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スウェーデンの森で子どもたちは何を学んでいるのだろうか? vol,2         (スウェーデンの野外就学前学校での学びや子育て)

巽朝菜さん(スウェーデンの保育士・環境教育実践家)

(vol,2・・スウェーデン交流センターにて)

1)自然はみんなのもの

 先ほどの枝を拾っていただきましたが、子どもたちに枝や自然物を集める活動をやってもらうと、すごく愛着を持ってね、枝を持って帰りたくなります。森に置いていってねって言っているんですが、子どもたちはポケットの中に隠してお家に持って帰る。毎回子どもたちが森から枝を拾ってくるので、保護者の方がもう家が建ちそうなほどの枝があるからから、森に置いてきて言われます。自然のものですので、森に置いてくるようにしようねとは言うんですけど、子どもたちは石とか、いつもポケットに詰め込んでジャリジャリさせながら持って帰ってくるという日常があります。

 スウェーデンの森ですけれども、ちょうどストックホルムから日本に向かう前日にニュースが流れました。それは、スウェーデンにたくさんの人がキャンプに来てるというニュースだったんです。なぜ、スウェーデンに来るかということを話してたんですけど、とても安いと言っていました。どうして安いのかというと、スウェーデンや北欧には自然享受権という法律があります。中世から続く習わしが慣習となったものです。それは、スウェーデンや北欧の人たちは、自然はみんなのもの、共有しようという考え方が根底にあります。ただし、ルールを守れば。

 では、何を共有するかというと、キノコを摘むことができます。ベリーを摘むことができます。ブルーベリーとかラズベリーとかいろんなベリーがあります。それを摘んで食べることができるんですけれども、やってはいけないこともたくさんあります。例えば、乾燥した日が続いたら火は焚いちゃいけないとか、摘んだり、捕ってはいけない絶滅危惧種の植物や生き物だとか、そういったものを注意してみる必要があります。けれども、テントを張って泊まることがどこでも大体できます。いろんなヨーロッパの国からテントを持ってスウェーデンに来て、好きな場所にテントを張って、夏休みを過ごすということをしているんですね。

2)自然に特化したプレスクールの日常

 さて、私はプレスクールで働いてるんですけれども、野外に特化した、英語で言うとアウトドアプレスクールですね。野外で多くの時間を過ごすタイプのプレスクールです。どれぐらい野外にいるかというと、春から秋にかけて、ほぼ1日中野外です。外にしかいないんです。給食も野外。お昼寝も野外。外で寝るんです。冬も実を言うと野外で寝てます。どういうところで寝ているかというと、屋根はついていますが吹きさらしの下で、子どもたちは寝袋に入って寝てるんですね。「えっ」て皆さん言われるんですけど、スウェーデンの人たちは気持ち良いよって言われます。いろんな木々の風にそよぐ音だとか、水のせせらぎ、心地の良い音に囲まれながら子どもたちはスーっと眠りについています。マイナス15度ぐらいまでは外で寝てました。手袋をはめて、帽子をかぶって、毛糸の靴下を履いて、子どもたちめちゃくちゃかわいいです。

 私の園は40人ですけど、小さい園だと思われるかもしれません。小規模が良いとされています。なので、小規模園で、多くて40人とか100人以内の園がたくさんあります。スウェーデンに通う子どもたちってどんな子どもたちかと言いますと、1歳から入学前の6歳まで。5歳になる子どもたちの約95%以上、義務教育ではないんですけれどもプレスクール(就学前学校)に登録しています。

 そこで学ぶことも共通しています。私の園のクラス分けというのは、発見者組が2,3歳、研究者組が3,4歳、冒険者組が4,5歳ですね。私は年長を受け持っています。スウェーデンでは保育者1人に対して子どもが大体5人をみるように配置されています。この裁量というのは園によって決められます。なので、一クラスで大体、保育者が2人ずつチームワークを組みながらクラスを担当していくんですね。私のクラスは子どもたち4歳児、5歳児が16人いる中で2人保育者がいます。

 一、二歳児の子どもたちのリュックはちっちゃいんですけど、リュックサックが大きく見えます。自分で詰めて、荷物を持っていくことを練習していきます。何度も何度も転びながら友達と一緒に2列になって歩いてきます。

 5歳児ぐらいになると、自分で岩を駆け上がって、かなり自立して服装なんかも正しく着れるようになります。「手袋を着けるの嫌だ」、「長靴なんか履きたくない」なんて言うんですけれど、この頃になってくると、手袋をはめていかなければすごく痛い思いをするとか、長靴がないと冷たくなるっていうことを体感してわかってくるので、何が必要かっていうことを学んでいきます。悪い天気などない服装が悪いだけ。逆に言うと、服装を学ぶことでもあるってことですね。

 私は野外で料理を作ることが大好きなので、野外好きの保育者とチームが組めればご飯作りを頻繁にします。ガスボンベと大きな鍋といった機材をリヤカーに積んで運んで行って、給食作りを森の中でしています。

3)スウェーデンの幼児教育の土台にあるもの

 もう少し教育の理念について話をしたいと思います。幼児教育その土台にあるもの、あるいはスウェーデン社会の土台にあるものは何かということです。教育、福祉、医療、全てにおいて土台があります。この土台は何かと申しますと、子どもの権利条約です。
 権利条約はスウェーデンでは1990年に批准されましたが、1989年に国連での採択にスウェーデンは尽くしたと言われています。この子どもの権利条約ですけれども、これは子どもの基本的人権を保障するために定められた国際条例です。これをもう少しわかりやすくセーブザチルドレンのホームページに書いていますので読んでみたいと思います。『世界中の全ての子どもたちが子ども時代を自分らしく、健康的に安心して豊かに過ごせるために必要な権利。』自分らしく、健康的に安心して過ごせるという権利です。

 スウェーデン社会の土台に子どもの権利条約が必ずある。もうちょっと具体的に子どもの権利条約には何が書かれているのか、四つの原則をまずお話したいと思います。54条ある中で、この四つの原則というのは非常に大切だと言われています。幼児教育現場、学校の現場、先生方はこの権利条約をよくわかっています。差別の禁止2条、子どもの最善の利益3条、生命、生存発達の権利6条、聞かれる権利、よく意見表明権の12条、この四つの権利は、私達幼児教育者、並びに福祉関係、医療関係の皆さんが理解しています。これを土台にして、今日の活動はどうしようかとか、幼児教育の環境はどうあるべきかということを議論しています。

 中でも、子どもの最善の利益。現場では、「子どものベスト」というふうに言ってます。子どもたちにとって何がベストかということを、子どもたちの意見を聞きながら考えていく。大人が良かれと考えて決めていくのではなくて、よく現場で言うのは、子どもの権利条約の眼鏡をかけてくださいって言うんです。どういう眼鏡かというと、半分は子どもの意見です。第12条、意見表明です。子どもに必ず質問する、子どもの意見を反映する。それが眼鏡の半分です。もう一方の眼鏡は、例えば、研究者の意見だったり、国の法律だったりということを、半分の目で見ます。 それで、両方を考慮して、子どもの権利条約を実現すると考えます。それを具体的に現場に落とし込みどう実現していくかということを考えていくことになります。

 こういう土台がある中で、子どもたちの生活はどうなっているのでしょうか? 0歳児は家庭で養育します。なので、0歳児の保育はないんですね。0歳児は、お家で子どもたちが安心して見られる環境を作っていきます。なので、お父さんが頑張って掃除機かけています。子どもは後ろに背負われています。こういう日常の生活があるということです。
 日本の記事では、スウェーデンの男性は約9割が育休を取ってるというふうに言われてますけれども、親、2人が取らなければ消滅してしまうという育休制度を作っていて、片方だけでなく両方が取るようになっています。ですけれども、スウェーデン国内では男性と女性の比率がまだまだだっていうふうに言われています。平等には程遠いと厳しい言葉を社会保険庁は語っています。

 病児保育はありません。子どもたちが病気したときは必ずお家で見るようにしています。気軽に休めます。自分の子どもが熱を出したと保育者で自分も親である人が言うことがあるんですけど、皆さんすぐ帰りなさいって言います。子どもたちのために帰ってって皆さん口を揃えて言います。
 延長保育もほぼありません。自治体で何時から何時まで開園というのが決められています。それ以上長く働くことはありませんし、子どもたちも遅くとも18時には返される。親は時間内に迎えにきます。休日の保育も、特別な職種でない限りありません。なのでお家でみる。社会保障が保障しています。国の責任です。家庭福祉制度が非常に充実している。育児休暇が480日、16ヶ月あるのでパートナーと交互に休む、あるいは同時に休むことができます。親の育児看護休業があります。職場を休みやすい環境がスウェーデンにはあります。時短労働もできます。これによって家庭の時間が保障されているです。子どもたちの日々の暮らしの中、家族と夕食を囲む時間があるということです。これを、国が保障しているということです。
 私の園でも午後5時が最大です。4時半から5時の間に残ってる子どもたちは大体数人ぐらい。午後3時に1歳児2歳児が大体迎えにきます。朝始まるのも午前7時半から始まりますが、7時半でも1人か2人来るぐらいですね。大体9時にみんなが揃って、3時には帰っていく。6時間ですね。家庭でお父さんが、あるいは男性が食事を作って、女性が買い物に行って、役割分担を上手にされています。こういう環境がスウェーデンの中にあり、幼児教育があるということです。

 毎年、プレスクールを義務化するかという国会での議論があります。それはどうしてかと言いますと、「人権や民主主義の価値観」の教育理論を体験的に、生活の中で身につけていくということができるからなんです。学童期になると非常に難しくなってくるから、義務化しようかという流れがあります。この教育理念は幼児教育だけではありません。学校、小学校、成人教育も全て同じ教育理念です。教育はスウェーデン社会が土台とする人権の尊重と民主主義の基本的価値を定着させなければならない。日常生活を通して、環境から身につけていくということになります。

 先ほど、課題をお願いしたときに、例えばですけれども、「枝を拾ってきてね」って言ったときに、皆ワーッと駆け出して、早い子は一番に拾って戻ってくるような状況が日本の現場にも、スウェーデンの現場にもあります。そういうときに、人権の尊重と民主主義の基本的価値を身につけるということを考えると、その教示の仕方はふさわしくないということになります。というのは、競争をさせないように、子どもたち同士を比較しないように配慮しています。なので、枝を拾ってきてねっていうときは、今日は何々ちゃんと何々ちゃんがペアで一緒に助け合って拾ってきてねっていうことを伝えてゆきます。

4)人権の尊重と民主主義の基本的価値

 全ての人の平等の価値。人権の尊重と民主主義の基本的価値とは何かというところで、全ての人の平等の価値。みんな人として同じ価値があるんだよっていうことと、差別をすることの禁止っていうことがあります。この差別の禁止に関しては、法律で七つの項目があります。非常にスウェーデンらしいのは年齢ですね。年齢による差別が入っています。性別、性自認、性表現、民族性、宗教その他の信条、障害、性指向、年齢というふうになっています。
 1学期間に1回は必ず1日研修があって、保育者は1日この環境の中で、例えばですけど障害を持った子どもたちのまわりに差別が起こってないかとかをチェックして語り合って、じゃあ環境をどういうふうに変えてったらいいかというような研修を必ず8時間ぐらい、みっちりディスカッションをやります。

 子どもたちって社会の中にある良いと思われる価値感を取り入れていくんですね。なので、「遅い」よりも「早い」が良い、「短い」よりも「長い」が好きとかそういう傾向があるんです。だから、幼児教育では、固定的な価値観を壊していく。他にもさまざまな価値観があるんだよということを伝えていく、多様性の教育でもあるんですね。例えば、枝を拾ってきてもらうときに、みんな象さんになって、ゾウのようにゆったりした気持ちとゆったりとした歩幅で拾ってきてねとか、長いことにばかり注目している場合は、わざと短い枝を保育者が拾って来て、「短いのも良いでしょ」とその利点を話したり。いろんな価値観があるんだということを子どもたちに伝えています。
 形、色ですね。人間もそうですけれども、肌の色も皆違うんだということから伝えていくということをしています。人はみんな違うんだ。競争ではなく、協働すること。時代で価値観というのは変わっていくんだよということを子どもたちに繰り返し伝えています。
 伝える内容として、特に時代で価値観も変わるっていうところなんですけど、例えば、男の子がピンク色の服を着てくると、「それは女の子の色だから」とからかったりするんですよね。そうすると、次の日に「もうピンク色嫌い」なんて言ったりといったことがあります。「ピンクは今は、女の子の色だと思ってるかもしれないけど、昔はね、男性の色だったんだよ、今は色に男性、女性の色はない」と伝えたりもしています。時代で価値観も変わっていくということを伝えています。

5)自分自身と自分の世界を理解する

 先ほど、子どもの権利条約の実践のもう一つの活動、自分自身と自分の世界を理解する、特に感情に焦点を置いた活動というようなことを多くやります。今日どんな気持ちかな? 何を考えてるかな? ということを小さな円になりながら、みんなで話してもらうんですね。ただ「みんなどう思う」って聞いてもなかなか答えられないことがあります。
 森では、子どもたちに、嬉しいと感じる自然物と怖い悲しいと感じる自然物を拾ってきてくださいという指示を出したりしています。

 子どもたちはいろんな意見があって、自然にあるもので嬉しいものって、ブルーベリーの枝だったり、アルファベットの棒でJの字だったり、かっこいい模様と言って拾ってきてくれました。自然の中にある悲しいもの、怖いもの、チクチク尖った枝だとか、ナイフのような尖った枝、チクチクする葉っぱ、枯れ木、倒木、釘の刺さった松の木、ゴミだとかというふうに言いました。じゃあ、「どんなときに嬉しいと感じる」っていうふうに聞いたときに、チョコレートをもらったときとかね。歯が抜けたとき、自然の中で友達と遊べるとき、水の中で泳げたとき、スパゲティを食べられるとき。どんなときに怖い?悲しい?怖いところ、お化け、サメ、森の熊、水の中で浮き輪がないときというふうに答えてくれました。
 こういうふうに自然物を通して、自分のことを理解したり、自分の世界を知るということを繰り返してやっています。これも子どもの権利条約の活動の一つですね。

6)子どもの視点に立って森での遊びを見てみる

 子どもたちって森でただ遊んでるだけでしょうか? もう皆さんおわかりかと思います。そうではないということですよね。学びの視点で伝えていきたいと思います。
 スウェーデンの幼児教育は必ず子どもの興味関心、ニーズが出発点なんです。今日は保育者が枝の活動をやりたいなといってそれをやるわけじゃないんです。子どもたちをよーく見て、どんな会話をしてるかな? 何して遊んでいるかな? といって枝で遊んでるぞとなれば枝を出したりしています。

 森での遊びって、本当に今ここなんですね。今、ここにあるものがとても大切になります。まず一つの事例として、問題解決です。これを算数の中にどういうふうに子どもたちが問題解決をして学びに繋がったかという事例を一つお見せしたいと思います。
 
 私はアンという同僚と一緒に働いてるんですけど、彼女は30年以上、野外保育現場で働いています。彼女は非常に多くの引き出しを持っていて、子どもたちの言葉から学びに結びつけることが非常に上手なんです。嵐の日の後、すごく太い枝があっちこっちに落ちていました。これは松です。水を枝の中に含んでいて非常に重い。子どもたちはこの枝集めを始めたんですね。自分で引っ張ってみて、引っ張っても引っ張っても動かない、そこでその一人の男の子は、私達のところに来てこう言いました。「自分たちで運べないから手伝って」と言ったんですね。そこでアンが返した言葉。「じゃあ、子どもたち何人でこの枝運べるかな」って聞いたんです。ここから野外で算数が展開していきます。3人だと思う? 5人だと思う? 10人だと思う?というふうに聞いていきました。子どもたちは「10人かな」と言いました。保育者は「じゃあ、10人の子どもたちを集めてきてみんなで運ぼうか」と言いました。その後、子どもたちと一緒に枝を引っ張って家を作るという森での遊びが始まったんですね。それは1回だけじゃなくて、何日も何日も続いて行きました。なので、子どもたちはこの森に行きたいと。そこで秤をもっていき算数の授業をしてみようかということになりました。アンはお手製の秤を作っていました。「子どもたちに「自然物で計ってみたいものを拾ってきて」って言ったら集まってきたんですね。ここから、「葉っぱと枝とどっちが多いと思う」という比っこをしました。子どもたちが葉っぱがバケツの方にいっぱいだから、枝より葉っぱの方が重いと思うと予測を立てました。実際に載せてみたら、皆さんわかりますよね、この枝の方がガタンと沈んで、ああ枝は重いんだ、こんなに重いんだというふうに子どもたちが話していました。じゃあ、枝運びをするときに、この枝だったら20人かな。あの枝だったら5人かなというふうに子どもたちは計算するようになってゆきました。森の中の自由な遊びを通して、子どもたちは学んでいるのですね。

 子どもたちの興味関心、あるいはニーズから問題解決への学びになりましたね。例えば、子どもたちは棒が大好きなので、棒を拾ってきては、穴に差し込んでみるということをします。穴とこの棒がうまくすっぽりはまるようなところを探す。そして、落ちている樹皮に差し込めるものを見つける。そうすると、ボートが出来上がる。帆船が出来たり、スウェーデンではよくこれを作っています。創造性とか算数、技術、自然の知識、自然科学を学んでいくと考えています。

 子どもの視点に立って、森での遊びを見てみるんですね。子どもたちってただ遊んでるだけじゃないんです。五感を使っているっていうことはもちろんですけれども、他にも、もう本当に多くのことを子どもたちは学んでいる。『今日、ただ遊んだだけ』という詩があるんです。お母さん、お父さん今日帰ってきて、今日ただ遊んだだけって言わないでという詩なんです。子どもたちは五感を使いながら、多くのことを学んでいっていると考えています。
 スウェーデンの保育者は、子どもの発達と学びのプロセスを子どもたちと一緒に記録にしていくことをどの園も義務としてやっています。子どもたち自身が自分でやったことを振り返ることができます。これを教育的ドキュメンテーションと言っています。子どもたち自身も、何を学んだかを振り返ることができますし、親御さんも知ることができる。保育者も園全体で把握することができるということで非常に教育的な価値があると言われています。また、保育の専門性も高まると言われています。

 今日は森で子どもたちは何を学んでいるのかお伝えさせていただきました。また、理論編では社会の土台にある子どもの権利について、民主主義の基本的価値観について、どういう価値観があるか事例を交えてお話させていただきました。

今日はどうも、ありがとうございました。

質問:

(参加者)大人も子どもも対等にというところが大切ということを聞いたんですが、具体的に保育の中でどういったところを大切にされているのでしょう?

(asana)例えば、子どもたち同士の関係から、よく皆さんは耳にするかと思うんですけれども、何々ちゃんは赤ちゃんだから、何々ちゃんは小さいからダメって言うことを聞くことがあるかもしれません。そういったときには保育者は必ず赤ちゃんっていうどういう子どもたちだろうという話をします。赤ちゃんって自分で歩けない子だよね、自分でお話もまだ出来ない子だよね。この園には赤ちゃんはいませんよと伝えています。
 小さいっていうのも差別的に使われることがあるので、園の中では若い子どもたちとか、年齢が若い子どもたちというふうに表現したり、例えば、保育者側の環境設定でいうと、4~5歳の子どもたちが届くおもちゃがあります。それに対して1~2歳の子どもたちが届かないもの、砂場の道具とかですね。そういった、年齢によるできるできないがあってはいけないのだと言われています。もちろん、発達によって1歳児と2歳児は口の中に入れてしまいますので、そういった小さいものは置きませんが、できるだけ手が届くという機会は同じようにするようにしています。もう一つ、遊び場にしても年長児が毎回同じ場所を占拠して、年少児はなかなかそこの場所に行けなかったり、あるいは順番が回ってこなかったりするんですね。そういう場所を観察して、そうならないように今日は年少児が先に好きな場所を選んでもらおうとかというふうにしています
 大人と子どもでね、年齢による差別、例えば私は大人だから、あなた方の言うことを聞きなさいっていうようなことは一切ないですよね。それは差別に値しますね。あとは、民主主義の基本的価値観で言うと、子どもたちに決める権利がある。第3条、子どもたちの最善の利益。子どもたちに関わることは、子どもたち自身が関わって決めていく権利があるという権利があります。それを具体的にどうするかというと、例えば、園の中にもルールというものがありますね。学校のルールも同じです。どういうふうに遊ぶかといことを設定するのもルールです。そのルールを子どもたちに決めてもらう。保育者側が園の中で走っちゃいけませんよというルールを設定するのではなく、子どもたちにどうやってそこで遊んだらみんなが気持ちよく遊べるかというルールを決めてもらうというようなことをしています。なので、なるべく子どもたちが関わることは自分たちで決められるように、それは本当に対等の関係というふうに言えると思います。

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