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岡山大学の「次世代医療機器開発人材育成プログラム」行ってきた(2日目・保険適用)

岡山大学が運営している「次世代医療機器開発人材育成プログラム」に参加しています。1日目に続いて2日目の内容を忘れないうちにnoteにまとめておきます。

※プログラムの概要については1日目のレポートに書いてあるので、そちらご参照ください。

2日目のテーマ「医療機器の保険適用」

1日目のテーマは「医療機器について知る」みたいな感じだったのですが、2日目は「医療機器の保険適用」がテーマでした。具体的には下記2つ。

・医療機器の保険適用までの道のり(厚労省の目線を知る)
・保険適用の戦略を練る(医療機器メーカー側の目線で考える)

上記2つについて座学をしつつ、受講者が3チームに分かれてケーススタディを行うといった内容でした。

1コマ目(保険適用への道のり)の内容は下記ツイートにぶらさげていろいろ書いてるので興味ある方はそちらご覧ください。2コマ目はオフレコ話が多く資料配布も無かったので、内容共有は控えさせていただきます。

受講前は厚労省の審査する人が来るとぼんやり思ってたのですが、厚労省の中でも

・保険局医療課→審査する人
・医政局経済課→審査に向けて企業側の相談に乗ってくれる人

と役割が分かれており、今回は医政局経済課の方が講師をしてました。

特に参考になった部分をいくつか挙げると

・保険適用時の審査時に何が重要視されるのか

薬事では「安定的な治療・診断機能があること&安全に利用できること」が見られるのに対して、

保険適用では「その医療機器が、医療行為全体の中でどんな役割を果たし、中長期的な患者の生活向上や医療費の削減につながるのか」が見られるという感じがしました。

・医政局経済課への相談について

・設計の段階→保険適用の見込みはある?
・臨床試験の段階→取るデータの方向性これで合ってる?
・薬事承認の前→保険適用と薬事承認で方向性ずれてない?
・保険適用の前→保険適用希望書の記載内容はどう?

など、様々なフェーズで相談に来てくれてOKとのことでした。ちなみに、相談件数は過去5年で3倍くらいに伸びてるようです。

こんな感じで前半の座学を終えました。盛りだくさんでしたが、単純な制度説明で終わらずに背景となる思想なども垣間見えたので理解しやすかったように思います(この辺は法律仕事やってる身としてはありがたい)。

保険適用戦略を考えるワークショップ

研修の後半は、ある具体的な医療機器を事例として

1.どの項目で補正加算が狙えるかの検討
2.どんな保険適用戦略を目指すかの議論

をしました。

1の「補正加算可否の検討」については、下記のような保険点数加算の要件を見ながら、

・自社プロダクトはこの要件を満たすと言えるか?
・いま取っているデータでこの要件を満たすと言えるか?

について議論しました。

画像1

https://dbcentre2.jmacct.med.or.jp/kyoten/files/kyogikai/h29_2_kyogikai_05.pdf

審査機関が示した要件について、「絶対的な正解が存在しない状況で、それを満たしていると主張する材料を整理していく」プロセスは、特許の審査にも通ずるものがあるなぁと思いながら議論をしていました。

2の「保険適用戦略」については「補正加算は狙わず既存機能区分で早期市場投入を狙うか、市場投入が遅れても補正加算・新機能区分での保険適用を狙うか」の議論。ここがすごく戦略的な感じを受けました。

現状の実績として、補正加算が認められたとしてその平均値は3%程度。「加算分で市場投入が遅れる分をカバーするにはなかなか微妙かも」という議論をした後に、「それでも補正加算を狙う意味」についていろいろ議論がありました。

ここでポイントなのが、医療機器は医薬品と異なり品目が多岐にわたるため、同一・類似の機能を持った製品を括った「機能区分」ごとに保険償還価格が設定されるということ。そして、「その区分の償還価格は、区分内の製品の販売価格平均に近づくように動いていく」ことの2点。

要するに、区分内の競合製品の価格が下がる(or 安い製品が参入してくる)と、償還価格が否応なしに下がっていくということです。

医療機器の業界では下記の形でお金が流れます(と今回の研修で理解した)。

・病院はメーカーの販売価格(A)で医療機器を購入する
・病院は医療機器を使った分だけ国から償還価格(B)を受け取ることができる
・医療機器の販売価格と償還価格の差額は病院の利益(C=B-A
)になる
・2年に1回の診療報酬改定で、償還価格は各社の販売価格の平均値に向かって低下していく(B≒各社のAの平均に近づいていく)

ここで、保険適用戦略を駆使することで自社製品を新区分に配置換え、償還価格を相対的に高めることができたなら(B'>B)

・病院の利益(C’)=償還価格(B’)ー販売価格(A)→C’>C
販売価格を据え置きつつ、病院の利益を高めることができる(自社の利益を損なわずに、病院との関係値を高められる)

・病院の利益(C)=償還価格(B’)ー販売価格(A’)→A’>A
病院の利益を削ることなく、販売価格を高めることができる(病院を敵に回さずに、自社の利益を高められる)

といった選択肢が取れるようになると。すごく単純化してはいるけど、こういうことが考えられるよと。

こんな話をしつつ、講義の主題と違うので発言はしませんでしたが、知財戦略との組み合わせについていろいろ考えを巡らせていました。

自分が一番ピンとくる画像診断系の分野で、保険適用と特許出願の関連性を調べてみたいなぁと思います。

まとめ

初日に続いて非常に実践的な内容でした。とは言え、少し気になる点もあります(講師や講義への不満というよりは、このnote書くまで思いつかなかった自分の不手際)。

今回、講師が厚労省の方だったので仕方ない気もしますが保険適用の戦略として「そもそも保険適用をする/しない」という判断がある気がしますが、そこに関する話は出ませんでした。要するに「保険適用することで何かデメリットや制限が発生するのか」について議論が出なかったなと。

薬事(医療機器申請)では、例えば部品変更やソフトウェアアップデートの自由度が奪われるなどいくつかデメリットが浮かぶのですが、同様のことが保険適用でも発生するのか。その辺を聞き忘れたなと反省しています。

と言いつつ、明日はPMDAの方を招いた医療機器申請がテーマ。こちらもレポートあげていきたいと思いますので、興味ある方は楽しみにお待ちいただければと思います。

twitter:@tech_nomad_

※プログラム全体の説明&1日目の内容はこちら


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