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【連載小説】夏の恋☀️1991 シークレット・オブ・マイ・ライフ㉔

 七月。深夜~早朝。

 坂をのぼりきる。

「JJ、もうだめ、わたしもう、だめ」

 桃子が体をあずけてくる。熱いかんじ。

「もうちょっとよ、がんばれ」

「ほんとにだめ……もうやすませて」

 なんだこいつ。体力なさすぎだろう。

 ホテルへ。というわけにもいかず、S高に入る。管理棟の、図書館が上にある、広場に、桃子を座らせる。無言。

 幽霊がたくさんいる。おれには見えないが。桃子は?

 桃子、いつのまにか横になっている。何もいわない。ちかづくと、ねむっている。おれも横になる。頭のしたがコンクリ。コンクリ枕。

 どうしようかとおもっていたらいつの間にかすっと、寝ていた。

「きみら、だいじょうぶか」

 目をあけると、夏の朝。まぶしい。逆光のひとの影。警備員さん。

「ああ、すみません」

「この学校の生徒かね」

「あ、はい」

「かえりなさい」

「はい、すみません」

 警備員いく。

 全身、びっしょり汗をかいている。あっつい。

 桃子は、溶けて、なくなっている。というわけではなく。ぐっすり寝ている。まったく汗をかいていない。ゆらすと、ゆれる。うんともすんともいない。顔色わるい。息してるか?

 して、いない。いや、してる? わからない。

 警備員さんを呼び戻す。

 変だということになり、救急車を呼ぶ。おれも乗る。

「保護者は?」ときかれたので「おれです。兄です」という。親はときかれたので、出張中ですという。

 桃子がすこし目をあけて「JJ、かえらないで。いっしょに居て」という。あたりまえじゃん!

 手をつよくにぎる。

 死ぬな、桃子。桃子桃子。死なないで桃子、と思った。

本稿つづく


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