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【コラム】親愛なる琉球ガラス

私は、琉球ガラスが大好きです。
世界中のどんなガラス製品よりも好き。
初恋の男子中学生が、女の子に恋い焦がれるのと同程度には、琉球ガラスに惚れ込んでおります。

琉球ガラスと花

1. 琉球ガラスは沖縄の工芸品

琉球ガラスとは、職人が竿から息を吹き込んで形を作る「吹きガラス工法」でつくられた、沖縄のガラス工芸品を指します。
たくさんの気泡が入った、琉球ガラスならではの明るい輝きは、まるで沖縄の波を閉じ込めたかのよう。空や花をイメージさせる、カラフルな色合いも魅力です。

1-1.ガラスの再利用から生まれた芸術

沖縄では、明治時代からガラス製品が作られていました。
しかし、第二次世界大戦をきっかけに、その文化は転換を余儀なくされます。
空爆のため、ガラス工房が壊滅的な被害を受けてしまったのです。

戦後、原料が手に入らなくなったガラス職人たちは、あるものに目をつけました。
在留米軍の施設から出る、コーラやビールなどの空き瓶です。
職人たちは空き瓶を溶かし、吹きガラス工法によって製品を作るようになりました。
これが沖縄の芸術、琉球ガラスの始まりです。

1-2.気泡と厚みのマリアージュ

琉球ガラスには、ぽってりとした厚みがあります。
この愛らしい厚みの中に、大小の気泡が閉じ込められているのが、すぐに琉球ガラスとわかる大きな特徴です。

空き瓶を再利用して作るガラス製品は、瓶に残ったラベルなどの影響から、気泡が入りやすくなってしまいます。
本来なら、気泡が入ったガラスは不良品と見なされますが、琉球ガラスは違いました。
沖縄という、海が美しい土地柄なのでしょうか。波しぶきのように輝く気泡は、失敗どころか、魅力的な味わいとして評価されたのです。

琉球ガラスペア

2.私が惚れた琉球ガラス

コレクションとまでは言えませんが、私が実際に持っている琉球ガラスは、とても素敵なものばかり。
その一部をご紹介します。

2-1.ひとめ惚れしたホタルガラス

実は、私が最初に心を奪われたガラス製品は、琉球ガラスではありません。
「ホタルガラス」という、沖縄でよく作られているトンボ玉でした。
独特の輝きは、原料に使われている銀箔によるものです。

ホタルガラス

闇のような濃青に浮かぶ、きらめきを包んだ明るい青。
沖縄のセレクトショップで見つけた、ホタルガラスの凛とした美しさに、私は立ち止まってしまいました。
沖縄の真っ暗な夜の中、満月に照らされた海が輝いている。
そんな光景が、脳裏に広がったことを覚えています。

2-2.海を閉じ込めたグラス

ホタルガラスをきっかけに、沖縄のガラスに興味を持った私。
いろいろと調べていくうちに、すっかり琉球ガラスの虜になってしまいました。
もちろん、自宅でも愛用しています。

My glass

私が毎日使っているのは、ぼこぼことしたこちらのグラス。
沖縄の海を固めたような、とても素敵な一品です。
琉球ガラスは、見た目の美しさだけでなく、唇をつけた時の触感にも魅力があります。
硬いはずなのに、柔らかみがある不思議な触感。
飲み物の喉越しも、まろやかになるよう気がします。

2-3.細かい気泡のグラスとフラワーベース

硝子家すずめの製品

今年、私は沖縄県読谷村にふるさと納税をしました。
写真は、その返礼品でいただいた「硝子家すずめ」様のグラスとフラワーベースです。

写真ではわかりにくいのですが、とても細かい気泡が入っています。
これは、原料に蛍光灯のリサイクルガラスを使っているから。
納税をしてから作ってくださった、私のための琉球ガラスです。
光にかざすと、角度によって色合いが変わるのが大きな魅力。思わず見とれてしまいます。

3.琉球ガラスが示してくれること

戦争で大打撃を受けた職人たちが、空き瓶から作り上げた琉球ガラス。
気泡を含んだきらめきは、本来なら「不良品」と言われるものでした。
しかし、琉球ガラスはその気泡ごと、高い評価を得たのです。

3-1.不良品も失敗作も一部の偏見

人は時として、他人の特徴や個性を、ダメだと決めつけてしまうものです。
しかし、それは別な視点から見ると、素晴らしい輝きを放っているのかもしれません。
まるで、独特の美しさを認められた、琉球ガラスの気泡のように。

もちろん、それは自分自身にも言えることです。
コンプレックスだと思っている個性も、他人の目には、キラキラと光って見えるのかもしれません。

3-2.逆境を跳ね返す力を持とう

空き瓶の再利用から始まった琉球ガラス。
その色合いは、どの瓶を溶かしたかにより決まりました。
お酒の一升瓶なら琥珀色、炭酸水や果汁の瓶なら緑色。
そんな制約さえ、美しさの源になったのです。

原料が手に入らないから、製品が作れない。
職人たちは、その逆境を見事に跳ね返し、琉球ガラスという工芸品を生み出しました。
人は、知恵と工夫によって、困難を打ち破ることができる。
琉球ガラスの歴史が、そのことを教えてくれます。

ポトスと琉球ガラス

4.おわりに

ここまで、琉球ガラス愛をめいっぱい語ってきました。
知れば知るほど、使えば使うほど手放せなくなる。琉球ガラスには、そんな不思議な魅力があります。
もしもお店で見かけたら、ぜひ、手に取ってみてください。
硬いはずなのに柔らかみがある、不思議な触感が手のひらに広がります。

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