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感覚のズレ

自分の性自認をアセクシュアルだと認識するようになってから、過去の幾つかの出来事について「嗚呼、あれは自分がアセクシュアルだからそう感じていたのかもなぁ」と思うようになった。最も、それを周囲に明かしても先ず理解して貰えないのだけれど。

例えばワタクシは、女性のボディラインや素足が顕わになる服装(レオタード、水着、ジャンプスーツ…etc)に性的衝動リビドーを抱いた事が無い。
特にレオタードやボディスーツタイプの装束を身に着けた人物(近頃は男性でも女性的なボディラインをしている方が少なくないので、敢えて女性に限定しない)を見た時にワタクシが感じる魅力は【近未来的なイメージ】と【曲線美】だ。劣情を刺激する目的では無く飽くまで見て愛でる性質のものである。これについては良く「ワタクシの目にはグラビアアイドルの写真もミケランジェロの彫像も同じ次元に見える」と評している。伝わるだろうか。

ところで、ワタクシはレオタードやワンピースタイプの水着とは別のベクトル(それこそネガティブな意味)で、性的衝動を刺激する幾つかのファッションやコンテンツに魅力を感じる事が出来ない。それは肌の露出が多いマイクロビキニやスリングショットタイプの水着である。正直「着てる意味あるの?」とさえ思ってしまう。

女性下着についてもそうだ。あからさまに夜の営み向けに作られた、極端に布の面積が少ない(何なら隠すべき場所が隠されてない)デザインのものは嫌いだ。

そして、下着と言えば【パンチラ】と言うものにも、全く魅力を感じない。
若かりし頃は漫画雑誌に掲載されているグラビア(週刊少年マガジンや週刊少年チャンピオン辺りが特に積極的にグラビアを掲載していた記憶がある)で、制服を着崩して下着を露わにしている女性の写真なんぞ見かけた日には酷く微妙な気持ちになったものである。
また中学生時代、真剣になってクラスメイトの女子の下着の話をしている男子の群れを横目で見ながら、
(バカじゃねぇのこいつら)
と密かに思っていたのは今だから出来るカムアウトである。

パンチラと言えば、過去にこんな事もあった。

敢えてタイトルは伏せるが、某美少女戦士の1stアニメが放送されてた頃だったと思う。当時の友人にこのアニメにどハマりしていた奴が居た。
少女趣味と言う訳では無く(寧ろ彼の得意分野はロボットアニメだった)、何が気に入ってそんなにどハマりしているのか不思議でならなかったので、ある日の宴席で理由を聞いてみた。そしたら、たったひと言

「戦闘シーンでパンチラが拝めるから」

と回答があった。

その時はそれで終わったのだが、後になってネットの海の片隅でかの美少女戦士のコスチュームの解説イラストを見かけて、彼女達が身にまとっているコスチュームが所謂セーラー服では無く【レオタードにスカートがついた】タイプの特殊なコスチュームだと判ったのである(最もそれを知ったからと言ってワタクシには寸分も得るものが無いのだが)。

その事を先の友人に話したら、友人は見る見る不機嫌になり「お前なぁ、そんなつまらない事を言って男の浪漫を壊すんじゃ無いよ!」と宣った。

いや待て。待ってくれ。
ワタクシには【パンチラが男の浪漫】と言う、その発想が先ず理解出来ないのだが。そこ、そんなに怒るところか?お前は、一体パンチラの何がありがたくてそんな事を言うんだ?


…と言いかけた台詞をワタクシはぐっと飲み込んだ。
所詮価値観の相違に過ぎない。互いに感覚にズレがあるのだから仕方のない話だ。
もっと言えば【パンチラと言う(ワタクシにとっては)つまらない】理由で友人と喧嘩するのがアホらしかったのである。

その友人とは、この時世故にもう何年も会っていないが、もし今ワタクシがアセクシュアルの自覚を得た事を話したら(彼は恐らくワタクシがアセクシュアル当事者である事を知らない)、ワタクシがパンチラに浪漫を感じない理由を悟ってくれるだろうか。少しばかり興味がある。

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