【エッセイ】ランニング
とうとう庭の柿も全部取り尽くした。明後日から霜月になるし、そろそろ冬服の準備をしないと。
こんな私の想いとは裏腹に今日は気持ちの良いくらいの青空で暖かく過ごしやすかった。徐々に冬に近づいている中、ほんのちょっとだけ秋の美味しい部分を齧っている感じ。こういう天気なら私も体調は良い。久しぶりに走る事にした。
私は適応障害とコロナ禍のダブルパンチで体重が十キロふえ、体内年齢が実年齢プラス六歳になってしまった。
さらに復職後もテレワークのせいで運動を全くしなくなった事で、謎に右足膝が固まってしまい歩けなくなったこともあり、どんどん運動から遠ざかっていた。
だが最近足の痛みも取れ始め、最近はダイエットを試みるようになった。(この辺りの詳細は下記のリンクからご覧ください。)
一応筋トレと散歩は一週間程継続しているが、特に目立った効果は現れない。やはり有酸素運動が足りないのだろうと私は考えていた。一万歩歩くのも効果はあるが、走った方が効果あるんじゃないか。というか、昔みたいに走れるようになりたい。常日頃そう考えていた私にとって今日の天気と体調はベストだった。久しぶりに走れる。
私は動き易い格好に着替えて外に出た。いつものランニングコースへ向かう。久しぶりに走ったからか、いつもより空が広く感じた。まるで巣立ち直後の鳥のような気持ちで
「世界はこんなに広かったのか。」
と思いながら走った。いつも散歩道にも使うコースなのに、いつもより自由になったような気がした。
信号が赤になり走る速度を緩めた時、犬の散歩をしていた姉妹と思しき顔の似た人達がじっとこちらを見ながら道を開けてくれた。ただ、あまりにも二人とも私を凝視していたのでちょっと気になった。久しぶりに自由を感じていた私は浮かれていたからか、
「もしかして、私マスクイケメンなんじゃない?」
と思いながら走った。
中間地点を折り返し、私の呼吸も大分荒くなっていた。折り返してからが長く感じる。マスクが口にへばりつき、さらに呼吸が苦しくなる。ここからが我慢タイムだ。ここを我慢して走りきれば、今のベストなタイムを叩き出せる。私は苦しみながらも自分との戦いに死力を尽くしていた。
右足首がピキッと音を立てた。あっ、と思い私は走るのを辞めてウォーキングに切り替えた。すぐに異変に気づいたからか、そこまで痛みはひどくない。だが、これ以上走るのは何となく危なそうだ。ここから先は歩いて帰ろう。十分走っただろうと思い、スマートウォッチを確認すると、三キロメートルの表示が出た。まっ、久しぶりだからこんなもんでしょう。私は達成感に包まれながら、足元の落ち葉を眺めながら歩いて帰宅した。
そういえば、この辺さっきの姉妹がいた所だな。もういなくなってるけど、散歩終わったのかな。何であの時私の事を見てたんだろう。
私は落ち葉を眺めながら気づいた。社会の窓が全開だった。私は冷静に全開の窓を閉めた。落ち着き始めていた鼓動がさっきまでとは違うビートを強く刻み始めた。
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