Recover6

前へ、前へ、走る。小さな足を前へ、とにかく前に足を進める。

「おい、ガキ待て‼」

今は追い付かれないように、後ろの脅威から逃げることしかレーナには考えることができなかった。
レーナは神様に願いながら走り続けた。パパ助けてと。

「きゃ‼」

前だけを見て走っていたレーナに足元の木の根に気がつくことはできなかった。
神様は容易くレーナを見放す。地面にうずくまるレーナに容赦なく、足音が近づいてきた。

「おい、逃げられると思っていたのか。お前は。なぁ」
「痛い、やめて離して」

賊は、レーナの髪を強く引っ張り上げた。レーナは抵抗しようとするも大男と少女ではその抵抗も意味をなさなかった。

「おい、やっとつかまえたか」

少女の近づく足音がさらに複数近づいてきた。さらに神様はレーナに試練を与えた。しかし、少女はまだ抵抗を続ける。

「離せ、もう少ししたらパパが助けてくれる‼」
「お前の父親か。お前の父親は来ないぞ。今頃、俺らが雇った傭兵部隊にやられているよ。奴らに狙われて生き残ったやつなんていない。」

レーナは恐怖した。父親を失ってしまうかもしれないことに。

「パパ。パパはわたしが、私がああああああぁ‼‼」
「なんだ、お前その腕は…」

少女は腕に地面を纏っていた。腕は少女の体には釣り合わないような大きさに少しずつ、少しずつ…ついには少女の体と大差ないほど大きくなった。
大きな変化に恐怖し、賊は少女の髪を手からはなした。

「そ、それは…ゴーレムの召喚の応用…上級魔術だと…‼それをなぜ、こんな少女が…‼」

周りの賊たちも異常な出来事に恐怖し、身構えた。
だが、その身構えも意味をなさない。
少女の大きな手、大きな手は一人の賊の体を捉えた。瞬間、大きく賊は横に吹き飛んだ。

「お、と、お、さ、ん、お、と、お、さ、ん、お、と、お、さ…」

少女は大好きな父の名を呟きながら、賊を一人ずつ丁寧に、丁寧に、吹飛ばしていった。

「やめてくれ、もう、やめてくれええええ」

最後の賊は、必死に逃げるも恐怖で足がもつれてしまい、転んでしまい。そこから動けずにいた。
少女の腕は地面のような手を今度は、大きな鎌のような形に変化した。

「し、死神…」

その腕は容赦なく賊に振り下ろされる。はずだった。
鎌は斧を持つ一人の男に制された。

「待たせたな。わが娘、レーナ」



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