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十字架のカルテ

書名:十字架のカルテ
著者:知念実希人
出版社:小学館
発行日:2020年3月13日
読了日:2020年6月8日
ページ数:302ページ
6月 :2冊目
年累計:17冊目

知念さんの作品!久しぶり!
医療×ミステリーといえばやっぱり知念さんかなと思う。
今回の

「十字架のカルテ」

すごく考えさせられるお話でした。

短編5話なんですけど、特に最後の第5話が胸にグサッときました。

第5話「闇の貌」 同僚を刺殺した桜庭瑠香子。過去にも殺人事件を起こしていた瑠香子だが、解離性同一性障害、すなわち多重人格と診断され不起訴となっていた。

精神鑑定医がメインのお話で
罪を犯した犯罪者を鑑定して
犯罪当時に心神喪失していたか❓心神耗弱だったか❓

そうした事を面談を通して探っていくお話。

普段絶対触れない世界なので物語としても
非常に面白かったです。

印象に残っている一節があります

「現代の日本において、殺人を犯すという行為、それ自体が『異常』なんだ」
「たしかに、殺人を犯す者が『正常』なわけがない。ただ、その「『異常』が疾患によるものか、それともその人物の心から生み出されたものなのかを判断するのが鑑定医の仕事だ」
「異常かどうかではなく、事件を起こしたときに精神疾患、つまりは心の病気を発症していたか、正しい判断ができる状態だったかどうかが重要なんです」

良く、ニュースなどで報道される
「心神喪失で責任無能力で起訴されない場合がある。」

それはこういう事なんだろうなと思った。

殺人自体は異常。でもその異常な行動を駆り立てたのが心の病気かどうか
そういうところに焦点を置くのが鑑定医の仕事。
なるほどと思った。

個人的にはそもそも殺人をする人は異常な心理状態なのだから
その異常の度合いによって罪に問われないという事があっても良いのか?
って思っていたのですが、医療の観点、司法の観点から見ると
また違うのですね。

言い換えると、殺人を犯しても心の病気であれば
それは”病気””疾患”なのだから本人には責任能力はない
というのが今の司法なんですよね。

被害者側としてはすごく納得がいかない部分もあるけど
それが法治国家で決められた事だから仕方がない。

事件当時、精神疾患を発症していたかを面談を通して
鑑定していかなければならない鑑定医は
すごく責任の大きな仕事だと思った。

そこに私情は挟めないし、有罪・無罪を決めるのは裁判官だから
あくまで精神疾患があったかどうかにフォーカスして
鑑定を下す。

なかなかできる事じゃないと思う。

そして、刑法39条についても考えさせられるストーリーばかり。

1、心神喪失者の行為は罰しない。
2、心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する

つまりこういう状態であれば今の司法は罰しない。
罪に問わないという事。

色々考えさせられました。

こうした少し重い話が続くのですが
それを読みやすくしてくれるのが知念さんの力量かなと思う。

今回のキャラクターは

鑑定の経験が豊富・ベテランの「影山司」
一方で配属されたばかりの「弓削凛」
この2人の目線の違いで進む各ストーリーや
弓削凛でしか解決できなかったであろう事件もあって
すごくお話としても読み応えがありました!!!

やっぱり読書良い!(2月以来の2本目!)

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