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THE MODELが生む組織の課題。組織間の「溝」を埋めるには。

現場向け動画教育システム「tebiki」という BtoB 向けの SaaS (Software as a Service)のセールスなど担当してます松崎です。
前職ではネットワークエンジニアと法人営業を、現職ではマーケティング、セールス、カスタマーサクセス、テスターなどなど色々とやっております。
今回はそんな色々な経験をを踏まえて、「なぜ会社の組織は縦割りになるのか?」を少しだけ考えてみました。自分自身が色々と感じた事を踏まえて、徒然なるままに書いていきたいと思います。

会社はざっくり、マーケティング → セールス → カスタマーサクセス/サポート → 開発(プロダクトマネージメント/デザイン/エンジニア)、 という流れで動いていると思います。もちろん、コーポレート系のチームもあると思いますが、今回は、SaaS業界では定番のThe Modelを意識して、組織間で生まれる「溝」について、よくある課題、原因、そして対策を考えてみたいと思います。

よくある課題 - 静寂の悲鳴編 -

・集客したいけど、見込み客の獲得方法がわからない。リード数が少なくて営業に案件を渡せない。
・頑張って営業するものの、全然契約がとれない。契約が取れたとしても受注額が小さい。
・既存顧客のフォローアップをするけど、なかなかサービスを使ってくれない、解約されちゃう。
・せっかく作った機能をなかなか使ってもらえない。意味のない機能開発・改善をしてしまった。

雑に言うと、仕事がなく悲しい状態ですね。まだ規模の小さいスタートアップ企業などで、ある状態ではないでしょうか。

よくある課題 - オーバーフロー編 -

・リードは多く獲得できるものの、なんだか契約に繋がらない案件ばかり。
・営業人員が不足して、新規リードの対応に手が回らない。
・契約増え過ぎて顧客のフォローアップが疎かになっている。そのため解約が多くなってきた。
・ビジネスサイドからリクエストが無駄に多くて、開発の優先度がめちゃくちゃ。私は何を開発したらいいの?ユーザーが満足するプロダクトが作れない。

雑にまとめると、仕事が多過ぎて管理もままならず、さばききれてないオーバーフロー状態ですね。。。

認識のズレから生じる組織間の溝

よくある課題を踏まえまして、じゃあ、どんな組織間の「溝」が発生するのか考えてみました。
「マーケティング vs セールス」「セールス vs カスタマーサクセス」「セールス・カスタマーサクセス vs 開発」という3つの視点から考えていきたいと思います。

「マーケティング vs セールス」編

マーケティングのミッションは、なるべく少ない予算で、契約確率の高い見込み客、リードを獲得することだと思います。広告を打ったり、SEO頑張ったり、展示会に出展したり、オンラインセミナーしたり、色んな手法で集客すると思います。
一方、セールスのミッションは、受注額、契約数、売上などだと思います。インサイドセールスしたり、フィールドセールスが客先に訪問したり、とにかくお客様と商談をしながら頑張ると思います。

健康的なマーケティングの気持ちとしては、こんな事を考えるんじゃないでしょうか。

「よしー!集客するぞー!リード獲得単価とか考えつつ、予算は確保して、お金使うぞー。リード集めるぞー。とにかく、集客するぞー。もちろん潜在層(≒MQL)よりは、顕在層(≒SQL)のが良いな。獲得したら、営業にジャンジャン渡すぞー。あっ。私たちのKPIは決まった予算の中で、どれだけ"顕在層"を増やせるかだ。顕在層の数が多ければ多いほど評価も上がる。評価もあげたいし、ちょっと潜在層ぽいリードでも顕在層として、案件化して営業にわたしちゃお。」

そこで契約確率の低いリードをマーケから渡されると、健康的なセールスの気持ちは、こんな感じです。

「マーケティングチームがリード取ってくるけど、全然契約につながらない!営業するのに時間ばかり取られてるのに、売上目標が達成できない。受注数も上がらない。実際にお客と話すのは、セールスなのに。マーケティングはいいよな。お客と話すわけじゃないから。くそー!現場を知れ、お客様の事を知れー。」
なんてことないでしょうか。これは一例ですが、こういった事の積み重ねで、マーケティングとセールスの間に亀裂が生まれ始めると考えてます。

逆もあると思います。マーケティングが質の良いリードを獲得してるのに、営業力が弱く成約に結びつかないと、「セールスなにしてんの?ちゃんと営業してるの?お客様と話してる?」なんて声が聞こえてきそうです。

いずれにしても、お互いにバランスが取れていないと組織間の「溝」ができてしまい、悪い方向に進む可能性があります。

「セールス vs カスタマーサクセス」編

セールスはのミッションは、短期間で、なるべく大きな金額の契約を、いくつも取ることです。受注数、受注額をアップさせようとしますが、極端な話、セールスが強いと、プロダクトが良いとか悪いとか関係なく、契約を取れると思います。取れてしまいます。実際にお客様が導入成功できるのか、納期通りに納品できるのか、見据えずに契約を取ってしまうと、カスタマーサクセスまたはエンジニアが無茶な対応に迫られるなんてことに。場合によっては、納期を守れないとか導入が成功せず、お客様は満足しないし、契約違反になって揉めたり、社内社外問わず疲弊し誰も幸せにならない、なんて事もあるのではないでしょうか。カスタマーサクセスのミッションである導入成功やアップセルどころか、契約継続が難しくなってくるのではないでしょうか。強引に契約を取って解約率が上がるのであれば、契約しない方が良い、という判断も時には必要だと思います。

逆も然りで、セールスが会社の命運をわけるような良い契約を取ってきたのに、導入が上手くいかず失敗してしまえば、「カスタマーサクセスなにしてんの?ちゃんとオンボーディングしてよ。お客様を運用に乗せてよ。解約されたら売上下がるじゃん。」となるかもしれません・・・。

「セールス・カスタマーサクセス vs 開発」編

セールス・カスタマーサクセスのミッションは、売上上げて解約率を下げつつ、アップサルさせる、導入を成功させる、というのがわかりやすい所ではないでしょうか。「アップセルしたい、早く導入成功したい。」という気持ちだけが先行して、お客様が言うことを受け入れ、社内調整もできてないのに開発をコミットしてしまったら事態は最悪です。さらに「社内でエンジニアをプッシュするぞー。」なんて姿勢で来られたら、エンジニアもたまったもんじゃありません。

間違った納期やコミットを優先して、プロダクトの軸を考えずに開発をすることを「魚に足が生える」と言うそうです。なるほど・・・。
※詳細は以下の記事をご覧ください。

逆にカスタマーサクセスからユーザーの声や情報が共有されないと、開発としては、「カスタマーサクセスとか営業は何をしてるのか?お客の声はちゃんと聞いてるのか?」なんてことにもなるので、バランスが大事です。

ちなみに、私自身の話ですが、エンジニアにこんな事を言ってしまいました。「あのお客様とは、どうしても契約したいので、XXXって機能を開発したいです。このXXXの機能を”営業ウエポン”と呼ぶことにしましょう!」と半分冗談で、声高らかに宣言すると・・・・、光の速さで、お叱りを受けました。そのときの様子がこちら。

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名前をつけること自体が危険ですと。言葉にして口にするだけで、その言葉に引っ張られて、間違った方向に進む危険性があると理解をしました。深く反省。

開発チームとしても、「無駄な機能を開発してしまった。時間と予算を無駄にした。」なんてことには、当然なりたくないですからね。自分の目の前のことだけでなく、全体を俯瞰する事が大事です。

溝が生まれる原因

それぞれの組織、役割間で起こりうることを書いてみましたが、組織間の「溝」の原因は、以下のように大きく3つあるんじゃないかと思います。

原因1:お互いの目標や役割を理解していない

情報が共有できてない、役割を理解してない、みんなの気持ちを理解できてない。周りのことを考えず、「自分さえ良ければ良いや」となってしまうのは非常に良くないサインだと思います。

原因2:それぞれの目標数値が先行して「なぜ?」が伴っていない

・とにかくリード100件、SQL100件!
・とにかく契約、契約、売上、売上!
・とにかくアップセル!
・とにかく開発、開発、開発!

それぞれの役割で数字を見て、そこに突き進むのは、非常に良いことだと思います。優秀であればあるほど、どんなに険しく辛くても、目標を達成することはできると思います。ただ、自分たちの数字ばかりを追い求めて、会社全体のバランスを考えず、自分の組織だけ突出するのは、良いことなのでしょうか。

原因3:風通しの悪さ

お互いを理解しなくてはいけないのに、部門や組織の責任者間の距離が遠かったり、チーム間での連携が少ないと、当然お互いを理解することは難しいです。最悪なのは、責任を押し付け合うだけで課題解決に向かって対話ができない状態です。

組織間の「溝」を埋める対策

原因を考えた後は、対策です。言うは易く、行うは難しですが、やっぱり実行する人が一番偉いと思います。自戒も込めまして、対策を書いていきます。

対策1:情報の見える化と共有

マーケティングの情報、セールスの情報、開発の情報など、可能な限りオープンにして、連携を図る事が重要だと思います。MAやSFA、開発環境などのシステムを駆使して、情報公開を推し進めるのが一つの方法だと思います。実際に弊社では、かなりの情報がオープンになっているので、Slackを見ていれば、自然に色んな情報が流れて来ますし、自発的に探しにいけば、本当に色んな情報を見ることができます。定例会議などで改めて大事なところを口頭説明することも当たり前ですが、重要だと思います。

対策2:「なぜ」を突き詰めた目標設定

数字だけ見る・見せて、「これやって」「これ達成して」だけではなくて、その数字の裏にある意味を、しっかりと共有・理解するが重要になってくると思います。

・なぜリード100件、SQL100件なのか?
・なぜその契約数がいるのか?なぜその売上目標なのか?
・なぞその機能が必要なのか?
・会社として、どこを目指しているのか?

情報を見える化を行うと同時に、「なぜ」を理解する事が重要です。別組織で一緒に目標設定をするなんてことも、場合によってはありではないでしょうか。今どきの言葉で言うと、KGIやKPIの設計というのも大事になってきそうです。

対策3:ONE TEAMの構築

対策1と2も、ラグビー日本代表のように良いチームでないと実現できないと思います。「良いチーム」=「仲良しこよし」ではありません。漫画「キングダム」は、何かと組織論で話題になりますが、あの大将軍たち、みんながみんな仲良しというわけではないのに(むしろ仲悪そうなのに)、非常に組織された戦術と実行力で、大きな目標を成し遂げていきます。そういった取り組みが会社にも必要になってくると考えてます。最終的に目指すべき目標は共通であるべきだし、特に強い組織をつくるためには、リーダー間の密な連携が必要だと思います。

最後に

以上、色々と書きましたが、組織が大きくなってくればなってくるほど、マネージメントは難しいと思いますし、正直、私にとってもまだまだ未知な事が多いです。想定してない色んな要素があるはずで、そう単純ではないと理解しています。

ただ、この記事を書いていたら、「エビフライ」を思い出しました。まずはエビを買ってきて、切って、小麦粉をつけて、卵をつけて、パン粉をつけて、揚げて、食べます。小麦粉だけ少なくて、卵とエビだけ多くてもダメです。揚げ方にも注意が必要です。それぞれの役割に合った量とバランスが大切で、何かが足りなかったり、何か多過ぎちゃったりしないようにする必要があります。組織も一緒かなと思いました。全体でバランスをとり、みんなで情報を共有し、お互いの理解を深め、大きく美味しい「エビフライ」を作ってお腹いっぱい食べる、という目的を意識して取り組む事が、組織間の「溝」をなくすためにも必要なんだろうなと思います。

組織間の「溝」を埋めるオススメ本

様々な役割、組織や人のことを少しでも理解するために、参考になれば良いなと思い、いくつかオススメ本を紹介します。

WEBマーケ的な所ですが、結構サクッと読める本なので、マーケティングの基本や気持ちを理解するのにオススメです。

セールスの気持ちを理解するのに、おすすめです。これは個人的にも、かなり傑作だと思っています。

エンジニアの気持ちを理解するのにオススメです。果てしないシステム開発を垣間見る事ができると思います。読むだけで、なんだか疲れます。

チームの目標設定、人選、コミュニケーションを考える時にオススメです。「チームの4タイプ」ってところは、腑に落ちました。

人の気持ちを理解するのにオススメです。人生とは、ロジカルとフィーリングのバランスだと思います。この本は、「妻」に限った話ではなく、「仕事」にも通ずる部分があると信じています。笑

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