続 成田空港 第1ターミナル 【書きたくなる場所 03】

こんにちは。手紙寺 発起人の井上です。

立ち止まって考えたいとき、気持ちを切り替えたいとき、なんとなく気持ちが後ろ向きになっているときがあります。
または周囲の評価で自分を身失いそうになるときがあります。

そのようなとき自分らしさを取り戻せる場所を求めて、ある人は故郷に帰って家族と過ごし、ある人は旅行へ出かけます。そのようなとき、わたしは一人で気に入ったカフェにいき「あの人」に手紙を書きます。

手紙に、いまの気持ちを書きながら、自分の想いを整理します。「あの人」と手紙を通して対話する中で出会った自分の姿は、じつは、最初から探していた自分だったりもします。

前回、手紙を書きたい場所として成田空港第1ターミナルをあげましたが、今回もその続きを書こうと思います。

▾前回の投稿​

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2000年、28歳だった私には長くお付き合いをしたひとがいました。
しかし将来的に二人は一緒になれないということがわかりました。
彼女が留学のためにシンガポールへ行くことになったとき、それを機に、二人でお別れをすることを決めました。

成田空港の第一ターミナルの出発ロビー。最後にそこで彼女を見送ったあと、わたしは出発ロビーの中2階にあるカフェで彼女に手紙を記しました。

正確には、彼女の住所を聞かなかったので届くことのない手紙ですが、手紙に自分の想いを正直に書くことで、別れてから気付く「あの人」の優しやに触れて感謝の想いが溢れてきました。

恋愛だけでなく、卒業などの別れ、死別も含め、私たちは生きていくうえで避けられないことが別れです。

しかし別れることと忘れることが同じである必要はありません。共に過ごした時にかけてもらった「あの人」の優しや気持ちまで忘れてしまうのはもったいないと思います。「あの人」と一緒にいた時間にはさまざまな出来事があったはずです。

成田空港第1ターミナルは私にとって、別れを決意した28歳の自分に会える場所です。ここで「あの人」に手紙を書くことで、当時の自分と対話し、自分らしさを取り戻すことができるように感じています。

空港という、出会いと別れの情景の繰り返される空間。
「別れ」とは、悲しいことが多いけれど、誰かにとってそれは出発であり、大きな決意、新天地への一歩でもあります。私はそんな多くの人の気持ちの混ざったこの場所が好きです。

手紙を書くとき、場所は大切なエッセンスです。すべての人にとって、それを同じ場所で叶えるのは難しいけれど、自分が心を開き、言葉を紡ぎだすことのできる空間が、どなたにもあるのだと想います。

この喫茶手紙寺分室のnoteで、それぞれがこころを開くことができるカフェや場所を知ることができれば嬉しいです。

*編集部より*
あなたの  #書きたくなる場所  をハッシュタグをつけてnoteに綴って教えてください。喫茶手紙寺分室のマガジンに集めていければと思っています。

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井上 城治  | 手紙寺 発起人
1973年生まれ。東京都江戸川区の證大寺(しょうだいじ)住職。一般社団法人仏教人生大学理事長。手紙を通して亡くなった人と出遇い直す大切さを伝える場所として「手紙寺」をはじめる。趣味は、気に入ったカフェで手紙を書くこと。noteを通して、自分が過ごしたいカフェに出会えること
を楽しみにしています。

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