理で食事を楽しむ姿が描かれる。

どちらも【料理はしません】と、堂々と主張しているところに私は大変好感を持っている。

多様性が叫ばれるようになり、「女の子なんだからお料理くらい出来なきゃ」と頭ごなしに叱ってくるような人は、きっと一昔前に比べたらかなり減ったのだろう。

ありがたい時代になった!好きにやらせてもらうぜ!と、

料理に時間を使わない分 仕事や旅に奔走し、

なりふり構わず 独身を謳歌しまくっていたのだが、

ありがたいことに、2年ほど前にたまたま巡り合った今のパートナーが料理上手だった。

料理に対してだけでなく、彼は全ての事において実験したり、試行錯誤することが大好きな人で、

スパイスカレーやクラフトコーラなど、凝りがいのあるものを好んで作っている印象だ。

「こないだ◯◯をちょっと多めに入れたらコクが出て美味しくなったんよ」などと呟きながら、

連日スパイスをじっくりコトコト煮込んでいる彼を見ていると、

『…これ、へたに私が料理好きで口を出したりやいやい言わないところも良かったのではないか…?』と、超ポジティブに思えてきたりする。

私はきっとこの先の人生でも料理をしない。

今暮らしている場所のすぐ近くに、カジュアルフレンチのお店があり、たまにお邪魔する。様々な場所で修行をした後に 地元に店を持ったオーナーシェフは、

「君はなんでも『美味しい!!』と言ってめちゃくちゃ食べてくれるから良いよね」と言ってくれる。

私はいつも心から本気でそう思っている。美味しい、よくこんなの作れるなぁ。。そして『ありがたい』と。

冒頭で、料理をしない理由は2つ。と書いたが、

3つめを上げるとすれば、周囲の料理上手な皆様にお任せした方が確実においしいものを食べられるから、というのもある。

私の彼やシェフをはじめとする、料理が好きで得意な全ての方々へのリスペクトを忘れず、

これからも全ての食事をありがたく頂こうと思う。


ハコミドリ 周防
造形作家 /アトリエカフェ運営

廃ガラス×植物『ハコミドリ』代表、滋賀彦根湖畔アトリエカフェ『VOID A PART』主催者。たまに講演や授業でおはなしもする。 滋賀→京都→東京→滋賀 湖畔にて開業。京都精華大学人文学部社会メディア学科卒。

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