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ローカルメディアの価値を高めたい。

体当たりNPO運営記(23) 2017年6月記
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思えば1年前の今時分は、ポートランドに子連れで行き、たくさんの体験をして、取材をしてきました。そして1年後、そこで出会った人たちと一緒に船に乗り、大会に漕ぎい出ているのが不思議です。
今年、ポートランドを一緒に旅した船本由佳 さんと、新しいプロジェクトを立ち上げました。「ローカルメディアミーティング」です。真面目な目的や目標は、記事を読んでください。
http://morinooto.jp/2017/06/09/lmmtg/

NHKのアナウンサーとして、横浜を歩きつくしいろんな人と出会ってきた彼女は、出産で退職後、今度は市民活動の当事者となって様々な活動をしてきたけれど、やっぱり生粋のメディア人、メディアの人同士をつなげて、大きく変化する時代のなかでメディアはどうあるべきか、読者とのコミュニケーションのあり方などを議論する会を企画していました。

わたしはローカルメディアを運営する当事者として、今後のメディアのあり方はどうあるべきか、ずっと模索してきました。市民が発信できるようになった今、玉石混交の情報の海のなかで、真剣な想いをもって社会をよくしていきたいと願う一滴の発信がきちんと生きるようにしていくにはどうしたらいいのだろうか。同時に自らもその海に溺れずきちんとした立ち位置を持ちながら取捨選択して判断し、右も知り左も知り上からも下からも見たうえで「どう在る」べきか、その在り方について学び深めていきたい。そんなことを思っていました。

森ノオトは最初は企業の社会貢献広報事業としてスポンサードで運営してきて、NPO法人化してから4年半は独立したwebメディアとして歩んできました。販売収益もない、スポンサーもほぼない、でも誰からも縛られず広告主の意向に左右されず発信できる「独立メディア」だからこそ、自由かつおおらかに、いろんなことにチャレンジできています。だけど常に資金繰りは火の車、自転車操業で、身を削ってなんとか運営しているのも事実。やっぱり、ライターの交通費や(少額だけど)原稿料、サーバー代とか編集や更新のスタッフ費用はかかるし、組織が大きくなったから事務局運営費もかかるしで、資金は必要です。情報はタダではつくれないことを痛感しているから、もし森ノオトの存在が有益だと感じる人がいればぜひ資金面でサポートいただきたい、つまり寄付ベースのメディア。すでに日本ではgreenz.jpがそのモデルとして進んでいるけれど、もっともっとローカルで生活に密着したメディアを支える機能として、「Community Supported Media」つまりCSAのメディア版みたいな仕組みをつくれないかなと考えています。

昨年度から神奈川県の総合政策審議会の市民委員として参画してきたなかで、市民協働での「寄付文化の醸成」は神奈川県の政策課題の一つに挙がっています。だとしたら、うちがやるべき次の道も見えていて、ふるさと納税もいいけれど地域をよくする活動への資金提供での寄付控除という道筋も明確になってきている。
「メディアは誰のためにあり、誰が支えるか」という議論を、同じメディアの世界にいる人たちと議論していきたいなとも思っています。

由佳さんの「市民活動の記者クラブをつくりたい」という想いと、わたしの「CSMの仕組みをつくりたい」という想いは、アプローチは違うけれども最終的には同じところにたどり着くのではないかと思っています。森ノオトのメンバーでもある彼女に大舞台に立っていただき采配をふるってもらうべく、わたしは事務方に徹しつつも一参加者としてこの議論に加わりながらも自らの存亡をこの事業に賭けてみたいと思うわけです。

もう一つは、「地域活動にふみだした人のための発信力UP講座」です。自分たちの地域活動を知ってほしい、チラシがカッコよくない、ボランティアが足りない……そんな悩みを持つ地域団体の皆さんの発信力をあげて、社会課題を解決することに対する地域の注目をあげたい、という思いで企画しました。
http://morinooto.jp/2017/05/25/m1706/

この企画は、森ノオトがメディアとして歩んできた道のりのなかで、市民が「取材」を通じて地域社会と接点を持ち、地域のよさを発見したり社会参画につながることで、結果的に社会課題の解決につながる活動に発展していくイキイキとした事例をたくさん見てきました。地域活動をしている人たちが発信のスキルを持つことで、地域の価値を魅力的に伝えて、周りの人たちに地域愛を育んでいく大きなきっかけづくりに貢献しているのを感じます。
イベントも然り。しかし、facebookで発信しているだけでは、本当にきて欲しい層に届いているのかわからないですよね。ターゲットを明確にして、その人たちに届くまでのルートを思い描いてみることで、アプローチの仕方が変わってきます。実は地道に足で稼いで汗をかくことに勝る方策はないのですが……。

そんなわけで、全4回の連続講座は、毎回、神奈川県を拠点に活躍する広報・PR会社の方、webライター、ローカルメディアの編集長を講師に招き、実践的な内容でお伝えしていきます。

昨日、ローカルメディア事業スタッフと事務局長とで、多摩大学の松本祐一先生を訪ねてきました。松本先生はNPOなどのソーシャルセクターのマーケティング研究の第一人者で、2015年に森ノオトが受講した「かながわボランタリーエースプログラム」の講師として、森ノオトの中期経営計画の策定を導いてくださった、いわば「恩師」です。

ローカルメディア事業では、森ノオトの「地域密着のエコ」で、ターゲットが広がらないジレンマに対し、神奈川という少し大きなエリアに打って出ることで認知度を高め、エコを幅広く横展開していくことを目指す戦略でもあります。ただ、「ローカルメディア」を重視するあまりに本来のミッションである「エコ」の色が出ないことで、「森ノオトらしさ」が失われているのではないか、という松本先生の指摘にハッとしました。本来、エコを広げていくためにおこなっていくローカルメディア事業だったのに、ただ情報発信の技術を伝えるだけでは、ほかの中間支援組織と比較してもたいして優位性がないのですよね。実際、その通りです。
事業開始まであと1週間というところで大きな示唆をいただいたところで、みんなきちんと腑に落ちて、急ぎ軌道修正をかけ本番を迎えます。

「エコ」という言葉はすでにイメージだ固定化し、エコに響く人はすでに実践しているわけですが、そうでない人にいかにわかりやすく軽やかに伝えていくかで、暮らしの変革をゆるやかに広げていきたいのです。その商品やサービスを買うことで、「今」の便利さや快適性だけでなく、「未来」にどうつながっていくかの視点を伝えたい。そして、「エコ」に集約されない、社会をよくするための様々な地域活動をおこなっている人たちを総称する言葉はないかと考えたところ、浮かんだのが「SDGs」でした。SDGsを切り口にローカルメディア事業を展開していけば、きっとエコに限らずさまざまな地域活動を包含できるだろう、とーー。


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