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最初で最後の軽音夏合宿・完 / 真髄を貫いた男の生き様と恥じらい

激動の4日間が終わった。軽音の夏が終わりを告げた。

良いことも悪いこともあったけれど、終わってしまったいま、少しばかりの寂しさが後追いする現実から、夏の思い出として生きながらえていくこととなるのだろう。

行っても行かなくても後悔することはわかりきっていた。その上で行かないことを選択した冬合宿から半年。行くことを選択した今回の夏合宿は、ある種の覚悟を携えたものでもある。

とはいえど、やはり集団行動は大の苦手で、自分のコンディションをねじ伏せて合わせ合わせの行動を取っていかなければならないことに時折挫折した。グループの中で居場所を見つけてしっぽりと生きるということは決してかんたんではない。時に孤独にもなる。故に苦しんだ。

夜空を仰ぎに真夜中外へ出ては、星空を見上げて道の真ん中に寝転がった1日目の夜。分厚い音と光を立て(点て)ながら走ってきた車を前に現実と夢を彷徨い笑いあった夜。若干の曇天を装った星を視界いっぱいに広げ、時折走る流れ星に遊ばれながら、その場限りの空気を頼りに語り続けた。なんと素敵な時間だっただろう。

2日目の夜。体調を崩した同期を帰すべく途中まで車で送ることとなった。はじめは自分の住処とも近い場所まで送ることになっていた。疲れと暗い夜道の喧騒を携えた往復8時間の運転を自分が担当することで 合宿の楽しみが無常に消えていくという現実を受け容れることができない自分は 不用意に地団駄を踏んだ。さまざまな複雑な感情を憶え、どうなろうが得することのない現実を前に大きく取り乱した。自分が背負う決断を下した直後にはたくさん泣いた。笑える。合宿直前にコロナを罹患し かつ運転免許を持っている最高条件の札をぶら下げた自分が惨めな姿を見せてしまったものだ。本当に色んな意味の涙だったと思う。開き直っては、宿のみんなに向かって 全力で楽しんでおけ とだけ残して去る自分の姿は、我ながら美談にもしたくなる。結果的に、車酔いの追い討ちや彼なりの誠意(適切な表現ではないかも?)から、途中で彼を降ろし交通機関を使用して帰宅してもらうこととなった。往復8時間から2時間・もう一方の運転担当の後輩と片道1時間ずつの運転となった。お互いかなり体力的に堪えていたし、道中には生と死の境を辿ったが、短くすらも感じる2時間のドライブを無事終え宿へと戻った。2時間で帰ってきてしまったこともあり、2時間前の去り際のドラマチックな雰囲気には見合わないあっさりした反応であまりにも報われなかったし、一部の合宿委員の態度にも少なからず苛立ちを憶えてしまったあたり、自分のダメな部分だと思う。これはずっと悩んでいる自分の嫌いな部分である。そんなことはいい。美談にするものではないのだが、それでもやはり、もうちょっと称えてくれてよかったと思ってしまった。生きて帰ってくるのは決して当たり前ではないんだよ。そういう思いを抱えつつも、2時間のブランクを消化させるべく、疲れを振り払って 全力で楽しむ ことに注力した。この日も夜道を散歩したが、前日と比べると星空は映えなかった。星空に代わって、幻想を身に纏う真白な靄に煙草の煙が重なり、平行線を辿りながら暗い道中に流れていく。体内に流れるアルコールとともに陶酔した。

3日目の夜。前説なく行われた意識調査の結果発表に少なからずの動揺を抱える。結果に対してどのような感情を抱こうが嘘となるためここでの明言は避けるが、大目玉のガチ恋投票は0票となった。以前より“誰のものでもない感”を大切に生きてきた自分にとってはいわば理想的ともいえる、生き様の真髄が具現化された結果である。それでいて、結果発表時のまわりからの面倒な冷やかしと、その冷やかしと相反した結果が生み出した微妙な雰囲気に自分はとてもとても耐えられなかった。無駄で大きな恥じらいを憶え、既に体内を蝕んでいたアルコールが負の感情を掻き立てた。ネタに昇華させることに必死な自分に失うものはなにもない。その中で、票を獲得した部員からの不必要な慰めに苛立ちを隠せず、アルコールの力を借りながら思う存分取り乱した。軽音なんか辞めてしまおうと思ったし、荷物すべて纏めてスーツケースごと夜中の山中に飛び込んで消えてしまおうとも思った。(基本的に)全員のことが信頼できなくなりかけていた。無駄な恥じらいに動かされる。バカらしい。同期のひと声をきっかけに、この日も星空を眺めに外へ出た。気づけばいつもの2人だった。悪酔いしては宿のその場で毒ばかり吐いていたので、正直もう話すことなんてないと思っていたが、暗い自分ほど面白いほど口が走る走る、つらつらと自分の人生論が夜空の星を繋ぐ。自分でも驚くほど綺麗に言語化することができていたような気がする。救われた。なんだかんだこうだ。よかった。自分はいつだって感情に素直で、顔に態度にすべて出る。いやはや、いかにも、自分は にんげん だった。夏のくせして新潟の夜は寒気を纏うから、アルコールなんてとうに抜けていったが、結果的には大丈夫になってしまった夜だった。遂には朝だった。

激動の4日間が終わった。軽音の夏が終わりを告げた。帰るだけ帰る4日目にはしたくないから、帰宅してはそのまま4日間のお洋服たちを洗濯に回し、スーパーで買い物を済ませては、余韻に浸るべく近くのスタバでひとり後夜祭を広げ、いまに至る。合宿中離れていた イヤホンを通した脳への直接的な音楽 を垂れ流しながら、気づけばこんなにも長いブログを綴っている。事前には入念に4日間のコーディネートを 設計 したが、結果的に一番良かったのは1日目の ぺドラー(そんなものはない)とのオソロ PEDRO T コーデ だったな。合宿中には臨機応変にコーデ変更もでき、しっかり準備して考えていった甲斐があったなと思っている。自分の大切にしている服へのこだわりが形になってよかった。俗にいう一般的なオシャレとはちがうのですよ。趣深いなあ!

星空を前に語り続けたことの多くをここで改めて語るのは野暮というか、その場限りの言葉の羅列でしかないから、ここに残すことは敢えてしないでおく(既にかきすぎているし)(*後書き:といいつつ別で残したい欲が出てきてしまった)。自分は悩める男だ。悩める男なので、これからネトフリでLIGHT HOUSE(例の源と若のやつ)を見て帰路につくとしましょう。一気に日常へと帰ってきたようで、まだまだ余韻に浸ることを決して恐れてはいませんよ。まだまだ生けそうであります!

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