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2023美術展5選パート②

2023年に行って、良かったと思う展覧会5選、二つ目に取り上げるのはエゴン・シーレ展です。

 一つ目をご覧になってない方はぜひそちらもご覧ください。

2. レオポルド美術館 エゴン・シーレ展 ウィーンが生んだ若き天才/東京都美術館
2023.1.26-4.9

 期間が始まる前からとても話題になっていた覚えがあります。本屋へ行ってもエゴン・シーレ特集の雑誌がたくさん置いてありましたね。

 さて、その展示ですが、行った当時はあまり心地よくありませんでした。というのも、圧倒され続けたためです。しかし、そこまで思わされるほど凄かったってことではと人に言われ、認めざるを得ないと感じたため5選入りです。当時の自分にとっては、シーレの絵のほとんどはひどく悍ましく恐ろしかったのです。

 それはさておき、時系列に参りたいと思います。チケットを買うのにはさほど時間はかからず、入場に並んだような気がします(一年前なので記憶も朧げな訳です)。しかし中に入ってからはそこまで混雑してた覚えはなく、観るのに困らなかったと思います。

 まず何より印象に残ったのはその早熟さです。著名人や周りの中の発言が多く引用され、客観性を保ちながら説明されたシーレの天才さは、少ない線で描かれたスケッチを見ればすぐにわかりました。適当に引かれたように見える線がどれも骨格的に正しくさらにリズムすら美しいと。特に覚えているのは裸で体育座りをする人の背中のスケッチ。評されたものが十二分に伝わり、苦しかったです。

 シーレの考えすぎる性質は象徴主義の運動と相まって激化していたように思います。聖母と子をテーマにした絵画の数々が配置された空間の禍々しさは、見ていて落ち着けないものでした。

 シーレについての説明も所々あり、見ていると結婚するには中流過ぎると付き合っていた恋人を捨て、より高貴な女性と結婚したりだとか?なんだこいつは。

 戦争から帰ってきたら、僕の絵は全世界に展示されるだろう、ですって?なんだこいつは。

 性格的に好きになれませんでした。なのに天才的な絵を描くから実際その通りになっているのです。年齢的にシーレと近く、かつ何者でもない自分を恥じて悔いている自分としては、そんなシーレを知れば知るほど苦しくなりました。

 撮影可能エリアの絵です。やっぱり天才です。
最低限の線で描く広大な景色。見る者の想像力を信頼した奥行き。最小限の筆は、その実全て必要な線で構成されているのだと思います。

 自発的に打ちのめされた展覧会でした。帰り、新幹線の中で読んだリルケ詩集がやけに甘く優しい生クリームのようで、ボコボコにされた自分をナッペしてくれているように感じました。そこまでセットでの思い出です。

 それだけの力がある展覧会でした。シーレは恐ろしい。

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