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【蝦夷幽世問わず語り】竜巻

竜巻の事をアイヌ語で【ウェンレラ】(邪悪な風)と呼ぶ。万物に遍くカムイ(精霊)の存在を認めていたアイヌの人々は、竜巻も単なる自然現象では無く命ある存在だと考えていた。但し、竜巻はカムイはカムイでもどちらかと言うと悪神としての側面が強かったようである。

〈容姿〉
割愛する。

〈性質〉
ヒトにとっては命に関わる悪戯を好む。沙流川の伝承では美女に横恋慕した乱暴者の熊のカムイがその美女を嫁にする企ての一環として、竜巻に命じ善良な夫婦の赤子を攫わせる描写がある。

〈備考〉
アイヌの人々は竜巻を見かけた際、竜巻目掛けて素早く鎌を投げつけると、竜巻は恐れて姿を消すと信じていた(また竜巻目掛けて投げつけた鎌には、必ず血飛沫がついているとも言う)。
竜巻とは少し違うが、別の説話では風のカムイが服を脱ぎ捨て乱痴気騒ぎをした為に起きた大暴風で人々が苦しめられ、それを阻止せんと立ち上がった英雄神サマイェクルカムイによって風のカムイが成敗される内容のものがある。サマイェクルカムイの「お前のような邪悪なカムイは、二度とそのような所業が出来ないように、一度に留めを刺さず散々苦しめた上で殺してやる」と言う怒りの言葉に恐れを為した風のカムイは必死に命乞いをし、結果、二度と悪さをしないように姿を変えられたのがツルウメモドキなのだそうだ。

※真皮の繊維が強い蔓植物で、アイヌの人々はこの繊維で紐を作り靴紐等に用いていた。アイヌ語では【パシクルエプ(ハシブトガラスの食料、の意。晩秋に結実する実をハシブトガラスが好んで食べる為)】と呼ぶ

参考資料
アイヌと神々の物語(萱野茂著、ヤマケイ文庫)
日本の民話 第1巻・北海道(研秀出版株式会社)

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