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【大慈悲】変なひとたちからの、性的な誘惑(後篇②)終
というわけで、変な人ばかりが寄ってくる。おれの人生。理由というは、おそらく、分っている。結局南極、私は変な人がすきなのである。どちらかというと、好意をもっているし、もって生まれた慈悲心があるので、これに向こうが寄ってくるわけだし、また自分からも身をよせているわけである。
思いつくエピソードは八万八千八百八十八ぐらいあるのだが、流石の私ももうかくのも難儀なのであとふたつ、紹介して本稿はおわりとしたい。
高校3年のとき、ほっかほっか亭(現ほっともっと)で、ゴーヤー弁当を注文し、椅子にすわってできあがるのを待っていた。女がきた。年のころ、今思いかえせば23、4ぐらいだろうか。3、4歳の男の子を連れている。
女は注文して、私の隣に座った。私のほうを何度か見る。
あ、これ、変なひとだな。とすぐわかった。
「お兄さん、肩こってるでしょう。マッサージしてあげようか。うちにこない」
と言う。
「あ、いや、だいじょうぶです」
女は席を立って、おれの正面の席にうつった。色がしろい。スカート。顔はふわふわしてかわいらしいが、疲労と、不幸がある。
女はすこしくスカートのすそをあげて、股をすこしひろげる。下穿きがこちらから丸見えとなる。まっしろな内股のおくに。
女はじっとこちらを見ているようである。まともには見られない。おれはあちこち、視線をうごかす。男の子がちょろちょろ走り回っている。男の子もまた、おれが気になるみたい。
ゴーヤー弁当が出来たので、おれは金を払い、あわてて店をあとにした。
約十年後、私は西武池袋線の、池袋行きの電車に乗っていた。夕方。中年のこぶとりの女が、ぶつぶつ話をしながら車内をあるいている。ぶつぶつぶつぶつ、私の斜め前の席に座り、大股をひろげる。おおきな下穿き。
この女は、自分のやっていることが分かっているのかどうか、わからない。ただそうすれば男たちが見てくるということは、分かっている。
何だかかなしくなる。
大悲。ねがい。
性、食、眠というは生物の三大欲求だが、人間にとっていちばん厄介なのは、性である。これはおよそ一人では満たすことができない。他をひつようとする。
だから、ここにおいて、さまざまな仲たがいや、あらそい、あまつさえいろいろな犯罪行為などもおこる。
私は結局南極人間がすきなのだが、同時にふかく、あわれだと思う。
おのおのがすこしでも、変なままでよいから、各自で自分を、自分のこうふくを見つけてほしいと思う。
みんなが自分をすくえるように、とねがうのである。
本稿おわり
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