オールタイムベストMV(中編)
前回までのあらすじ:
なんやかんやあって100名で決めるオールタイムベストMVランキングを発表しているところである(詳細は前の記事を参照)。ここからはアナログタロウ風一言解説付。
結果:
第46位 12点
神聖かまってちゃん/ロックンロールは鳴りやまないっ(デモver.) (2008)
監督:の子
次々に時代を越えて洋・邦のロックスターが現れるMAD文化を象徴したようなMV。著作権の問題でYoutubeではBANされてしまいました。
ユニコーン/大迷惑 (1989)
監督:板屋宏幸
オーケストラと共演しているいかにもお金がかかっていそうなMVですが、エキストラを十分に雇うお金が無く、合成を使用しているというエピソードが歌詞同様に悲哀を感じます。
サカナクション/忘れられないの (2019)
監督:田中裕介
80年代の歌番組風セットに、杉山清貴風の山口一郎。この時代にちゃんとアスペクト比4:3で作られており、ここまで寄せ方が徹底していると痛快です。
キンモクセイ/僕の行方(2001)
監督:澤井昭彦
ドリフのコント風セットは実際のスタッフが作っているそうです。こうしてオマージュがどんどん出てくるのを見ると80年代は他よりも視覚的インパクトが強い時代だったんですね。
The White Stripes/The Hardest Button To Button (2003)
監督:Michel Gondry
人間によるストップモーション、ピクシレーションを使用したMVです。Beckが一瞬登場しています。使用したドラム・アンプの数は32台とのこと。
sasakure.UK/*ハロー、プラネット。 (2009)
監督:sasakure.UK
ボーカロイド作品のランクインとしては唯一。チップチューンに合わせたドット絵ムービーです。この手のMVは海外受けが良さそう。
Pavement/Gold Soundz (1994)
監督:Scott Blen
音だけでなく映像もローファイなPavementの作品。サンタクロースに扮したメンバーが街へゆるく繰り出します。終わり方もなんとなくぬるっと終わっており、らしいと言えばらしいです。
My Chemical Romance/Welcome To The Black Parade (2006)
監督:Samuel Bayer
アルバム"The Black Parade"の世界観を表したMV。死(Black Parade)を迎えようとする患者が再び生きようと決意するまでを描いているそうです。
Massive Attack/Teardrop (1998)
監督:Walter Stern
胎児が曲を口ずさむ不思議な雰囲気のMV。視覚が生じてくる頃を表しているのでしょうか。ミニマルなリズムが心音に聞こえてきます。
group_inou/HEART (2011)
監督:AC部
邦楽MV界で圧倒的な存在感を誇るAC部の代表作。歌詞を部分的に拝借しながら謎の連ドラが展開されます。「気持ちのいい男達が登場〜」というサムネイルの初見時のインパクトは凄かったです。
Childish Gambino/This is America (2018)
監督:Hiro Murai
現代アメリカ社会の人種差別、銃社会といった問題点をかなり直接的に描くことで大きな話題を集めたMV。これは曲とMV、2つ揃って初めて1つの作品であり、MVの最も効果的な使われ方だと思います。
第40位 13点
livetune adding 中島愛/Transfer (2012)
監督:ファンタジスタ歌磨呂 x 池田一真
単なる可愛らしいアニメーションMVかと思っていると、どんどん歪な世界観へ。ひたすら反復するモーションはテクノ的ですね。
The Police/Every Breath You Take (1983)
監督:Godley & Creme
モノクロ映像の中で淡々と演奏するメンバーがただひたすらに格好良いMV。Stingのルックスがとにかく良い。こういう映像が付くとより一層ただのラブソングに聴こえますが……。
Paul McCartney and Michael Jackson/Say Say Say (1983)
監督:Bob Giraldi
「飲むだけで強い力を得られる」という薬を売る詐欺師一行を描いたショートストーリー。PaulはMichaelの横で踊ることにとても不安だったようですね。
Michael Jackson/Black Or White (1991)
監督:John Landis
まんま「ホームアローン」のノリの冒頭の寸劇が楽しいです。モーフィングが特徴的なMVですが、当時の技術では1コマずつ人力で編集せざるを得なかったというのが驚き。
Michael Jackson/Beat It (1983)
監督:Bob Giraldi
本物のギャングたちを出演させたことで有名なMV。一見暴力的な映像に見えますが、暴力を否定するための"Beat it!"(逃げろ)なんですね。
Beastie Boys/Intergalactic (1998)
監督:Nathanial Hörnblowér(Adam Yauch)
日本の60年代特撮風MV。序盤はスタートレックっぽさもあると思っていたら歌詞にミスタースポック登場。ロケ地は渋谷・新宿だそうです。
第33位 13点
Red Hot Chili Peppers/Dani California (2006)
監督:Tony Kaye
往年のロックスター達をビジュアルカバー。その中に自分たちも入っているぜ!という矜持を感じます。演っていて楽しそうなので見ている方も楽しいですね。
Radiohead/No Surprises (1997)
監督:Grant Gee
宇宙飛行士風ヘルメットを用いて撮影されています。側から見ると拷問にしか見えなそう。Thom Yorkeはなかなか長時間息を止められず苦労したそうです。
Radiohead/Fake Plastic Trees (1995)
監督:Jake Scott
極彩色の無機質なスーパーマーケットの中をカートで運ばれていくメンバー。消費社会への批判的な歌詞に呼応しています。
Kylie Minogue/Come Into My World (2002)
監督:Michel Gondry
Kylie(と背景)がどんどん分裂していく名MV。今見てもどうやって撮っているんだろうと首を傾げてしまいます。Gondry監督の真骨頂ですね。
Kraftwerk/The Robots (1978)
監督:Günter Fröhling
後のDaft Pankに影響を与えたであろう元祖?ロボットMV。Liveでも4人のロボットが登場することでお馴染み。
Fatboy Slim/Praise You (1999)
監督:Spike Jonze
たった800ドルで製作されたゲリラダンスMV。中心で踊っているのはSpike Jonze監督本人。ダンサーとしては素人のはずですが、謎の貫禄があって笑えます。
bloodthirsty butchers/JACK NICOLSON
監督:イシバシミツユキ
田渕ひさ子加入後初アルバムの1曲目。偶然銃を手に入れた男が繰り広げるドタバタアニメーションMV。ラストシーンは吉村秀樹没後の今見ると切ないですね。
公式アップロード無し
第28位 15点
Porter Robinson & Madeon/Shelter (2016)
監督:赤井俊文
海外アーティストで現代のジャパニメーションをこんなにストレートに用いたMVが出てくるとは。Youtubeの概要欄でPorterはサラッとネタバレしていますので注意。
Nine Inch Nails/Closer (1994)
監督:Mark Romanek
マッドサイエンティストのラボを描いた非道徳的モチーフに溢れる衝撃的MV(閲覧注意)。その裏で途中に出てくる猿が、撮影スタッフの一部よりも高額な給料をもらっていたというエピソードは笑えます。
New Order/The Perfect Kiss (1985)
監督:Jonathan Demme
New Orderというバンドには珍しく、演奏撮影型の非常にシンプルなMV。 Stephen Morrisのダイナミックなドラムが撮れると思っていたらリズムは打ち込みでがっかりしたそうです。
Johnny Cash/Hurt (2002)
監督:Mark Romanek
"You stay the hell away from me, you hear?"というセリフの挿入がカッコ良い、私のオールタイムベストMVです。全てが詰まっています。遺作となりましたが、こんな完璧な最期があるでしょうか。
Beastie Boys/Sabotage (1994)
監督:Spike Jonze
70年代アメリカン刑事ドラマのパロディですが、今はこれが古典となり孫パロディが作られているのが感慨深いですね。相変わらずの馬鹿馬鹿しさで笑えます。
第24位 16点
The Smashing Pumpkins/Ava Adore (1998)
監督:dom&nic
スローモーションとファストモーションが効果的に使われたMV。ワンカット撮影なのが凄い!リップシンクが難しすぎて撮影中諦めそうになったそうです。
LUNA SEA/ROSIER (1994)
監督:大坪草次郎
LUNA SEAがここに入ってくるの正直びっくりでした。90年代ビジュアル系とその派生系統の王道スタイルMV。色使いや画角、ポーズなど、当時こういうMV沢山あったなあと感じます。
Kendrick Lamar/Alright (2015)
監督:Colin Tilley
現代アメリカに黒人社会から警鐘を鳴らす、"This is America"と双璧を成すMV。こちらはやや抽象的でスタイリッシュなカットが多い印象で、ネット上では各シーンに対する様々な考察が生まれました。
group_inou/EYE (2015)
監督:橋本麦 / ノガミカツキ
AC部ではない綺麗なgroup_inou。Google Mapストリートビューの画像データを用いたMV。正にテクノロジーの進歩が撮影を可能にした作品ですね。
第22位 17点
キンモクセイ/車線変更25時 (2002)
監督:信藤三雄
フリッパーズ等も手掛けた信藤三雄の作品ですが、シュールすぎて本人達も未だに意味不明だとのこと。80年代オマージュの謎ダンスに馬にヘルメット。
Michael Jackson/Bad (1987)
監督:Martin Scorsese
説明不要の名作MV。Childish Gambino、Kendrick Lamarの30年前に、既にこのMVが存在しており、今もなお銃社会とそれに付随する事件は無くなってはいません。
第15位 19点
Elvis Costello & The Attractions/I Wanna Be Loved (1984)
監督:Evan English
モノクロのCostelloに、老若男女がキスをするたび世界が色づくMV。「愛されたい」というタイトルやこのMVは、当時離婚の危機に瀕していたCostelloの心情を表しているのでしょうか(結局アルバムリリース後に離婚してしまいました)。
Weezer/Buddy Holly (1994)
監督:Spike Jonze
1970年代のテレビ番組"Happy Days"を模したMV。WeezerはLA出身なのに何故か「Kenosha出身」と紹介されています。初めは黄色い歓声を受けるメンバーですが、最後は他の男性にお株を奪われしょんぼり帰るのがらしいオチですね。
Radiohead/Paranoid Android (1997)
監督:Magnus Carlsson
Melody Maker誌曰く、"Psycho-Cartoon"。このMVの制作に当たり、Radioheadは歌詞をそのまま反映したMVになることを嫌がりCarlssonにわざと歌詞を渡さなかったそうです。世間が求める暗くダークなものではなく、笑えるMVにしたかったとのこと。
Björk/All Is Full of Love (1999)
監督:Chris Cunningham
不気味の谷に容赦無く突き落としてくるCheris Cunningham作品。アンドロイド同士の模倣的性愛行動が描かれますが、「すべては愛で満ちている」というテーマに対しどことなくダークな雰囲気です。
Aphex Twin/Windowlicker (1999)
監督:Chris Cunningham
2連続Cunninghamです。若干出オチ感のある、邪悪なMichael Jacksonといった趣のMV。リムジンのシーンはやりすぎで何度見ても笑ってしまいます。冒頭の会話は英語が分からなくても雰囲気そのままのことしか言っていないので大丈夫。
第14位 20点
David Bowie/Ashes To Ashes (1980)
監督:David Mallet
変幻自在なビジュアルで有名なBowieですが本作ではピエロに扮してマイムを披露します。非常にサイケデリックな雰囲気のMVですが、精神世界などを描く実験映画監督Kenneth Angerによる短編映画、"Rabbit's Moon"に影響を受けているようです。
第13位 21点
Kate Bush/Cloudbusting (1985)
監督:Julian Doyle
実在の精神科医Wilhelm Reichとその息子Peterを描いたショートムービー。Reichが発明した天候をも操る機械"Cloudbuster"が登場します。よく観ると時間の流れがねじ曲がっておりSF的な雰囲気もあります。
第12位 22点
Mr.Children/くるみ (2003)
監督:丹下紘希
架空のバンドMr.ADULTSの物語で、メンバーは桜井和寿がラストシーンに登場するのみ。ストレートなストーリーですが、元バンドマンには刺さる内容ではないでしょうか。私はこのMVを見ると漫画「20世紀少年」を思い出します。
第11位 24点
Aphex Twin/Come To Daddy (1997)
監督:Chris Cunningham
Cunninghamやはり強いですね。ダークでショッキングな作風が魅力の監督ですが、これはもはや完全にホラームービー。撮影場所は「時計じかけのオレンジ」でも使用された公営団地。主演のCarol Lorneは撮影中本当に怖がっていたそうです。
⇨トップテンは次の記事に続きます。
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