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顧客志向の落とし穴・その2

今回は、「そもそも顧客って誰よ?」というお話です。

「顧客」を再定義する

顧客、という言葉を辞書(広辞苑)でひくと、「おとくいの客」と書いてあります。あれ?ということは、一見さんは「顧客」ではないの?
さらに「客」を辞書(広辞苑)でひくと、色々別の意味(例えば「接待の道具を数える語」とか)もあるけれど、最もしっくりくる意味は「商売で料金を支払う側の人」でしょうか。

実は、そんなに簡単なことではないんですよね、顧客って。

「顧客」を包み込む「消費者」という存在

ここは、サービスマネジメントの教科書的存在、ITIL(IT Infrastructure Library)の考え方を基に整理します。ITILに実際に書かれていることは少し違うんですが、下記のように理解するとわかりやすいと思います。

まず、製品やサービスを提供する側をプロバイダといいます。メーカーやソフトウェアベンダー、デザイナーなど、製品やサービスを提供している人はプロバイダです。そして、プロバイダから製品やサービスを購入し、提供を受ける側の人や組織を消費者と呼びます。「ターゲット」と呼んでもよさそうですが、「ターゲット」っていかにもプロバイダ主導の言葉ですからね。ここでは ITIL に書かれている通り「消費者」でいきます。

ここからが大事。そして、消費者をさらに3つに分類します。

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  スポンサ
   明確な目的・目標を持ち、目的達成のために戦略を立て、
   プロバイダに実際にお金を支払う人。

  顧客
   スポンサの目的達成を具体的なニーズに落とし込み、
   プロバイダに何らかの要求をする人。
   たいていの場合、プロバイダとの直接的な窓口の役割を持つ。

  ユーザ
  プロバイダが提供する製品やサービスを実際に使う人。

例えば、ネットショッピングサービスを始めたい店舗を考えます。まずプロバイダは、ネットショップの仕組みやWebアプリを作ったりデザインしたりする人達です。これらプロバイダからネットショップの仕組みを(買取でもサブスクでも)買って利用する人たちが消費者です。

この場合、

  スポンサ:店舗のオーナー
  顧客:具体的にニーズをとりまとめ、ネットショップの仕組みに
     様々な要求を出す従業員の人
  ユーザ:ショッピングサイトを利用して実際に買い物をする人

ということになるでしょう。

もちろん、スポンサ、顧客、ユーザが同一人物の場合もあります。自分の指の爪にネイルアートを施してほしいと思ってネイルのお店を訪れる人は、スポンサ兼顧客兼ユーザです。

「顧客」=お金を払う人 ではない

さて、ここで最も大切なのは、スポンサと顧客を区別する、ということと、「お金を払う人は顧客ではない」という定義です。お金を払うのはスポンサです。ここで重要なのは、、という考え方です。ここが、辞書の説明と大きく異なるところです。目的を持ち、お金を払う人はスポンサであって、顧客ではありません

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例えばネットショップの例の場合、スポンサは「店で利益を出したい」という目的を持ち、ショッピングサイトの構築にお金を出す、お店のオーナーです。

ネイルアートのお金を親御さんや恋人が出してくれるなら、スポンサは親御さんや恋人、顧客兼ユーザはネイルアートを施される人、ということになります。スポンサは、「その人の喜ぶ顔が見たい」みたいな目的を持っています。

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で、顧客はということ、目的をニーズに落とし込んだうえで、実際にプロバイダとやりとりをする人です。

ショッピングサイトの例だと、こんな機能が欲しいとか、こんな風になっていたら使いやすいとか、ショッピングサイトに具体的なニーズを出してくる人ですね。

ネイルアートの例なら、自分の爪にこんなデザインを施してほしい、と具体的に要求を出す人、ネイラーの前に座っている人が顧客だ、ということになります。

本当に満足させるべきはスポンサ

目的をもち、その目的達成のためにプロバイダにお金を払ってくれる人は、スポンサです。プロバイダは、最終的にスポンサの目的達成を支援して、スポンサを満足させなければなりません

スポンサと顧客が同一人物なら、話は簡単です。しかし世の中が複雑になってきた現在、このスポンサと顧客とを区別する、という考え方を学べば、色々しっくりくることがあります。それは、「顧客の要求通りのものを提供したにも関わらず、顧客満足に繋がっていない」という理不尽さです。どうしてこんな理不尽なことが起きるのか、という理由の大部分は、「本当に満足させるべき人を間違っているから」というような気がするのです。

なぜ、そういうことが起きるのか。次回以降で詳しくお話しましょう。

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