手紙社
「悩みは“すき”の種」2022年8月号
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「悩みは“すき”の種」2022年8月号

手紙社

これは、「手紙社の部員」のみなさんから寄せていただいた“お悩み”に、文筆家の甲斐みのりさんが一緒になって考えながらポジティブな種を蒔きつつ、ひとつの入り口(出口ではなく!)を作ってみるという連載です。お悩みの角度は実にさまざま。今日はどんな悩みごとが待っているのでしょうか?

第14回「独立したアトリエを持ちたいあなたは?」

月刊手紙舎読者のみなさん、こんにちは。猛暑が続いていますが、いかがお過ごしでしょうか。私はこの秋、ライフワークにしているテーマの本の出版予定があるので、夏休みの研究に励んでいた子どもの頃に戻った気持ちで、毎日忙しく過ごしています。私が小学生の頃、主に自由研究のテーマにしていたのが「旅」。毎年夏に家族旅行に連れていってもらっていたので、訪れる先々のことを調べたり、実際にどんなふうに旅したかを記録して、1冊のノートにまとめていました。そう、旅の本を書いている今と変わらないことをしていたんですね。当時のノートを全部取っておけばよかったのですが、1冊だけ実家で発掘されたので、ときどき懐かしく見返しています。

8月の「悩みは“すき”の種」は、以前に悩みを寄せていただいたジャスコさんのその後。こうして続きを知ることができて、なおかつ前進しているようで、あらためて私自身の励みにもなります。

また、2021年10月からの進捗を、「その後」として振り返ったり分析しているジャスコさんの姿勢、見習いたいです。私は計画や段取りを組み立てていくことには積極的ですが、建設的な振り返りが苦手なので(記憶や思い出としてエッセイに書いたりはできるものの、未来に活かすための振り返りとして成立していない)、目標としたことができているか・いないかを、ジャスコさんのように書き出してみようと思いました。

相談者:ジャスコさん

甲斐さん、こんにちは!
2021年10月号の「悩みは“すき”の種」に取り上げていただいたジャスコです。

9月からフリーのデザイナーとして独立します! お世話になっている方にお声かけいただき、一緒に仕事をしながら独り立ちすることにしました。今は8月末まで有給消化中で、平日に遠出できたり、ノーマスクで家に引きこもって仕事したり、お世話になっている方の所へ行って仕事したり遊んだり、働いているのか遊んでいるのか……。辞めてからやりたい放題な自分に不安になりながらも、楽しい日々を過ごしています。

身近な周りの人や、手紙社の部員さん達に話を聞いてもらったり、甲斐さんからいただいた言葉に背中を押していただいたり、周りに支えられて一歩進むことができました。

《「悩みは“すき”の種」その後》※以下本文より一部抜粋

(1)自分が本当にやりたい事がわかった。会社に提案したがうまくいかず、別の人にやりたかった仕事が任されていること。
(2)大切な人との別れで、時間は無限じゃないことを実感したこと。
(3)仕事と職場へのモチベーションがかなり減少していて、今後のキャリアに限界を感じていること。
▶ ○ 最終出勤日に挨拶をしながら「私の退職を決めた大きな理由はこの3つだな」と改めて実感しました。

(4)会社以外で個人的に「デザインがやりたい」と話しまくったら、度々面白い仕事が入ってきたこと(副業禁止なので、無償ですが)
▶ ◎ 職場以外に足を運んでみたら、周りには色々な人がいた!
▶ ◎ 手紙社繋がりで関わらせてもらえるものにも影響受けた! ※仕事遊びに限らず
▶ ◎ 会社員でも、会社員じゃなくても、会社以外の世界に関わることは、大事で楽しくて面白い!

(5)声かけてもらった所があるが、数年後にはフリーになるのは確定。
▶ × 色々あって、9月からフリーになります。ヒーーーーー怖えええええ楽しみ。(どっちやねん)
▶ △ 当初の予定と立ち位置変わりましたが、やることが繋がっていました。これが縁ということなのか?
▶ ○ お声かけていただいた方々との縁を大事にして

《甲斐さんごめんなさい案件》
「個人的に大事だなと思うのは、独立時点の貯蓄です。」
▶ × 実はここ3〜4年給料が下がりすぎて、目標金額に達していない(言い訳)
▶× 入社1年目並の月給が続き「貯蓄できないわ 」と確信しました……約8年勤めてきたのに……ぐすん(言い訳)
▶× あと2倍貯めたかった(言い訳)

以前の私は、「フリー・独立=カッコイイ!」と思っていましたが、現実、私の経歴は全然かっこよくなく、報告した半数からは「マジ?」「やばい」って引かれました(苦笑)

約半数の「応援してるよ!」「何かあったら話聞くよ」と声かけてくれた方々に感謝しつつ、今度は私が誰かの背中を後押しできるようになりたいです。重ためな内容の相談に、親身に答えていただき、本当にありがとうございました!

「いつか、一緒にお仕事したいです!」

【“その後”からのご相談】
GOOD MEETINGで拝見した時から「甲斐さんのようなアトリエ部屋を作りたい!」という一つの目標ができました! 独立したものの、現状は低収入で、場所探しもできておらず、ほぼ未定の現状ですが……。

そして一番の問題は、私が部屋を片付けられない奴なのです。30年以上生きてきましたが、片付ける・整理整頓・断捨離が苦手すぎて辛い。ここ数年、大量の遺品整理をしたことをきっかけに、甲斐さんのようなアトリエ部屋を作って気持ち良い空間を作れるように、頑張って一歩踏み出そうかなとも考えています!

ぜひ、甲斐さんのアトリエ部屋を作ったきっかけや、作るまでの過程をお聞きしたいです!

ジャスコさんは9月からフリーのデザイナーとして独立されるとのことで、この8月は比較的余裕があるのでしょうか。この時期に机周りだけでも理想形に近づけておくと、より仕事を楽しめるのではと思います。私は出身校や職業柄、フリーランスのデザイナーの友人・知人が多い方です。自宅の一角を仕事場にしている方や、事務所を構えている方と、環境はそれぞれ違っていますが、共通しているのは、コックピットのように機能的な机周り。みなさん1日の大半を机に向かって過ごしているので、より心地いい環境作りに行き着いたのでしょう。

「片付ける・整理整頓・断捨離が苦手すぎて辛い」というジャスコさん。最初は部屋全体でなくてもいい。まずは机周りから。「いつかデザイナーとしてアトリエ取材を受ける」自分を想像してみてはいかがでしょう。私もよくアトリエで取材をお受けするときには、机に向かって写真を撮っていただくことがあります。フリーランスになると、取材を受けるなどということが出てくるかもしれませんので、いつそのときがきてもいいように、「人に見せられる場所」を意識して仕事がはかどる場所を整えてみてください!

と、すでに【“その後”からのご相談】である、「アトリエ部屋を作りたい!」の話題に入っています。そう、最初は自宅の一角、1畳分で十分です。ただ自宅で仕事をする上では、「そこに座ると気持ちが切り替えられる場所」があると現実的に都合がいいですよ。私は文筆家としての経歴以前に、1999年から京都で自身のブランド「ロル」を立ち上げたのですが、そのときから、今では考えられないほど大きなスケルトンのMacを一台でーんと置いた木の机を、自分ではアトリエと呼んでいました。

2001年に上京して、2005年頃から独立したアトリエを構えていますが、自宅と仕事場を分けたいなと思い始めたのには現実的な理由がありました。

1. 文筆業だけでなく、雑貨ブランド「ロル」の運営もおこなっているので、在庫管理をするスペースが必要なこと。文筆業のみならば自宅の一角で仕事ができると思います。 
2. スタッフが通ってくること。web shopの運営などもあり、スタッフが作業をおこなうアトリエが必要でした。
3. お菓子の包装紙、本など、コレクションが多いため、それらを保管する場所の確保。これは結果的に今のアトリエでもスペースが足りず、お菓子の包装紙コレクションは、特大段ボール10箱分ほど、倉庫に預けています。

そろそろ独立したアトリエを持ちたいなと思い始めていたところへ、親しくしていたデザイナーさんから思いがけない情報が。「うちの事務所があるビルの小さめの部屋が空きが出たよ」と知らせがあり、内見して一目惚れ。アトリエと自宅を分けると月々の運営はいっぱいいっぱいでそれなりに迷いもありました。身近な友達がしているように、海外旅行をしたり、貯蓄をする余裕はなくなると分かっていましたが、今この時期はそれでもいいと、思いきってアトリエを持つことに決めました。

GOOD MEETINGの配信などに使用していた現在のアトリエとの出会いも偶然でした。私は引っ越しの予定がなくても常日頃から物件サイトを見るのが好きなのですが、CMも流れていて誰もが知っている物件情報サイトで「築年数は古くてもいい、広さ重視」という条件で検索していたら、たまたま部屋一面に本棚のある物件が出てきました。そのときは、そこまで真剣に引っ越しを考えていなかったのですが、アトリエにふさわしい本棚のある物件と出会えたことで、急遽引っ越しすることに。東京ではこれまで4回ほどアトリエを移していますが、どれも偶然の出会いに近く、その都度その機会に乗じてみたというのが私の場合です。

たしかにフリーランスとしては、アトリエという響きに憧れますよね。けれども自宅の一部も、じゅうぶんアトリエとしての機能を果たせます。住まいの中にアトリエがあることの方が便利なことも多々ありますので、まずはフリーランスとして始動してみて、どんな環境が自分に向いているか模索するのを楽しんでください。今は食事をする机と仕事をする机が一緒かもしれませんが、その場合には、いつか一部屋、アトリエとして独立した部屋を自宅の中に持つという目標を持つと仕事のモチベーションもあがるはず。ゆくゆくはシェアオフィスで……などと、いろいろなパターンをイメージしておくと、その機会がやってきたときに行動に移しやすそうです。

対して私は、あと10年くらいしたら、アトリエをたたんで文筆業だけに専念するのもいいかなとイメージを膨らませているところです。ジャスコさんがこれからフリーランスで仕事をしていく中、きっと何年かごとに転機や変化がやってくるはずです。誰も分からない未来のことで迷うのは当然。迷うことも含めて楽しめるように、ときにゆっくり、ときにぐんぐんと、進んでいってください。ジャスコさんのお仕事を拝見できるときを楽しみにしています!


甲斐みのり(かい・みのり)
文筆家。静岡県生まれ。大阪芸術大学文芸学科卒業。旅、散歩、お菓子、地元パン、手みやげ、クラシックホテルや建築、雑貨や暮らしなどを主な題材に、書籍や雑誌に執筆。食・店・風景・人、その土地ならではの魅力を再発見するのが得意。地方自治体の観光案内パンフレットの制作や、講演活動もおこなう。『アイスの旅』(グラフィック社)、『歩いて、食べる 東京のおいしい名建築さんぽ』(エクスナレッジ)、『地元パン手帖』(グラフィック社)など、著書多数。2021年4月には『たべるたのしみ』に続く随筆集『くらすたのしみ』(ミルブックス)、11月に『にっぽん全国おみやげおやつ』(白泉社)が刊行。

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