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【読書記録】「磁力と重力の発見」山本義隆

骨太   ☆☆☆☆☆
論文傾向 ☆
引用明示度☆☆☆☆☆

仕事の関係上、近接作用について話す必要があり、友人から借りたもの。ニュートンの万有引力やクーロンの電荷・磁荷に関する逆二乗則といった遠隔作用がいかに受容されてきたか、近代物理学の定式化以前を語る。

そんなニュートンなど近代物理学の勃興を描くのに、近代前夜からではなく古代まで遡り、さらに「暗黒の時代」と目され一般に叙述が忌避される中世の理論もこぼさず取り込もうとしているのが本書の光るところであろう。もちろん近代物理学の萌芽が見える第3巻「近代の始まり」で最もテンションが上がるのが自然なのだろうが、古代・中世・ルネサンスを語る第1巻・第2巻の叙述は決して冗長なものではなく、読んでいて飽きを感じない。

加えて特筆すべきは文献の異常なまでの膨大さである。第3巻巻末に40ページにも及ぶ文献情報が並べられてあり、その半分近くは一次資料である。また後書きには本書執筆にあたって2年半をかけてラテン語を習得したというから、著作にあたっての並々ならぬ努力と苦労を感じざるを得ない。その力のかけようを見るまでもなく圧倒的骨太本である。それでいて学術書にありがちな専門用語・他書参照の羅列がほぼ見られない。本を書くとはかくなることかと、執筆を一切行っていないながらも身につまされる思いに駆られる。

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