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【特集・po-to-bo〜まだ見たことがない表現を追い求めて〜】2022年3月号

po-to-bo・島田知子さんにお話をうかがいました

札幌市の静かな住宅街に、「po-to-bo」(ポトボ)の島田知子さんの工房兼ギャラリーはあります。近所には大きな公園が広がっていて、作陶の合間や一日の制作を終えたあと、ゆっくりと散歩するのが楽しみだそうです。

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「ふと見上げた空のグラデーションが美しいなぁと感じたとき、それを焼き物で表現したくなるんです」

作品づくりのヒントは、いつも日常のなかにあります。色鮮やかでみずみずしい野菜や果物、道ばたに咲く野花を目にしたとき、動物のシルエットが、愛嬌があって面白いなと思ったとき、それを焼き物で表現せずにはいられないのです。

「根底には、きれいな色を、美しい形をつくり出したいという抑えきれない思いがあります」

美しいものがつくりたい、形にしたいという願望は、島田さんが陶芸と出会った瞬間から変わらず、ずっと心のなかにふつふつと熱く宿っているのだろうと、今回お話を聞いて感じました。島田さんが陶芸と出会ったのは10代のころ、札幌のアート系専門学校に通っていたときのことです。絵画や木工、金工など、さまざまなものづくりを学ぶなかで、粘土にはじめて触れたとき、「これしかない!」と直感的に思ったといいます。

potobo作陶中の島田さん

「粘土ってやわらかくて、指で押したらあとがつくじゃないですか。そのダイレクトさがすごく好きで。自分の思ったとおり(なかなか思うようにはいかないのですが……)、直接的にゼロから形をつくることができる。そこに大きな魅力を感じて、私の進むべき道はこれしかないと思ったんです」

それ以来、粘土に触れている時間が何よりも楽しくて、少しでも早く粘土と仲良くなりたいと、毎日何度も何度もロクロをひいては、それを壊して土に戻してと、夢中で練習を重ねたそうです。今では、釉薬の色が鮮やかに映える磁器土を愛用していますが、陶芸を始めたころはもちろん、現在にいたるまで、赤土や黒土などたくさんの土を試してきました。

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「焼き物は、表現の可能性が無限大にあるところが面白くて。土にしても釉薬にしてもたくさんの種類があり、焼く温度や酸素の量によっても、でき上がる焼き物の表情は変わってくる。その中で、私は自分が求めるきれいな色や形を表現するのにぴったりだと感じた、白い磁器土を使っているんです」

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焼き物にしか出せない美しさを表現したい

島田さんのつくり出す作品をよく見ると、りんごやナス、トマトのブローチは輪郭線の断面がふっくらとやわらかく、つるんとした表情をしています。ブドウやコーン、メロン、ミモザ、紫陽花などは、果実のつぶつぶや皮の凹凸、花びら一枚一枚までつくり込まれ、その凹凸によって釉薬の濃淡が生まれ、より立体的に感じられます。ツバメは羽をシャープにきりりと、リスは毛並みがふっくらと表現されています。

豆皿の差し替え1

豆皿の差し替え2

「ブローチなどのアクセサリーは、イラストのように平面でシルエットの美しさを見せながら、それぞれのモチーフらしい立体感も併せ持っている。そんな平面と立体の中間のような表現ができるところが、焼き物ならではの魅力だと思うんです」

「焼き物という素材にしかできない、表現を生み出したい」。これがもう一つ、島田さんがずっと考え続けていることです。

使う人の気持ちが軽やかになるような作品を

この2年は、暮らしや働き方が否応なく変化し、不安に感じる場面も多いのではないかと、これまで以上に毎日がちょっと楽しくなるような作品を届けたいと考えるように。そんな話をしながら、島田さんが見せてくれたのが、100を超える作品の型の一部と、新たな作品をつくり出す過程で、ボツになった試作品や釉薬のテストピースです。

10代で焼き物の無限の可能性のとりこに

島田さんは陶芸と出会って20年以上たちますが、今でも最初のころと変わらず、新たな釉薬を試してみたり、異なる土を使ってみたり、常に見たことのない表現を追い求めてチャレンジを続けています。

「もちろん失敗すると落ち込みますが、ああでもない、こうでもないと試すのが実験のようで楽しいんです」

そうした試行錯誤の日々のなかで、新たに生まれたのがパールのような輝きを放つ「スペシャルジュエルシリーズ」です。ピンブローチや耳飾り、ヘアゴムは、どれも見る角度によって色彩が変化し、うっとりするほど美しい。周りに施された凹凸のテクスチャーが輝きだけでなく影も生み出し、より立体感をつくり出しています。

po-to-bo・島田知子さんにお話をうかがいました3

角に毒を消す力があると知って、2年前にお守りのようなアイテムになればと限定制作した「ユニコーン」のブローチも、立髪と尻尾をパール調に変更。身に着けることで元気が出るような作品になればと思いながら形にしています。

po-to-bo と丸岡さん ワオ

雪玉のように真っ白で、手削りの表情がやさしい「スノーボールキャンドル」は、「おうちの中で過ごす時間を、リラックスして楽しんでもらいたい」と、10年ぶりにリニューアルして再びつくり始めた作品。あかりを灯すと白い磁器がほんのりと透けて、淡くあたたかな光が日常を照らしてくれます。

日々の暮らしが楽しくなるような器やインテリアも1

日々の暮らしが楽しくなるような器やインテリアも2

美しい色や形を表現したい、焼き物だけにしかできない作品をつくり出したいと追い求める先には、常に使う人の日々が広がっていて、そこに明るい彩りが添えられたらと、島田さんは願い続けています。

「私の作品を手にしてくださったみなさんの日常が少しでも楽しいものになったら、本当にうれしいなって思います。作品は画面上で見るよりも、おうちに届いたときよりも、実際に料理を盛りつけたり、身に着けたりした瞬間に、一番素敵だなって感じてもらえるようにつくっています。ぜひ、たくさん使って楽しんでください!」 (文・杉山正博)


最後に、「月刊手紙舎」を見てくださっているみなさんへのメッセージをうかがった。

島田知子(しまだ・ともこ)
北海道出身・在住。2003年3月より、「pottery(陶器)porcelain(磁器)を用いて poetry(詩的)に物を作っていきたい」という願いで付けた「po-to-bo」として活動開始。札幌の小さな工房で手作りの陶器、磁器を中心に、雑貨などを制作している。
https://po-to-bo.com/
Instagram:@po_to_bo


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