PCが会社になかった時代は、よい時代だったかもしれない

1.Personal Digital Transformationについて考えてみる

世の中、デジタルトランスフォーメーション(DX)の必要性がしきりに言われていて、それは単にIT化ではなくて、組織が企業風土を変え、ビジネスのやり方を根本的に変える必要があると、みんなが言っています。

経済産業省の資料では、DXの定義は、こうなっています。

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、
競争上の優位性を確立すること

その理屈はわかるんですが、そもそも個人がそういう思考になってないと、そういう組織に変わるのは、すごい難しいだろうなと思っています。DX化さえれた個人が集まって、組織のDX化がなされるのかなと思います。ITエンジニアが集まって、どうにかなるという話では当然ないですね。

そこで、個人として考えるDX(Personal Digital Transformation)について考えてみようと思います。手始めに、30年以上前、会社にパソコンなどまったくない時代に、どのように仕事をしていたかを思い出してみます。40年間、IT業界で働いてきた私だから、自分の体験として書けます。

2.1986年、私は30歳だった

そのときは、IT会社に勤めていた。

朝、9時に出社して、タイムレコーダーを打刻。次に自分の席に座る。机の上には、何も置かれてないので(帰社時には机の上は全部片付けておく習慣だった)、仕事に必要な書類(当然手書きの文章)が入っているファイルを棚か机の側のキャビネットから取り出して、机の上に広げる。これで、机の面積をかなり占有する。ファイルを2つ、3つ広げると狭い。机の引き出しから鉛筆と消しゴムを取り出す。

朝一で、本社あるいは顧客からFAXが来ていれば目を通す。この時代、遠隔地とのやり取りは、FAXか郵送だった。

紙のコピーは、はっきり覚えてないけれど、青焼きのジアゾ複写機を使っていたと思います。コピーすると全体に青っぽい濃淡のものとなっていました。仕様書を手書きで書いて、それをコピーして顧客に郵送してました。ITシステムの要求仕様に関する質問は、主にFAXを使っていた。FAXを送った後に、お客様に電話して、その質問の回答をもらうか、お客さんがこちらに回答をFAXしていました。

この時代、インターネット、パソコンというものがない時代でしたら、コミュニケーション手段は、直接対話、電話、FAX、郵送でした。

3.パソコンがない時代、何が良かったか?

この時代、インターネットがないわけですから、google先生に訊くことができず、なにか調べようと思うと、文献、書籍をあたるか、知っていそうな人に訊く。それもできなければ、自分自身で試行錯誤しまくることになります。今思うと効率が悪かった。おかげで夜遅くまで仕事をすることが多かった。

この時代、情報を得る手段としては、上司、同僚、お客様が最有力候補であるので、なんといっても人間関係構築が肝だった。今なら、人間関係は関係なく、ググれば、簡単に答えが出てくる。そこに煩わしい人間関係はないのである。飲み会、温泉一泊旅行の忘年会、会社のバス旅行、花見と定期的に開催される会社主催のイベント参加は必須である。

でも良かったこともある。

パソコンやスマホがないってことは、何かに追い立てられることがない。電子メールを使い初めてからは、毎日数百通のメールが来るようになったが、メールがない時代なんで、時がゆっくりと流れて精神的にゆとりがあったように思う。

それと、仕事をしているときは、自分の仕事に没頭はするものの、周りの同僚の息遣いがいつも聞こえていて、同僚の気分、体調が手に取るようにわかっていた気がする。これは、後のアジャイル開発、スクラムへと繋がっていく。

人と人の関係が今より近かったかも。面倒ではあるものの、そういうことに関わっていくべきなのでは。デジタルトランスフォーメーションは、単にデジタル化ではなくて、組織のあり方、組織のコミュニケーションのあり方を変えようと言っている。その本質的な答えは、この時代にあった気がする。

4.パーティションがなかったので、同僚の顔がいつも見える

今から考えると、奇妙な気もしますが、パソコンが会社にない時代、日本の会社の多くが、机と机の間の仕切りがなかったと思います。大企業に行くと、すごーく広いスペースに、それこそ体育館みないなとこに、机がだーと並んでました。机を寄せ集めて、いくつかの島に分かれていましたが、仕切りがないので、顔を上げると、同僚の顔が見えるという感じです。これも同僚の息遣いが聞こえる原因になってましたね。

パソコンが企業に広まるにつれて、机と机の間のパーティションが導入される会社が増えたように思います。外資系企業だと、ほぼ個室みたいな部屋が多かったですね。

次回は、デジタル化が少し入ってきた時代を考察してみます。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?