法律事務所で1on1をやってみた話
はじめに
こんにちは!弁護士兼キャリアコンサルタントのちーたらのパパです。
僕は、今、弁護士兼キャリアコンサルタントとして、弁護士(特に若手)の皆さんが自分らしいキャリアを歩めるように、また、法律事務所の組織そのものをより良い組織にすることで、そこで働く人がやりがいを感じられるように、サポートすることをミッションに掲げています(詳しい自己紹介はこちらをご覧いただけると嬉しいです。)。
そして、このミッションを実現するために、まずは自分の所属する法律事務所において、主にキャリアコンサルタントの目線で、様々な取り組みに挑戦しています。
今回は、その取り組みの一環として、最近始めた「1on1」について、お話ししたいと思います!
1on1とは何か
「1on1」については、先日、由井俊哉さんの『部下が自ら成長し、チームが回り出す1on1戦術 100社に導入してわかったマネジャーのための「対話の技術」』に関する紹介記事を投稿しました(詳しくはこちら)。
こちらの記事でも紹介しましたが、「1on1とは何か」について、『1on1戦術』の著者の出身企業リクルートマネジメントソリューションズのHPでは、次のように紹介されています。
人材育成のための施策として、新聞やニュースで目にする機会も増えましたよね。
1on1の目的
部下の成長促進と組織力強化
上記のような1on1を行う目的については、例えば、「はたらいて、笑おう。」のビジョンで有名な労働者派遣会社パーソルグループのコラムを見ると、次の通り述べられています。
僕が自分の所属する法律事務所で1on1を導入してみようと思ったのも、この2つの目的を達成したいと考えたことがもちろんあります。
具体的には、自身のアソシエイト時代の経験から、自組織のアソシエイトが、ひょっとすると、パートナーから振られた案件に対して自分の案件という意識をもって対応することができていないかもしれないという危惧がありました。
そして、万一、この危惧が現実のものであるとすれば、アソシエイトに、クオリティの高い仕事をしてもらうことができないばかりか、やりがいを持って働いてもらうことができず、結果として離職に繋がってしまうなど、組織にとってもアソシエイト自身にとっても大きな損失になると感じていました。
こうした危機感から、自分の同僚であるアソシエイトが、主体的に、やりがいをもって日々の仕事に取り組むことができるようになるためのきっかけになればという思いから、1on1をやってみようと考えました。
コミュニケーションの活性化
また、僕が1on1をやろうと考えた一番の理由が、アソシエイトとの1on1を通じて事務所内のコミュニケーションを活性化したいと考えたからです(この意味では事務スタッフとの1on1も実現したいと考えているのですが、リソースの観点で十分に実施できていないのが現状です)。
というのも、アソシエイトというのは、ボスとなるパートナーから多数の案件を振られる結果、案件を処理するのに忙しいのが常態化しています。
さらには、(この点は事務所によると思いますが)アソシエイトに指示をするパートナーも、外からクライアントを取ってきたりアソシエイトの成果物をチェックしたりで、アソシエイトよりもっと忙しいということもざらです。
その結果、アソシエイトは、自分の上司となるパートナーや先輩弁護士とゆっくり話をする時間が取れておらず、自分の悩みや考えを共有することができていないように見えました。
こうした状況の中で、事務所内のコミュニケーションを活性化し、事務所内の風通しを良くするために、1on1の試みをスタートしました。
実際にやってみた感想
以上の理由から、まず、自分よりも期の若いアソシエイトを対象とした1on1の取り組みを開始し、先日、第1回目の1on1を終えました。
ここでは、実際に1on1をやってみた感想・効果について、シェアしたいと思います。
①濃いコミュニケーションを取ることができた
コミュニケーションの活性化を目的に始めた1on1ですので、まず何よりも、アソシエイトとの間でゆっくり話をすることができたことは、大きな収穫だったと感じています。
僕自身、直接アソシエイトと一緒に仕事をする機会が多いわけでもないので、今回の1on1で話をするのがほぼ初めてという人もいました。
また、弁護士登録してから5年以上が経過していることもあり、一番若い弁護士からすれば、なかなか話しかけづらいだろうなとも感じていました。
こうした状況の中で、アソシエイトが考えていることをゆっくり話してもらうことができたことは、双方にとって非常に良い機会になったと感じました。
②組織が抱える課題が垣間見える
複数のアソシエイトと話をすると、皆それぞれ、年次・担当している仕事の内容・仕事に対する姿勢(バリバリ働きたいのかワークライフバランス重視か)が違いますので、当然、それぞれが抱えている悩み・課題も様々でした。
ただ、その中でも、アソシエイトが仕事の中でやりづらさや不満などのストレスを感じていることには共通している部分もあり、これが今の組織全体の課題なのではないかと見通しを立てることができたのも一つの成果だと感じています。
③自分自身の気づき・刺激になる
アソシエイトと話していると、それぞれ将来について真剣に考えていることが伝わってくるという場面がいくつもありました。
僕自身も、当然パートナーという立場で将来のことを考えなければいけない立場にあるのですが、自分よりも期の若い弁護士がこんな風にいろいろと考え、そして実際に行動に移しているという事実(当然と言えば当然のことですが)を目の当たりにし、とても良い刺激を受けました。
実際、その影響で、今まで二の足を踏んでいたクライアント獲得のための営業活動を始めるという行動に移すことができました。
これは1on1の目的というわけではなかったので副次的な効果なのかもしれませんが、実際に1on1をやってみて、部下の側だけでなく、話を聴く上司の側にも、一定のメリットがあるのかもしれないと感じました。
課題
上記のような効果を感じた1on1ではありますが、他方で、課題も感じています。
①忙しい時間を割いてまで実施するメリットがあるのか
前述の通り、パートナーかアソシエイトかにかかわらず、弁護士は、目の前の案件の対応に追われていることがほとんどです。
そうした状況の中で、先輩と話をするためだけの時間を取ることに本当に意味があるのだろうかという疑問は、第1回目の1on1を終えた段階になっても拭いきれませんでした。
この点については、ちょうどあるイベントで1on1やメンター制度の普及活動をされている方の講演を聞く機会があったので、直接この疑問をぶつけてみました。
そうしたところ、「1on1の目的がコミュニケーションの活性化にあるのであれば、このまま続ければいいのでは」との回答をいただきました。
そのときは正直ちょっと拍子抜けしてしまったのですが、確かに、その講師の方がまさに仰っていたように、1on1は部下のための時間であると言われますので、上司的立場にある僕自身が、「意味ないんじゃないか」などとあれこれ考えても仕方ないよなと納得できました。
実際、僕が行った1on1の時間を振り返ってみても、アソシエイトの方から「こういう面談良いと思います!」などと肯定的に評価してくれる人もいたので、まずは、先ほどのアドバイスを信じて取り組みを続けたいと今は考えています。
②効果・影響を評価するのが難しい
1点目の課題とも少し共通しますが、忙しい時間を割いて1on1をやる以上は、本人に何かしらの形で効果を実感してほしいなと感じています(これも1on1は部下のための時間という考えと相反するのかもしれませんが、部下の側が意欲的に1on1に取り組んでもらうためにも、何らかの効果を感じてもらえたらと思っています)。
ただ、たとえアソシエイトの側が何らかの形で効果・影響を感じていたとしても、それが目に見えるわけではないので、組織として、1on1の取り組みをどう評価すればいいのだろうかという悩みを抱えています。
一般の会社(特に大企業)では、最近、エンゲージメントサーベイなどの形で従業員の会社との心のつながりを測定するという取り組みをされている会社が多いと思いますが、法律事務所においても、こうした取り組みをすべきなのか、考えを巡らせています。
何もやらないよりはやった方がいいのではと思う反面、やるからには時間とお金がかかる話ですので、悩ましいなと感じています。
※ちなみに、エンゲージメントサーベイについては、先ほどと同じくパーソルグループのコラムで次の通り紹介されています。
おわりに
以上、僕が法律事務所で1on1を導入してみた話でした。
法律事務所は、5大法律事務所などの一部の法律事務所を除けばほとんどが中小企業ですし、人の入れ替わりも比較的多い業界なので、今回の1on1のような人事・総務系の業務をどこまでやるのか、非常に悩ましいなと感じています。
僕自身、試行錯誤しながらいろいろな取り組みを考え、少しずつ実践し始めていますので、都度、noteを通じて紹介していければと思っています。
もし同じような取り組みをすでに実践されている方・検討されている方がいらっしゃれば、ぜひコメントやメッセージをいただきたいなと思います。
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