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顧客志向の落とし穴・その4

さて、このシリーズもいよいよ最終回です。

前回、「顧客側にある顧客志向の落とし穴」をご紹介しました。今回は、プロバイダ側に潜む落とし穴をご紹介します。

プロバイダを分類する

前にこういう図をご紹介しました。

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「消費者」は、スポンサ、「顧客」、「ユーザ」に分けられる、というお話でした。

しかし、よく考えると、プロバイダ側にもスポンサが存在します。

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もしプロバイダが個人事業主の場合は、スポンサと実担当者はやはり同一人物、ということになりますね。プロバイダが法人組織の場合、この「プロバイダの中にスポンサがいる」という傾向はより顕著になります。

「自分たちは何をなすべきか」を考える

重要なことは、従業員の活動が、スポンサの考える事業目的、自分たちの存在意義、企業理念といったものに即しているかどうか、という点です。そもそもスポンサから教えてもらっているかどうか、ということも大切ですね。

事例をひとつご紹介します。

航空業界にLCC(Low Cost Carrier)という考え方を導入した米サウスウエスト航空は、自らの存在意義を「最も安価な料金で、定時運航率を高いレベルで維持し、お客様を目的地まで運ぶ航空会社」と位置づけました。そして、その存在意義を実行に移すため、次のような特徴を持つ航空会社になりました。

  ・客席はすべてエコノミークラス
  ・座席はすべて定員制自由席
  ・コスト削減のため、紙の航空券を発行しない
  ・機内エンターテインメント装備は導入しない
  ・他航空会社との乗り継ぎは行わず、荷物の転送もしない
  ・機内でドリンクやスナックは提供するが、食事は提供しない
  ・飛行機はボーイング737型機で統一し、コスト削減を図る

一方で、航空会社としてのアイデンティティを守るための努力は怠っていません。

  ・「利用者にとって迷惑なトラブル」を可能な限り減らす
  ・従業員を最も大切にする。例えば、あらゆるコスト削減の努力は
   するが、人件費だけは削減しない
   (結果的に、従業員が顧客を大切にする文化が構築できている)
  ・格安航空会社ではあるが、シートピッチを短くして運べる人数を
   増やすようなことはしない

顧客満足度を高める、ということだけを近視眼的に考えると、飛行中に食事を提供したり、顧客に好きな座席が選べるようにしたりするでしょう。
逆に利益を最優先に考えると、ビジネスクラスやファーストクラスなどの高い料金の席を用意する、シートピッチを短くして一度におおぜいの乗客を運ぶ、雇用者数や人件費を削減する、というアイデアも生まれるでしょう。

しかしサウスウエスト航空は、「最も安価な料金」という自分たちの存在意義を最も大切にし、「たとえ顧客が喜ぶことであっても『最も安価』という存在意義にそぐわないことはしない」と決めています。それが、結果的に顧客が自分たちを選択してくれることに結び付く、と考えているからです。

また、「定時運航率を高いレベルで維持する」ためには、従業員がモチベーション高く、喜んで働いてくれなければなりません。そのため、「たとえコスト削減につながることでも、従業員のモチベーションを下げることはしない」と決めています。「最も安価」を実現できることだとしても、やらないのです。

あなたの会社の、そしてあなたの存在意義は何か

「私たちの会社はなぜ存在しているのか」、「私たちが消費者に提供している『価値』は何か」、「なぜ、消費者は私たちに仕事を依頼するのか」という、自分たちの存在意義を常に意識しましょう。といっても、哲学的なことを考える必要はありません。

ただ、この「私達の会社はなぜ存在しているのか」ということを見失うと、結果的に顧客や競合他社に振り回され、ビジネス上の失敗を招いてしまう可能性があります。それはそれで、不幸です。

個人事業主の方も同じことがいえるでしょう。大げさなことでなくてもいいんです。例えば

私はお客様に最も近いところにいるから、お客様の良い所も悪い所もすべてわかる。それを教えてあげることで、お客様の役に立つことが、私の存在意義です。

とかでもいいんです。

自分たちの存在意義を大切にしましょう。

そして、顧客志向を働かせすぎて、顧客に振り回されないようしましょうね。


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