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【エッセイ】久しぶりのスーツ

転職活動のため久しぶりにスーツを着た。今まではテレワークだったのでずっと私服だった。着てみるとワイシャツやらパンツやら、コロナ禍と鬱状態で貯蓄した脂肪のせいでパンパンである。
「あら、これベルト要らないんじゃない?」
通勤中、パンツが破けて下着が見えてしまわないだろうか。それはそれでnoteのネタになるから良いんだけど。運動習慣は金を払ってでもやった方が良いね。まったく。

そして久しぶりにネクタイを締める。いや、久しぶり過ぎてネクタイの締め方がわからん。こうか、こうかとネクタイと格闘してる内にネクタイがぐちゃぐちゃになっていく。やっとのことでネクタイを締めると、我ながらデブった癖にちゃんとして見える。

そういえばネクタイピンどこに置いたっけ?久しぶり過ぎて七畳の空間でネクタイピン探しの旅が始まった。どうせ箪笥の中にあるだろうと夏服と冬服をひっくり返しながら探してみると、ゴミばかり入ってる箱の中から懐かしのネクタイピンを見つけた。ここまでで結構疲れた。

そして革靴を履く。スーツを着ていた頃は、ほぼ毎日革靴を磨いていた気がする。シューキーパー買ったり鏡面磨きとか勉強したなあ。今じゃ遠い思い出だが、年季の入った良い感じの革靴に憧れて友人に色々レクチャーしてもらった記憶が懐かしい。今履いてる靴は、わざわざ新宿の高島屋で友人達と一緒に買った思い出の靴である。いざ、私はこの靴で面接に赴くことにした。

久しぶりに履いた革靴はピチピチ過ぎて歩いて速攻でマメができた。クソ痛い。何でこんなキツキツの痛い靴を我慢しながら履かなければいけないのだろう?テレワークで鈍った私の心がそう問いかける。しかも先週から続く関節痛の影響もあり、私の右足はダブルパンチでボロボロだ。私はいつもよりも半歩しか足が前に出ず、しかも右足を引き摺りながらやっとの思いで電車の座席に座った。
「これ、ちゃんとたどり着けるのか…?」
私は駅を降りた後、オッサンだけどよちよち歩きをしながら徒歩五分でたどり着ける距離を十分かけて歩いた。もうヤバイ。面接前に限界が来そうだった。とにかく足が痛い。スーツのパンツが破けて下着になっちゃう妄想なんかどうでもいい。あの時今の靴をオススメした高島屋の店員に心の中で悪態を吐きつつ、もうこの革靴捨ててしまおうかなどとあらぬ事を考えてしまった。

転職候補の会社に着いた。
面接自体はスムーズに行き、我ながら手応えがあったように思う。帰り際、試験官に
「足、どうされたんですか?」
と聞かれたので、理由の一つである
「いや、関節痛で。」
と言ったところ
「ちゃんと運動したほうが良いですよ。」
と心配されてしまった。小っ恥ずかしい。
足が治ったら運動しよう。そうしよう。

もうずっとテレワークが良い。ずっと私服が良い。風呂場でマメで破れた足の皮を捲りながらまた一つ転職の軸ができた。

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