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コロナの時代の僕ら

書名:コロナの時代の僕ら
著者:パオロ・ジョルダーノ
出版社:早川書房
発行日:2020年4月24日
読了日:2020年8月2日
ページ数:128ページ
8月 :2冊目
年累計:23冊目

イタリアを代表する作家で
イタリアの最高峰のストレーガ賞などを受賞している方です。
理系で先行は素粒子物理学なので
”理系”と”文系”の両方の切り口で綴られたエッセイ。

2月〜3月にかけて日々増加していく
イタリア国内での感染者の状況や
国内の人々行動を綴っています。

この本が教えてくれる事は
このコロナ禍が過ぎ去ったらこれまで経験した事を
忘れてはならないという事である。

とても重要だと思う。
感染症はCOVID-19に限らず、また新種のウイルスが
出てくるかもしれないじゃないですか。

すごく大切な事を教わります。

そして、何よりもウイルスは人間の一番弱さをついてくる。
パニックになったり、狼狽したり、欲望に負けたり。
それに打ち勝つには一人一人が原理原則に立ち返る事。

私はそんな事を強く感じました。

書かれたのは3月ですが、現時点(8/2)の感染者は
これだけ増えております。

感染者数:17,859,763人
死者  :685,179人

「感染症とは僕らのさまざまな関係を侵す病だ」

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これは2月〜3月の時点では理解できなかったけど
今なら痛いほど理解ができる。

この感染症のせいで、私生活、仕事、家庭、職場
さまざまな人々の関係が変わってきた。
特に人の負の部分が露わになってきた気がします。

感染が広がる論理をビリヤードに例える
「アールノート」は作家ならではだなと思い
不謹慎ながら美しいとも感じました。

どんな病気にも「基本再生産数」と呼ばれ
記号名でアールノート(Ro)というものがある。

Ro=2は平均ふたりに感染させる。
つまり、Ro<1であれば、感染は次第に終息に向かいますが
COVID-19のRoは2.0〜2.5だそうです(3月時点)

麻疹はRo=15程度
スペイン風邪Ro=2.1

ただ、このRoは人々次第で数値は減らせるとの事で
ひとから伝染しにくいように自分たちの行動を
改めれば良いのだ。

日本で言えば、「3蜜」の回避。
散々言われている事である。

基本に立ち返る事の重要性を改めて感じるよ。

その他、エッセイの中では
「隔離生活のジレンマ」
といった、囚人のジレンマを思わせるような考え方。

ウイルスによる死亡率が低いし
かかった時は運命だ、と考える事はやめたほうが良いとも語っている。

そして大切な事を投げかけています。

「感染症の流行に際しては、僕らのすること・しないことが、
 もはや自分だけの話ではなくなるのだ。このことは
 ずっと覚えていたいものだ。今回の騒ぎが終わったあとも。」

あなたの1人の行動が大切な人を間接的に
奪ってしまうかもしれない。
これは実感しにくいけど、確実に起きている事ではある。

パン神

市民と行政と専門家のあいだの愛情のもつれ。

行政は専門家を信頼するが
市民は専門家を信頼しない。
専門家は市民を信用してないから、単純な説明しかしない。
市民はそれに不信感を持って、専門家や行政にも不信を抱く。

なんか今の日本の現状を述べられている様で
恥ずかしくなったくらいである。

これがパニックを誘引する。

国民は政府を信じてないし
専門家や政府は国民が自粛しないから信頼しない
このループですよね。

そもそもパニック(panic)とは
ギリシア神話のパン神が由来みたいです。
自分のものすごい叫び声で自分自身が驚いて
逃げ出すほどだから、パニックなんだって!
なんかちょっと勉強にもなった。

そして、最後の著者あとがきが印象に残っています。

コロナウイルスが過ぎた後も
僕が忘れたくないこと。

コロナウイルスの感染が拡大してから
今まであった日常のありがたさや
常識というものが大きく変わった気がします。

医療体制不足、人々の行動、考え方
グローバルにつながった世界
パニックになった時のに人々の本性が出る事
…etc。

失ったものも大きいけれども
それを無駄にしてはいけない。

こうした事ややっぱり忘れてはならないですね。


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