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【私の病】私に現金を持たせてはいけない、頭おかしいこいつ……という話(中篇)

 というわけで、私はある日の夜ふけ、2日前か、200年前かどちらか忘れたが、その金をもって、住んでいる首里からモノレールにのって、大都会那覇に出た。もちろんこの金を、腹が立つこの厄介なシロモノを、すべて費消しようというわけである。。

 県庁前で降り、階段を下りて、すたすたと歩いた。蒸し暑く、汗がたら、たらと出る。ある程度あるくと、店が並んでいる。きょろきょろと見、検討し、見当をつけて、店に入った。女たちが居る店である。

 私は容姿端麗で、カラダもおおきく声もよく、落ち着いて、態度堂々、また親しみがあり、かくしもった慈悲のこころがぼんやり漏出し輪郭を照らしている内奥から、というような人物なので、すぐにモテだした。このひと、お金ももっているみたいな感じだわ、好きだわ~こういうおとこ、濡れてきちやふ、と女たちはすぐに気づいたのである。

 私はまずルービー(ビール)をのみ、つぎにハイボールを次々とのんだ。女たちもいろいろのむ。酒杯が林立し、私の周りには女たちが池のようにひろがっている。

 半開の花のかおり、といいたいところだが、実は私は敏感鼻のようなところがあり、集団の女のにおいが苦手なのである。女というのは、ひとりひとりは良い匂いがするが、あつまるとなぜだか、くさい感じがする。しかもこのような、酒風俗の女というのは、そもそもいろんなにおいがする。

 だがモテるのは仕方のないことなので、ガマンしてのんだり、とくに意味もない話をしたりしていると、客が増え始めたようで、私のまわりの女たちは接待に行き、潮が引いて、私の隣には女がひとりだけになった。

 やれやれこれで落ち着いてのめるし、話らしい話もできる、ともするとビーチクぐらいは見せてくれるやもしれない、という気持ちになった。

 私たちは雨の話や、好きな季節の話をした。ねむることがいちばんすきという点で、私たちの意見はがっちし、盛り上がった。

「え、そう。手相、手相みてあげようか」

 と私は言った。

「え、見れるの?」

「ふふ、んふ」

「見てほしー」

「え、そう。何がしりたい?」

「えー、と。えっとね、結婚、できるかどうか、結婚いつぐらいか」

「ふーん。彼氏いるの?」

「え、手相で見てよ(笑。いるよ」

「へー、どんな人」

「フツー。夜職のひと」

「よるしょく? というのは、ホストかな」

「うん」

「ふーむ。どんなひと?」

「優柔不断。イラつく。ちょっと待ってとか、ばっかり」

「待って? なにを」

「しらない。なんかこんど、F県にいくんだってさ。出稼ぎ。とりあえず売れるまで待ってほしいってさ」

「待つというのは、なんだ?」

「わっかんないよ、もう(怒」

「その、彼氏さんは、あなたのこのお仕事のこと知ってるの?」

「居酒屋でバイトしてると、言ってる。まあ、うそではないでしょ。でも、気づいているとおもう」

「ふーん。あなた、お名前なんでしたっけ。さっききいたけど、ごめん」

「なゆ」

「おいくつ、なの?」

「二十二さい」

「學校は? 大学? 専門学校?」

「ううん。高卒。卒業して就職した」

 私たちは、彼女(なゆさん)の職歴について話をした。なゆは、高校を卒業後、パン屋に就職したが、そのパン屋がコロナ禍のあおりをうけて倒産し、つぎに印刷会社にパートでつとめた。

 その会社はブラックで、セクハラで、さいあくであった。なのですぐ辞めた。やめていまの、この夜の仕事についた。それが去年の9月らしい。

「へー。いろいろたいへんだねえ」と私。

「まあね(笑。お兄さん、おなまえ、教えて」

「JJ。家族と仲間は私をこう呼ぶ」

「JJ、なんかウケる(微笑」

「ふふ、ふ」

本稿つづく

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