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ニューロ・セルフインジュリー

こんな言葉が存在するのかどうか知らないが、今回お話しする内容は端的に表現するとそうとしか綴れないので。(何)

ワタクシには悪い癖がある。

自分が不幸になったり、死んだりするヴィジョンが脳裏にありありと浮かび、そのヴィジョンに酔いしれてしまう(?)と言う悪癖である。
脳内(ニューロン)で自傷(セルフインジュリー)するのでニューロ・セルフインジュリー。
実に単純な命名法である。
(蛇足だが、ワタクシは最初このエッセイを書いた時に何をトチ狂ったかタイトルに【ニューロ・セルフネグレクト】と書いた。セルフネグレクトでは【自傷】じゃなく【自己放棄】だ、とセルフツッコミをしておく)

少なくとも今のワタクシには自殺願望や希死願望は無い(と思いたい)。
また、現在の自分が取り分け不幸だとも思っていない。世間一般の基準から判断したなら、ワタクシは寧ろ幸運な部類だろう。
然し、そんな満ち足りた日常のふとした隙間に、突然自分が不幸になったり、死んだりするヴィジョンが鮮やかに脳内で展開されるのである。本当に何の前触れも無しに来る。通勤途中の電車の中で来る。外歩きの最中に来る。食事中に来る。入浴中に来る。仕舞いには寝床の中で来る。

切っ掛けは無いに等しい。敢えてトリガーになる何かがあるとしたらそれは【万物】としか言いようがない。
例えば何処かのビルで豪奢なシャンデリアが天井にあるのを見かけた途端「嗚呼、あれがワタクシの頭上に落ちたらワタクシは挽肉になって死ぬんだろうな」と言うヴィジョンが一瞬で脳内再生される。
別の例を挙げると、例えば外歩きの折、犬を連れて散歩をしている人を見かけて脈絡も無く「嗚呼、あの犬が突然引き綱を振り切って、ワタクシに襲いかかったらワタクシは喉笛を噛みちぎられて死ぬな」と言うヴィジョンが一瞬で脳内再生される。
他にも覚えているだけで【電線工事の様子を目にして、突然切れた電線がぶつかって感電死するヴィジョン】【ビルの解体工事の最中に、瓦礫があらぬ方向に飛び、それが頭に当たって即死するヴィジョン】【路線バスを利用していて、突然バスが爆発して木っ端微塵になるヴィジョン】等、挙げたらキリが無い。

そこまで行かずとも、例えば【自分が突然解雇され露頭に迷うヴィジョン】【難病を患い、社会復帰出来なくなるヴィジョン】位は頻繁に脳内再生される。

繰り返しになるが、ワタクシには希死願望は無い(と思う)し、不幸になんかなりたくも無いし、今の境遇にも全く不満は無い。悲劇の主人公への憧れも存在しない。なのに、脳内でほんの些細な切っ掛けにより、自分が死んだり不幸になるヴィジョンがありありと脳内再生される。
一度、周囲にこの事をカムアウトしたら割と本気で心配されたが、その時を含めワタクシの精神状態は比較的安定していた。

恐らくなのだが、これは幼少時に当時の担任教師を始め、周囲に存在していた【ワタクシを嫌う人物】にアイデンティティを全否定され続けた事の弊害なのでは無いかと想像する(アイデンティティ全否定云々については、詳しくは過日書いたエッセイ【ワタクシは役立たず】を御覧頂きたい)。
それこそ前述の担任教師には「死ね」「お前には基本的人権はない」と何度も言われた。
そんな過去が脳味噌に染みついたが故に、空想の中で自分を死に至らしめ悦に入る悪癖がついてしまったのでは無かろうか。

近々五十路に片足を突っ込む年齢となり、最早この悪癖の矯正は難しいのではないか…と諦めの境地に入っている。
多分これからも、恐らくは本当に寿命が尽きるその日まで、自分が突然酷たらしく死んだり、不幸になるヴィジョンを思い浮かべる日が続くのだろう。
…日常生活の充実とは裏腹に。

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