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バッファロー文で頭の体操(2)

こんにちは、川津です。
この記事では引き続き、「バッファロー文」を使った英文解釈を進めます。
前回の記事はこちら。

前回からお読みの方はご承知のとおり、バッファローが増えるに従って解釈の幅は広がり続けています。果たしてバッファロー×7まで到達できるのか?

結論から言うと、到達はできたのですが、ご紹介するほどの面白さには到らず、バッファロー×6までに留めることとなりました(その理由は記事内で説明させてください)。

そんなわけで、この記事は主に6頭のバッファローに捧げられます。早速英文解釈を再開……する前に……。

レギュレーションの改定

解釈の幅があまりにも広がることに気づいたため、レギュレーションの改定が必要になりました。遅まきながら、いくつかの禁じ手を指定することに。
まず、前回の記事で出てきたこのパターン。

Buffalo buffalo buffalo buffalo buffalo.
・バッファローが怖がらせるバッファローを怖がらせるバッファロー。
(Cats [whom] cats [whom] cats intimidate intimidate)

関係代名詞節を入れ子にするパターンは、入れ子をいくらでも深められてしまううえ、そもそも英文として一般的ではないため、今後は適用しないこととします。何通りになるか知れたものじゃありません。

また、
Buffalo buffalo buffalo buffalo buffalo buffalo....
Buffalo buffalo Buffalo buffalo Buffalo buffalo....

・バッファローを怖がらせろバッファローを怖がらせろバッ(略)
・バッファロー市のバッファローを怖がらせろバッファロー市の(略)

命令形の連呼も、禁じ手といたします。語数と関係なく発生しますし、謎の執念が感じられてちょっと怖い。
さらに、
・バッファローだバッファローだバッファローだバッ(略)
・バッファロー市のバッファローだバッファロー市のバッ(略)
などの名詞の連呼も禁じ手としておきましょう。
「いやだって家の外にバッファローバッファロー、バッファローいるんだってほんとに!」
地下シェルターに潜ってください。生半可なバリケードでは突破されます。

それでは引き続き、解釈を続けていきます。

バッファロー×6

【命令文】
Buffalo Buffalo buffalo Buffalo buffalo buffalo.

・バッファロー市のバッファローを怖がらせるバッファロー市のバッファローを怖がらせろ。
(Intimidate Tokyo cats Tokyo cats intimidate)
バッファロー市のバッファローは、またもや同族以外からも脅かされることになって気の毒ですね……。
関係代名詞の入れ子を考えなければ、パターンはどうやらこれだけですね。

【肯定文】
Buffalo Buffalo buffalo buffalo buffalo buffalo.

・バッファロー市のバッファローが怖がらせるバッファローはバッファローという種を怖がらせる。
(Cats Tokyo cats intimidate intimidate cats)
一見意味不明なようにも見えますが、文脈次第です。つまり、バッファロー市のバッファローにいじめられることで、逆にすごい覇気をまとえるようになるとか、すごい箔が付くとか、そういうことなら意味が通ります。
この世界のバッファローは、きっと率先してバッファロー市のバッファローに喧嘩を売りに行くんじゃないでしょうか。高みに到るための通過儀礼です。果たして彼ら、御眼鏡にかなって相手をしてもらえるのか。これは一体何のファンタジーだ。

Buffalo buffalo buffalo buffalo Buffalo buffalo.
・バッファローが怖がらせるバッファローはバッファロー市のバッファローを怖がらせる。
(Cats cats intimidate intimidate Tokyo cats)
地名の位置を変えたら、また不思議な世界が展開されました。バッファロー全般から特異的にいじめられやすい個体群がいて、それがバッファロー市のバッファローにだけは反撃しているという状況です。
バッファロー市のバッファローから見れば、いじめてくるのはその個体群だけ。ただしバッファロー市のバッファローもバッファローには違いありませんので、彼らをいじめる側でもあるはずです。なぜバッファロー市でだけ、双方向の戦いになるのか。
奇しくも冒頭で再掲したバッファロー×5の入れ子文と似た意味になりましたが、多分偶然でしょう。

Buffalo buffalo buffalo buffalo buffalo buffalo.
・バッファローが怖がらせるバッファロー市のバッファローはバッファローを怖がらせる。
(Tokyo cats cats intimidate intimidate cats)
地名の位置をさらに変えました。この場合、バッファロー市のバッファローが、バッファロー全般から特異的にいじめられているのですが、彼らもまた、バッファロー全般に喧嘩を売って怖がられています。虐げられし者たちの、一歩も引かないこのガッツ。青年誌的な熱血展開が予想されます。

Buffalo buffalo buffalo Buffalo buffalo buffalo.
・バッファローという種は、バッファロー市のバッファローが怖がらせるバッファローを怖がらせる。
(Cats intimidate cats Tokyo cats intimidate)
これも文脈次第。バッファロー市のバッファローに目を付けられたが最後、バッファロー全般に嫌われるようになる、などの事情があればこの文が成立します。
最初は「バッファロー市のバッファロー怖すぎ」と思いましたが、ちょっと待ってください。もしかしたら、バッファロー市のバッファローはとても優しい個体群で、バッファロー界の最後の良心なのかもしれません。だからこそ、彼らに見限られたらバッファロー全体からも見放される。ある意味、怖いバッファローたちではありますが。

Buffalo buffalo Buffalo buffalo buffalo buffalo.
・バッファローという種は、バッファローという種が怖がらせるバッファロー市のバッファローを怖がらせる。
(Cats intimidate Tokyo cats cats intimidate)
これはいけません。循環論法みたいになっています。文法的には問題ないが意味不明な文の再登場。何にも紐付いていない(一般化された)buffaloが複数回出てきてしまい、行動の記述がダブってしまったのが原因です。

【名詞句】
(該当なし)
ここに来て、まさかの該当なし。関係代名詞の入れ子も、形容詞としてのbuffaloも排除した結果、この長さの名詞句を作ることができなくなってしまったようです。

バッファロー×7……?

ここで筆者は気づいてしまいました。
関係代名詞の入れ子も、形容詞としてのbuffaloも排除しているこの条件下では、バッファロー×6とバッファロー×7の差は肯定文における「バッファロー市」の追加場所の差でしかないということに……。
しかも、適度に「バッファローという種」が混ざってくれるバッファロー×6に対して、地域限定の「バッファロー市のバッファロー」が増えるバッファロー×7では、その世界観も主にバッファロー市内に留まってしまうでしょう。

ですから、バッファロー×7については思い切って割愛します。きっとそれが一番楽しく、記事の量としても適正で、なにより私がバッファローをもう見なくて済みます。

まとめ

やはり、集合名詞の範囲の差が大きな違いを生みました。面白いなと思う一方で、今まで実際の翻訳作業時に、集合名詞の範囲をここまで注意深く読んでいたかなぁと冷や汗をかいたりもしています。負うた子ならぬ、バッファローに教えられて浅瀬を渡るといった有様。気をつけたいと思います。

以上、大量のバッファローをお届けしました。


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