プロローグ

退屈。

この一言に尽きる。
毎日毎日学校に行って塾に行って適当に勉強して適当に遊んでの繰り返し。人生はこうもつまらないものなのか。

小学生の頃に書いた「10年後の自分」やらとはえらくかけ離れてしまっている。今の自分を見たらどう思うだろうか。
怒るだろうか。悲しむだろうか。
     

今日も終わりのチャイムが鳴る。

1日の終わりを告げてくれるチャイムの音は好きだ。そういえば今日で1学期も終わりだった。

 「はい今日の授業終わり!あ、そういえば志望校届まだのやつ今日もってこいよー 今日持ってこなかったら夏休み持ってきてもらうからなーー」

あぁ、そういや来週志望校届を出さないといけないのか。まぁ、志望校といっても行けそうな高校に行くだけ、それ以外なにもないんだけど。

大して勉強が出来るわけでもない。スポーツも普通。見た目も普通。可もなければ不可もない。そんな普通の人生。

唯一の特技といえば剣玉でもしもしかめよ連続358回出来ること。かと言ってそんな特技はなんの役にも立ちやしない。せいぜい手首が柔らかくなったことくらいしか良いこともない。

勿論、何でも出来るやつに憧れなかった訳ではない。

だけど小学生の時に気付かされた。この世は平等じゃないんだって。身の丈にあった生き方をするのが最善なんだって。

そんなことを考えながら太陽の照りつける中、せっせとランニングをしている野球部の横をイヤホンをしながら通り過ぎて家まで徒歩20分の道を1人で歩いて帰る。何が楽しくてこんな暑い中走ってんだか。

「ただいまー」

「おかえり。貴俊、あんた志望校どうするの。先生から電話かかってきてたよ」

「んー、あー、北高でいいよ。家から近いし」

「そうなの。じゃあお父さんにもそう言っとくね。」

「うん。今日、桜良は?」

「今日はピアノの習いごと。」

「そっか」

「勉強してくる」

「うん、がんばってね」

そんな会話をしながらクーラーの設定温度を20度にし、Tシャツに着替える。

そういえば、俺は母と父と妹の4人家族で父は単身赴任で東京にいるらしく、2ヶ月に1回帰ってくる。妹の桜良とは3つ歳が離れていて来年中学校に入学する。小6のくせにピアノとそろばんと水泳と英会話教室の4つの掛け持ち。桜良は学年トップの成績と県で3位の水泳の実力があって親からの期待も大きい。まぁ俺には関係ないけど。家族の仲もそう悪くはない。

部屋にこもって志望校の紙に高校名と名前を書いて、昨日の塾の宿題をぱぱっと終わらせる。

分からないところは明日後ろのやつのを写せばいい。やることは先にやるこれがモットーだ。

ピコン
その時一通のLINEが届いた。

「3年2組の生徒32人は全員今すぐ教室に集合。繰り返す。3年2組の生徒32人は全員今すぐ教室に集合」

なんだろう。何か渡すものでもあるのか。

時計を見ると15時を回ったところ。志望校届を担任に出すところだったから丁度良かった。今から行っても塾までには全然間に合う。さっと行ってすぐ帰ろう。

しかし、俺はこの時、学校へ戻ったことで後の人生が大きく変わるなんて思いもしなかった。


Tシャツの姿のまま家を出ると、隣家から飛鳥が出てきた

「あ、貴俊じゃん!学校まで一緒に行こーよ!久しぶりに!」

「え、あ、いいよ。行こう。」

久しぶりに話かけられた飛鳥は幼なじみで小さい頃はよく一緒に遊んでいた。
そして今のクラスも一緒だ。見た目の良さと誰にでも優しいからクラスのマドンナ的存在になっている。

あまり言いたくはないが実は初恋の人でもある。

学校に向かっている途中で優とも合流した。

小学校から一緒でクラスで唯一仲の良い男友達といえる存在だ。優は野球部のエースで野球部の強い有名私学に進学することが決まっている。クラスの人気者だけどこんな俺とも仲良くしてくれている。

「なんでいきなり呼び出されたんじゃろ。」

「さぁー、なんか忘れたんじゃね。まぁとっとと行って、とっとと帰ろ」

「ねーー、あーあっつい。アイスくらい買ってよね」

そんな会話をしながら学校までの道を歩いた。

3人で登校することに懐かしさと少しの恥じらいを感じ、そして理由は分からないけど普段より風の音、セミの泣き声、水遊びする子供たちの声がまるでオーケストラの演奏のように感じられた。

教室へ着いて少し待っていると担任がきた。

「先生なんだよー」

「はやく帰らせてよーー」

「すまんな、みんな。急に呼び出して。今日はみんなに伝えたいこと、伝えなければならないことがあって集まってもらった」



続く

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?