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【個人考】理系と文系

理系と文系の割合


先日、文部科学省の以下の資料を発見しました。

https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/siryo/__icsFiles/afieldfile/2019/05/23/1416449-2.3-2_2.pdf

これによると、

  • 2013年の時点で、高校3年で理系コースを選択したのは32%、文系コースを選択したのが68%

  • 女子は、80%弱が文系を選択し、理系は20%ちょっと

  • 男子は反対に41%が理系を選択し、残りは文系

だそうです。

実際私が高校3年生であった1991年も9クラス(団塊ジュニア世代だったので、ものすごいクラス数)のうち理系は3クラス、残りは文系なので割合は一緒です。
つまり、20年以上経過しても、またおそらく2023年現在も、以下の仮説が成り立つものと思われます。

  1. 理系:文系は、だいたい1:2

  2. 理系を選択するのは男子が多く、女子は少ない

となると、以下の疑問が当然発生しますね。

Q. 何故理系志望者が相対的に少ないのか?
Q. ”リケジョ”と注目されるほど、理系を志望する女性が男性よりも比較的少ないのは何故か?

Q.何故理系志望者が相対的に少ないのか?

これはあくまで私の意見となりますが、理系、特に自然科学(Science)/工学(Engineering)を選択する学生は”数学”が得意、少なくとも苦にならない状態であることがほとんどです。

そして、この”算数・数学”というのは、他の科目と比較して以下の特徴があります。

"小学校1年からの足し算から高校の微積分まで、全てが連結している大きな構造物となっているため、各単元のブロックを丁寧に積み上げていく作業が必要で、それを曖昧に積んだり、わからないままでスキップすると、以後の単元が”全く”解けなくなる。"

以下の資料がものすごく参考になりますが、いくつかの塊(数と式、図形等)に分かれてはいるものの、基本的には小1から高3までの単元がつながっており、例えば分数が曖昧なまま中学生になると、少なくとも中学の数式関連は残念ながら、ほぼ全滅になることがわかりますし、それ以後の高校数学も同様。

https://www.shinko-keirin.co.jp/keirinkan/chu/math/support/data/content_line.pdf

このような特徴は、あまり他の教科では見られません。

例えば国語だと”古典がわからないと現代文ができない”ということはないですし、漢字などは覚えたものはすぐに使えます。

歴史も”流れ”はあるにしろ、近現代史の項目暗記に、鎌倉時代の出来事は直接は関係しません。

英語は若干積み上げに違いですが、それでも必要な文法の80%程度は中学英語で完了するので、英文構造としての学び直しの量は格段に少ないうえ、英単語・熟語は漢字と同様です。

”算数・数学”だけが、小1、またはその前から始まり、そのまま大学まで繋がる大きな構造物を積み上げる作業を完遂した人が、数学が得意になり、理系にエントリできるという、非常に珍しい学問になります。

(そのため社会人講座とかで”ローマ史講座”とか”平安文学講座”はありますが、”線形代数講座”というのは聞いたことがないです。なぜならば、社会人講座のような「注目テーマを切り出して教える」というものでは、数学の場合、前提条件が違いすぎてお客さんが集まらないんだろうと思われます。)

ただ、高校の時の同級生を観察すると、「学校の定期テストでは高得点を出すのに、駿台模試とかだとボロボロになる」人が一定数いました。
その人に話を聞くと、
「定期テストは範囲が決まっているので、その部分の”公式”の使い方を丸暗記で何とかなるが、模試はどんな問題が出てくるが、何の公式を使うかがわからないので、歯がたたない」
とのこと。つまり、以前言われていた「数学は暗記」というのを忠実にこなして問題を解き、暗記だけでは無理な問題が解けなかったということですね。

また、”算数・数学”のもう一つの特徴としては、以下があります。

  • 小学3年生の”分数”あたりから、日常生活から遊離した”抽象概念のままで理解しないといけない”というものが始まる。

たとえば小3の分数を「ピザの概念」で何とか凌いだ小学生も、”分数の乗除、1/3を2/3で割る”となるともう「ピザ」ではどうにもならず、ここで私の体感的には、小学生の半分程度は脱落してます。

ここを境に、”算数・数学”は、「りんご1個2個」の世界から、「抽象的なものを、そのまま理解する」教科に変化し、以後ほとんど戻らなくなります。
(平方根はまだしも、虚数、複素数なんて、この世に概念としてしか存在しないものです)
(そのため、「数学なんて、日常生活で役に立つの?」という批判をいただくことになりますが、それはまた別の話)
抽象概念の話になったので、ここで次の質問を思い出してみましょう。

”Q.”リケジョ”と注目されるほど、理系を志望する女性が男性よりも比較的少ないのは何故か?”

Q. ”リケジョ”と注目されるほど、理系を志望する女性が男性よりも比較的少ないのは何故か?


これは明確なエビデンスは持っていないですが、中学受験の専門家および私立中学、特に女子中高の先生に聞いた限りでは、

  • 女子は男子よりも精神年齢は高い傾向があるが、抽象的なものの理解は、相対的に遅い傾向がある。

  • なので、国語、社会、生物、地学などの抽象度が低い教科は男子よりも得点が高い傾向があるものの、算数・数学については小学時点で男子に遅れを取る傾向が強く、苦手意識を小学校(中学受験期)の時に持ってしまうことが多い。

とのことです。

なので、その中高一貫女子校では、

  • 中1-2の間は、抽象度の低い単元を優先して教える(生物、地学、図形など)

  • 中3になった時点で、抽象度の高い単元に移行する

というカリキュラムを編成しているそうです。(それを売りにしていました)
実際のところ、そうした場合、その学校の大学進学における理系選択は平均よりも多くなるそうです。

※参考: 都内女子御三家である女子学院が大学進学の分野別傾向を出していますが、理工系が何と25%で、医歯薬・看護と合わせると40%を超えていることがわかります。(ほぼ男子と同じ割合)
https://www.joshigakuin.ed.jp/school/data/


もし国策として理系を増やす、リケジョを増やす施策をするのであれば、

  1. 小学校時点での脱落者を可能な限り減らす

  2. 中学高校で理系に興味を持ってもらった人(小学校の抽象化を生き抜いた人)の興味を持続、刺激する

というのが肝心だと思います。

例えば、1については、

  • 各単元について、明確な理解度テストを実施し、理解不足の場合は補習を行う

  • 男子、女子で脳の発達段階に差があることを認識し、男女別の授業を行う

などの対策をやってみると、明確に効果があるような気がします。実際に学習塾で、そういった方法で苦手を克服した児童をいっぱい見てきました。

2については、幸いなことに、最近はさまざまなワークショップなどが開催されており、容易にアクセスが可能ですね。

では、社会人になって、数学を学び直したいとなったらどうするか?


これもフリーランスになってから相談を受けることが多いですが、結論から言うと、小学校の単元からひととおりやり直すことをオススメします。
https://www.shinko-keirin.co.jp/keirinkan/chu/math/support/data/content_line.pdf

”小学校の単元から”というのがキモで、下手なプライドがあると、
「私はセンター試験の数学をパスしたんだっ!なぜ小学校からやり直さないといけないんだっ!!」
と考えがちになりますが、そのような人は、以下の問題をパーフェクトに解けるのか試してみてください。

https://happylilac.net/bunookisa2.pdf

結構加分数とか帯分数とか曖昧じゃないですか?

で、最近は小学6年間の算数をまとめてくれている問題集も増えました。

※中学版もあります。

これらが苦もなく解ける状態になったら、ご安心ください、あなたは、ほぼほぼ理系です。

なぜなら高校の数学からは、自分の今後注力したい分野(統計、機械学習など)ごとに必要な単元を選ぶことが可能だからです。

(もし、中学までの学び直しで、数学が大好きになったら、それはめでたい!高校数学を極めてください)


数学(Mathematics)の語源は、ギリシャ語の”マテーマタ”という言葉から来ているそうで、その意味は「学ぶべきもの」だそうです。

みんながみんな数学者になる必要はありませんが、数学は学べば学ぶほど、実生活、ビジネス面、現世利益に寄与するという古代ギリシャ人の意見に100%賛成します。


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