Xテック「行政×IT➁」


前回の記事に引き続き「行政×IT」、”ガブテック”について考察していきたい。

➁では、ガブテックへの理解をさらに深める為のキーワードについて。具体的には、「デジタル手続法」「都市OS」「責任ある」「官民連携」についてや、ガブテック市場を成長させるうえでの課題に書いていこうと思う。

ガブテック市場注目のキーワード

①デジタル手続法

行政手続きの利便性向上や行政運営の簡素化効率化を図る法律。2019年に制定され順次実施されている。

デジタル手続法は3つの原則を持つ。

「デジタルファースト」
個々の手続きサービスをデジタルで完結することを前提に構築すること。
役所に行く手間を省き、原則オンラインで完結するようにする。

「ワンスオンリー」
他の期間であっても、過去に一度でも政府に提出した情報の再提出を不要にすること。

「コネクテッド・ワンストップ」
行政だけでなく、民間サービスも含めて、複数の手続きがワンストップで実現すること。

日本は2018年の電子政府ランキング10位と一定の評価を得ているが、私個人的には、GDP世界3位の日本政府が、これからの政治・経済・社会を支えるITの活用において10位に甘んじているのは、一国民としてはなんとなく悔しい思いがある。
勿論、私はただの文系大学生であり、日本を支える社会人の方々には、本当に感謝している。


➁都市OS

行政のデジタル化を支援する基盤となるのが都市OS。
スマホでは、IOSアンドロイドなどのOS上で個別のアプリケーションソフトウェアが動いている。
※アプリケーションはOSごとに対応していて、対応していないOSではアプリケーションは使用することが出来ない。故に、スマホでは、IOSやアンドロイド上でのアプリケーション開発が主流である。

都市でも同様に、行政のアプリケーション、サービスを提供する上で都市のOSが必要になってくる。

代表例としては、「データ管理基盤FIWARE」が挙げられる。
欧州の官民連携プロジェクトにおいて開発実証されたスマートシティの基盤を担うソフトウェアであり、欧州だけでなく国内でも一部地域で実証・活用が進んでいる。

日本政府は2030年を見据えて、未来都市を実現する「スーパーシティ」構想を打ち出しており、その為の都市インフラとして都市OSを検討している。2019年には関連法案が廃案となったが、今後議論の再開が見込まれている。

➂Responsible AI, XAI

行政機関におけるAI活用は、比較的手軽で中小企業も手が出せ、事務手続きを自動化するRPAの導入から始まっているところであり、本格的なAI導入はこれから。

しかし、行政機関のAI導入においては、アリゴリズムのブラックボックス化が課題となってくるだろう

例えば、社会保障や保育サービスに申し込んだ個人の情報が、行政機関の職員にも説明できない形でアリゴリズムによって処理され、場合によっては行政サービス自体が制約されるかもしれない。こうなると、透明性・公平性が求められる行政に、AIが受け入れられにくくなる。特に、ブラックボックス化されていることによって、個人が何を改善すればよいかわからず、将来不利益を被る可能性が出てくることも問題である。

これを解消するのが「responsible AI=責任あるAI」「XAI=説明できるAI」である。
これらの技術分野は、アリゴリズム自体の構造が説明できることや、アリゴリズムが差別を助長することの内容に検証がなされていることを実現するもので、データ活用における公平性担保のカギとなる。

しかし、他にも課題は存在し、そもそも技術を導入するにあたって、現行業務がどのようなルール基準で行われているか、暗黙知も含めて可視化する必要がある。この可視化作業の手間がこれからの技術導入のハードルになる。

④官民連携

官民連携とは、行政が担うサービスを行政と民間が連携し、民間の持つ人材・資金・技術・ノウハウ等を有効活用することで、行政サービスの高度化やサービス水準の高度化を図るもの。

上下水道、湾港、空港、公共施設等の都市インフラで、主としてコスト削減を目的に活用が進んできたが、スマートシティや行政サービスのデジタル化の文脈でも官民連携の動きが見られる。

(例)カナダのトロント
トロント南東部のウォーターフロント地区で計画が進む再開発では、米アルファベット社配下のサイドウォークラボイノベーションパートナーとして、事業の構想推進を担っている。

ガブテック市場成長に向けた今後の課題

①スタートアップ育成の為に投資&ガブテック市場を知ってもらうこと

ガブテックはこれから成長が期待される市場。市場が成長し、一個人の生活に浸透させるには、投資や育成を通じてガブテック関連のスタートアップを成長させることや、スタートアップにガブテック市場を知ってもらうことが必要。加えて、個人のガブテックを活用する意識醸成も求められるだろう。

まずは、行政にどのような業務が存在し、行政機関やサービス利用者である個人が、どのような悩みを抱えているのか発信していく必要があるだろう。

➁行政自身のマインド・スキルアップデート

いくら新しいテクノロジーを導入したとしても、行政職員が使いこなせなかったら意味がないので、行政機関の職員のオープンマインド化・スキルのアップデートも欠かせない。

➂ユーザーのリテラシー向上

行政側だけでなく、ユーザーのITリテラシー向上も欠かせない。
特に高齢者のITリテラシー向上は喫緊の課題となっている。
デジタルガバメントで選考するエストニアの例は参考になるだろう。
エストニアは早い時期からテクノロジー教育に取り組んだり、高齢者のデジタルサービスの活用のサポートに人員配置を行うなどをしていた。

以上。



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