オールタイムベストMV(後編)

前回までのあらすじ
 なんやかんやあって100名で決めるオールタイムベストMVランキングを発表しているところである(詳細は前の前の記事を参照)。いよいよトップテンの発表。


第10位 25点

 Guns N' Roses/November Rain (1992)
 監督:Andy Morahan

 Gunsが当時物凄く売れていたことが分かる、非常にお金のかかったMV。GunsのMV3部作の2部目に当たります。ストーリーは唐突な展開が多くこれだけだと正直よく分かりませんが、Del Jamesの小説"Without You"に着想を得ていると注釈がありますね。


第9位 26点

 Ken Ishii/Extra (1996)
 監督:森本晃司

 "AKIRA"の作画監督補を務めた森本晃司が手がけたアニメーションMV。"AKIRA"は勿論、攻殻機動隊っぽさもあり、世界が求めるジャパニメーション的なサイバーパンクな世界観です。

 公式アップロード無し


第8位 29点

 The Verve/Bitter Sweet Symphony (1997)
 監督:Walter Stern

 Richard Ashcroftがロンドンの街を色んな人に迷惑をかけながら練り歩くMV。途中でボコボコにされるシーンがある別ver.が存在します。ラストシーンは"The Drugs Don't Work"のMVに繋がっています。


第7位 31点

 サカナクション/アルクアラウンド (2010)
 監督:関和亮

 洋楽勢の中で大健闘したサカナクション。ワンカット撮影+CGをあえて用いない斬新な歌詞の提示法+ループ構造と見所ばかりで何度も見直したくなります。撮影に当たっては山口一郎の陰で他のメンバーも滅茶苦茶大変だっただろうなと思います。 


第6位 35点

 Michael Jackson/Thriller (1982)
 監督:John Landis

 アメリカ議会図書館でフィルムが永久保存されたMV界の金字塔。音楽のオマケとしての映像ではなく、このMVでは音楽は劇伴、映像がメインというMichaelの考えが感じられます。


第5位 39点

 The Chemical Brothers/Let Forever Be (1999)
 監督:Michel Gondry

 映画Snatchのオープニング+人力万華鏡といった雰囲気のMV。映像があまりにスムーズに接続されていき目が飽きません。女性が見ている悪夢を描いているようですが、「悪夢系」ってMVのジャンルの一つですよね。


第4位 40点

 Jamiroquai/Virtual Insanity (1996)
 監督:Jonathan Glazer

 カップラーメンのCMでも一部が流れ、お茶の間での知名度も抜群のMV。動く床の映像のインパクトは大きいですが、逆に壁を動かしていたという撮影方法にも度肝を抜かれます。


第3位 43点

 a-ha/Take On Me (1985)
 監督:Steve Barron

 コミックと現実を行き来する、MVといえばコレというほど有名なMV。あえてラフな鉛筆画なのが現実との対比として良い持ち味になっています。このストーリーは"The Sun Always Shine on TV"という曲のMVに続いています。


第2位 45点

 The Chemical Brothers/Star Guitar (2002)
 監督:Michel Gondry

 メンバーどころか人間もほとんど登場しない、車窓の風景がひたすら流れるMV。初めは当惑しますが意図に気がついた時は感動します。これを思いつき、そして実現させたGondry監督には脱帽です。


第1位 51点

 Blur/Coffee & TV (1999)
 監督:Garth Jennings

 色々と映像的な面白さを追求したMVが並びましたが、最後は「可愛い」が勝ちました。人気があるとは思っていましたがまさか1位とは……。最後のオルガンのフレーズはこのMVのために作られたのか?いつも気になります。


おわりに:

 Michel Gondry監督作品やJonathan Glazer監督作品を差し置いて、第1位はBlur/Coffee & TVというまさかの結末であった。参考までに、Pitchforkが選ぶ90年代ベストMV TOP 50においては同MVは14位。あらゆる音楽メディアがベストMV企画を行っても、人気があるとはいえこれが第1位に輝くことは恐らく無いような気がするので、参加型企画の独自性が出た良い結果になったのではないだろうか(実際にTwitter上での発表時も意外であるという声が多かった)。また、参加型企画の特性という面に加えて、「日本らしさ」という面も反映された結果になったように思われる。

 蛇足であるが、今回の結果のその他の集計結果も載せておく。今回noteに載せた上位109本のみの解析でしかないが、年代別内訳(表1)、2本以上ランクインした監督の内訳(表2)は下記の通りである。年代別としては80年代がやや低い傾向があるものの、MV黎明期であったことを考えると、概ね各年代均等に選出されている印象である。監督別ではJonathan Glazer監督のランクインが"Virtual Insanity"のみであるのは意外であった。

 また、全ての集計結果のパレート図もお示ししておく(図1)。今回の企画のように選択肢が無数にある条件下での人気ランキングでは、ロングテールと呼ばれるニッチな需要の得点が、総得点数の8割程度を占めている状況が分かる。なので、今回の結果からランキングとしての意味合いがあるのは、46位程度(12点〜)より上位ということになりそうである。しかしながら10点獲得作品というのは個人が強い思い入れで10点満点ぶち込んだ作品と、複数人からの細かい支持を集めて10点に到達した作品が混在しており、良い意味で混沌としており見ていて面白かった。

 本企画及び本noteが皆様の新たなMVとの出会いの一助となれば幸いです。

スクリーンショット 2021-07-06 19.18.18

スクリーンショット 2021-07-06 19.18.08


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?