熊・蛇なし 安心の礼文島トレッキング
利尻島に2泊した後、西岸の沓形港からフェリーに乗り、礼文島にやって来ました。礼文を訪れるのは13年ぶり。前回は当時勤めていた職場の同僚と自転車を借り、南部の香深港から最北端のスコトン岬までを往復しました。距離にして50キロ余りでしたが、島唯一のレンタル自転車屋には、お世辞にも走りやすいとは言えないママチャリしかなく、けっこうハードでした。
今回の礼文訪問はトレッキングが目的。北海道はここ数年、野生の熊が頻繁に市街地にまで出没していて、山を歩くのは相応のリスクが伴います。その点、礼文・利尻島には熊もいなければ蛇もいません。
利尻が「北のサイクリング聖地」なら、7つのトレッキングコースがある礼文は「北の山歩きの聖地」です。今回は2泊あれば踏破できる3つのコースを紹介します。
旅の拠点にしたのは、以前から泊まりたかった「FIELD INN 星観荘」。最果てのスコトン岬にあり、ドミトリーは2食付き7500円、個室でも8500円と格安。全国からリピーターが訪れる人気の宿です。今年から定員を7人に減らしたため、さらに予約しづらくなりましたが、8月上旬に運良くキャンセルが出たため、2泊抑えることができました。
私は当初、最も長い8時間コースに挑戦するつもりでした。でも、学生時代から歩いてみたかった「愛とロマンの8時間コース」は1997年に起きた死亡事故で海岸が一部通行禁止となり、閉鎖されてしまったとのこと。現在の8時間コースは視界の利かない長い林道を通るため、魅力は薄れてしまったようです。
星観荘では毎日夕飯後にミーティングを行い、翌日の予定をすり合わせます。経験者の話も聞かせてもらった上で、見どころの多い散策路を組み合わせた方がベターと判断し、手始めに久種(くしゅ)湖畔・岬めぐりの両コースを歩いてみることにしました。
翌日の朝食後、稚内からの第1便の船に乗ったお客さんを迎えに行く宿のオーナー・彦さんの車に乗せてもらい、久種湖で降ろしてもらいます。周回道路は工事中だったため、ミズバショウ群生地に寄ってから湖をぐるりと回ってひき返し、湖畔のキャンプ場を見下ろす展望台でひと休みしました。うーん絶景。
久種湖から1キロほど歩いた浜中地区から岬めぐりコースが始まります。
レブンアツモリソウ群生地(夏は木道閉鎖)を横目に、ゆるく長い上り坂をひたすら歩き、一番の景勝地・澄海(すかい)岬へ。湾に囲まれた内海は目を見張るエメラルドブルーに輝いています。
しばし絶景に見とれた後、山歩きを再開。鉄府(てっぷ)という集落から海岸線沿いをひたすら歩き、ゴロタ岬を目指します。海岸線は5キロ以上はあったでしょうか。ここが最も長く感じました。
ゴロタ岬まで来ると、「澄海」「スコトン」の両岬が見渡せます。スコトン岬の先には、無人のトド島も。よし、ゴールは見えた!
その後、道は分岐しますが、スズキ・エスクードのテレビCMにも使われたという眺めの良い車道を通ってゴールを目指します。星観荘を通り過ぎて10分余り。ついに最北限の地・スコトン岬にたどり着きました。突端には「アザラシの見える宿」がうたい文句の「民宿スコトン岬」もあります。
登山向けアプリ「YAMAP」で計測したルートがこちら。
ゴールの星観荘まで9時間1分かけて18・8キロと8時間コース並みの距離を歩きました。あー疲れた。
最終日は午後2時過ぎのフェリー出港まで桃岩展望台コースを歩いてみることにしました。
朝食を食べてチェックアウトした後、オーナーの車で香深港方面へ。港からさらに2キロほど南へ走り、「北のカナリアパーク」という観光名所で降ろしてもらいます。彦さん、お世話になりました!
ここは2012年に公開された吉永小百合さん主演の映画「北のカナリアたち」の記念公園。実際に撮影で使用した校舎の中に、当時の写真や衣装などを展示してあり、自由に見学できます。
休憩所も兼ねているパーク内でトイレと水補給を済ませ、いざ出発。知床という集落から登山道に入り、まずは元地灯台を目指します。
灯台を越え、つばめ山に向かう谷間には8月末にもかかわらず、色とりどりの花が咲いていました。目を引いたのは利尻・礼文に分布するリシリブシ。トリカブトの仲間で毒があるそうです。
キンバイの谷は既に草原になっていました。
さらに歩を進め桃岩展望台へ。ここからの眺望は素晴らしく、眼下には学生時代にお世話になったユースホステル「桃岩荘」の赤い屋根が見えます。
食事を出さなくなったそうなので今回は見合わせましたが、若者には是非とも一度、泊まってほしい宿。ヘルパーさんがギターをかき鳴らして客と一緒に歌う夜の宴会、港での心温まるフェリー見送りなどは、30年近く経った今も脳裏に焼き付いています。
さらに歩くと桃岩が近づきます。見るからに桃です。よくぞ名付けた!
桃岩を過ぎると後は下り道。30分足らずで香深港に到着しました。
下山後は漁協が運営する「海鮮所かふか」で具沢山のシーフードカレーを味わいました。海老2匹に大ぶりのホタテ2個、ムール貝とイカもたっぷり入り、サラダ付きで1210円。海鮮丼よりずっと安くて大変美味でした。
食欲を満たした後は、島唯一の温泉「うすゆきの湯」へ。サウナに露天風呂もある立派な施設。レストランはありませんが、休憩所に飲食物を持ち込んでもOKだそう。汗を流し、着替えも済ませました。
この日の歩行距離は2時間半で6・7キロ。最終日は、昼食と温泉で締める半日トレッキングがおすすめです。
さっぱりとした状態で乗り込んだ稚内行きフェリー。遠ざかる島を眺めながら「有難う!礼文」と心の中で叫びました。
今度は花の最盛期の5月下旬から6月上旬にかけて訪れてみたいです。