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ルタバガとジャガイモ

(ヘッダー画像はウィキメディア・コモンズより)

ネットの海、特に何らかのかたちの創作でしばしばディベートの種になる話題に【ジャガイモ問題】とでも呼称すべきものがある。

遍く知られている所処だが、ジャガイモは南米アンデスの高地がふるさとである。スペイン進攻と共に欧州に齎され、紆余曲折を経て食用として定着した。その辺の逸話は今更仔細を此処で述べるまでも無いので割愛するが、この【南米原産】であるところが今回語る話のキモだ。

突然話が変わるが、近頃日本では所謂【中世ヨーロッパ的世界観】(或いはそれを翻案した世界観)のファンタジーを創作するに辺り【ジャガイモ警察】なる御仁が界隈をざわつかせていると言う。
つまり、ジャガイモはスペイン進攻が無ければそもそもヨーロッパには存在しない植物であるので、大航海時代以前のヨーロッパ(或いはそれを翻案した世界観)を舞台とした作品にジャガイモが登場したならば【その作者は勉強不足・取材不足だ】と言う事で誹りの対象にされてしまうらしい(同様の指摘は、同じく南米を起源とするトマトや唐辛子にも言えよう)。

こうした傾向は特に(様々な意味で悪名高い)ネット小説投稿サイト【小説家になろう】に投稿された作品で顕著らしく、口さがない人間はこうした【小説家になろう】に多い勉強不足・取材不足(?)の中世ファンタジーに置ける世界観を【ナーロッパ】(【なろう】+【ヨーロッパ】)と呼んで揶揄する旨も聞いた(この辺については詳しく調べる気も起きず噂ばなし程度にしか耳に入れていない為、間違っていたらお許しあれ)。

話を野菜に戻す。

こう言った、中世ファンタジーにおけるジャガイモの代替品と言うか、ファンタジー世界に置けるジャガイモのニッチを独占出来そうなと言うか、そんな野菜が古来から北欧に存在するのは皆様ご存知だろうか。実はワタクシもつい最近知った。知った時は目から鱗が落ちた。

その野菜の名は【ルタバガ】(Rutabaga)。
イメージはヘッダー画像を参照頂きたい。
アブラナ科に属する植物(因みにジャガイモはナス科)で、カブに似た葉と大きな塊茎(根?)をつける。北欧では長らく【カブ】(Turnip)と言えば本種を指し、日本で言う所処のカブはわざわざ【White Turnip】と呼び分けていたそうだ。
大地から引き抜いて皮を剥くと、質感と色味はまさにジャガイモそっくり(淡いクリーム色から黄色まで)で、茹でてマッシュしたり細かく刻んでシチューの具にしたりすると、見た目はまるきりジャガイモを用いて作った同じ品のそれである。
ただ、食味は残念ながらジャガイモよりやや劣るらしい(これは食べた人の主観にも寄るから何とも断言し難いが…因みに日本でも導入の計画があったが、食味でも育て易さでもジャガイモが余りにも優秀過ぎて、日本ではルタバガは普及しなかったと聞く)。

今後、中世ヨーロッパ(或いはそれを翻案した空想の世界)を題材に作品を記す人は、ジャガイモの代わりにルタバガを作中に登場させてはいかがだろうか。
それとも、既に誰か作中にマッシュルタバガやルタバガサラダ、ルタバガ入りのシチュー、ルタバガコロッケが登場するファンタジーを書いていたりするのだろうか。

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