記事見出し画像_02

『料理通信』の人気特集「小さくて強い店」シリーズが10年続く理由

はじめまして。雑誌『料理通信』編集長の曽根と申します。

『料理通信』は2006年に「作り手(生産者)、使い手(料理人)、食べ手(生活者)を結ぶ」フードマガジンとして創刊しましたが、よく聞かれるのが「プロ向けの雑誌ですか?」という質問です。

レシピはたくさん載っているけれど、そのほとんどがプロの料理人に教わっている&手順だけでは伝えきれないコツを伝えるためプロセスカットが多いので、そう見えるのかもしれません。

取材しているのは今、話題の店や、ずっと支持され続ける実力派シェフの店。私たちも実際食事に行って「間違いない、おすすめできる」と確信した店ばかりですが、なぜおいしいのか?を深堀りした誌面構成のため、レストランガイドに見えないのも理由の一つでしょう。

創刊14年目にして未だに「プロ向けか? 一般向けか?」と聞かれる雑誌というのも相当売りにくいと思いますが(笑)、「食べること」を大切にしたい。だから「作り手(生産者)、使い手(料理人)、食べ手(生活者)を結ぶ」雑誌でありたいというスタンスで続けています。

そんな『料理通信』の中でも、今日は「料理通信といえば……」と、よく取材先や読者の方から挙がる人気特集「小さくて強い店は、どう作る?」シリーズをご紹介したいと思います。

(長いです:読了約10分?)

【2009年~】リーマンショック後、会社に頼らない生き方として台頭した「小さくて強い店」


『料理通信』2009年3月号
表紙は恵比寿のイタリアワイン酒場「エノテカ・クリッカ」

画像1

「狭くても店は開ける」

「小さくて強い店は、どう作る?」シリーズ第1弾の発刊は2009年2月。
先の「プロ向けか? 一般向けか?」から言ったら、完全にプロ向けなタイトルにもかかわらず、売上部数が伸びて一般読者からの反応も大きく、8カ月後に第2弾を出すというヒット企画となりました。

それまで店を開くといえば修業を積んだ料理人が主だったのが、2008年のリーマンショックあたりから異業種からの転身組が増え、修業経験はなくても“食べ手としての経験値”の高い彼らの店づくりが新鮮で「取材したい」と思ったのがきっかけです。

200903_016_クリッカ

巻頭は、人がすれ違えない細さの(笑)階段でつながった2階建ての店「エノテカ・クリッカ」(現閉店。オーナーの小串貴昌さんが新たに開いた神泉「オルランド」は連日満席の人気店)。そして、今や自然派ワイン界を牽引するスターとなった「アヒルストア」。

200903_018_アヒルストア

今でこそ7坪と聞いても驚きませんが、当時は「この狭さで店が開けるのか!?」と、7坪物件のアヒルストアの空間使いを徹底して見せるページを作り、すべての店の開業費用とその内訳、坪単価から施工会社までつまびらかにする誌面構成が、この特集の定番フォーマットになりました。


『料理通信』2009年11月号
表紙は下北沢のコーヒーショップ「Bear Pond Espresso」

画像2

「超低予算でも店は開ける」

間を空けずに同じ企画で第2弾を打ち出せたのは、当時次々とそれまでにないスタイルの個人店がオープンしていたから。その中でもひと際早く、前例のない店を超低予算で(250万円!)作り、連日満席の店となっていた「uguisu」を巻頭で取材。大資本では作れない店を作るために、あえて自分に「上限300万円で店を開く」ことを課したという“逆転の発想”が特集の太い柱になっています。

画像18

同じく業者を頼まず99%DIYで店を作った「パーラー江古田」の事例も、「予算がなくても店は開けるんだ」と、会社に頼らない生き方の一つとして開業を身近に考える読者層が広がるきっかけとなりました。

200911_020_パーラー江古田



『料理通信』2010年10月号 表紙は都立大学のバル「marucan」

画像3

「5年で4店舗開業、不況に強い店づくり」

「狭い」「お金がない」「立地が悪い」「修業経験がない」と制約だらけだからこそ面白いアイデアが生まれ、他にはない個性となって強い店になる。不況が続く中、東京駅の東サイドで頭角を現してきたのが「ポンデュガール」系列の小さくて強い店でした。サラリーマンの多い土地柄でワインを飲ませる店を次々と流行らせる強さの秘訣を誌面で徹底解剖。その後も勢力は拡大し、今や東で安く楽しく自然派ワインを飲むならポンデュガール系列、と広く認知されています。

201010_014_ポンデュガール

201010_016_ポンデュガール


【2011年】料理人による日常使いの店が登場。身に付けた技術をパーツ売りする


『料理通信』2011年5月号
表紙は西荻窪の肉イタリアン「トラットリア29(ヴェンティノーヴェ)」

画像4

時代が不景気になり、異業種からの転身組が日常使いしやすい店をあちこちにオープンしていったことで、レストランに行く機会が以前より減ったなという実感がこの頃、確かにありました。そんな中、星付きレストランや海外で修業を積んだ料理人たちが、身に付けた技術をレストランではなくワインバーや食堂、惣菜店などで生かす独立のかたちをちらほらと目にするように。第4弾はそんな料理人たちの逆襲、一人または夫婦の最小単位で営む小さくて強い店をフィーチャーしました。

201105_016_プティバトー

巻頭は渋谷神山町の「プティバトー」。恵比寿のタイユバン・ロブション、フランスでも経験を積み、代々木上原でプリフィクスコースのレストランを営んでいた笹川幸治シェフが移転して、たった一人で開いたカウンターの店です。付け合わせのじゃがいものグラタンを単品売りにしてオーダーが入ってから皮を剥くア・ラ・ミニッツで提供、スパイスを絶妙に効かせた自家製ソーセージを1本からと、皿の中身はレストラン・クオリティながら五月雨式に、飲みながらオーダーできる使い勝手のよさ、一皿のポーションと価格は「日常の店であること」を雄弁に語っていました。

201105_018-019_プティバトー

ちょうどこの特集の取材がひと段落したタイミングで震災があり、夜の外食を控えるムードが続きましたが、地元のお客さんが心配して食べに来てくれると聞き、技術を身に付け、それを時代に合わせてパーツ売りする料理人の店は強い!と実感したのを覚えています。


【2012年】開業7年目以上、リピートしたくなる小さな店の「育て方」に迫る


『料理通信』2012年8月号
表紙は渋谷の熱帯音楽酒場「ロス バルバドス」

画像5

継続は力なり。この頃になると、狭くても、お金がなくても、立地が悪くても人気店は作れることが実証され、あらゆるエリアで個人店主による新しい店が続々登場してきました。そんな中、本当に強い店とは「長く続く店」。1度来て満足、ではなく、リピートしたくなる店づくりとは?をテーマに、開業7年以上続いている小さくて強い店を特集したのが、第5弾です。

面白かったのは、開業間もない店では聞けない話。客足が伸びない時期の乗り越え方、長く店を続けていくために、一人当たりの最低注文金額、禁煙、子ども連れの可否など、客に制約を設けることの大切さなど、含蓄のある言葉がたくさん詰まっています。

201208_030-031_ロスバルバドス

表紙の店、渋谷「ロス バルバドス」のご主人、上川大助さんは、千葉・市川で営んでいた店を一度クローズしてからの再出発。「店あってこその自分だと気付いたから、バイトしてでも維持しようと思った」という言葉に、店を続けるための強い決意を感じました。

201208_028-029_スウィートウォーター

また、シリーズ第3弾でオープンまでの道のりを密着取材した文京区「スウィート・ウォーター」の2年後を追った企画も。飲食店があまりないエリアで「ワインとイタリア料理を気軽に楽しめる店を」とオープンしたものの、レストランっぽさを消したがゆえに想定外の喫茶店、居酒屋使いをされてしまい、急遽グラスとカトラリーをセッティング。自分たちがやりたい店のスタイルをお客さんに伝えるための工夫の数々に、店づくりは開店してからも続くのだと学んだ企画です。


【2014年】小さくて強い店が、街の流れを変える


『料理通信』2014年1月号
表紙は西荻窪のバル「アニモ!」(その後、早稲田に移転)

画像6

第6弾は1年半空けての発刊。街の名前をつけたバルがあちこちに登場した時代です。その元祖といえる「三鷹バル」のオープンは2006年。吉祥寺駅から各駅停車で2つ目、ほぼ住人しか降りることのない三鷹台駅の近くに当時、「10年ぶりに新店ができた」と噂になった3.5坪の小さくて強い店です。

201401_014-015_三鷹バル

たった190万円でDIYで作った店は、あっという間にお客さんで満員電車状態になり、遠くからこの店目指して人がやって来るように。そのうち近隣にも新しい店がオープンし、静かだった駅の周りはいつの間にか活気のある、「暮らしたい」「店を開きたい」街になっていました。

201401_020-021_ワルツ

そんな街に新しい流れを生みそうなワインの店、コーヒーショップ、カレー店、ブリティッシュパブと業態も様々な小さくて強い店を取材しています。
また、「いつか店を開きたい!」という読者が、誌面を越えてリアルに特集登場店のオーナーに話を聞けるイベント「店づくり100人交流会」も2013年、2014年と開催。私たちもリアルな読者の声を聞ける貴重な場となりました。


【2014年】坪単価、注目エリアを4都市の不動産のプロに聞く!

『料理通信』2014年12月号
表紙はNY帰りのオーナーが小伝馬町に開いた「北出食堂」

画像7

時代が変わって人気の店のスタイルは変わっても、店を開くにあたって必ず直面するのが「物件探し」。予算が限られ少人数で回せる10~15坪前後の物件は常に争奪戦です。物件を求めて東へ、西へ、南へ。小さくて強い店の分布図が広がる中、東京、大阪、名古屋、福岡の不動産のプロに、物件探しの心得やこれから注目のエリアを語っていただきました。直近1~2年で賃貸に出た路面店物件からはじきだした坪単価マップ付きです。

201412_048-049_坪単価マップ

店を開こうと思ったら、「まずは物件を見て回ろうかな」と考えそうですが、不動産のプロ曰く「まず店のコンセプトがあって、どんなお客さんに来てもらうか考え、開業費用とランニングコストをいくらにするか。そこで初めてエリアを決め、物件探しを始めないと時間のロスになります」。いい物件に出合ったら大家さんの信頼を得られるよう即、資料を提出できる準備をしていなければ、せっかくみつけた物件を逃して後悔することに……。

201412_030-031_西冨家コロッケ店

そんな具体的、実践的な物件探しのノウハウを盛り込みつつ、当時は穴場だったエリアで物件をみつけたオーナーたちの店づくりを紹介。子供の頃からコロッケが大好きでIT企業から転身した「西冨家コロッケ店」の西冨学さんは、京都・河原町五条の戦前に建てられた手強い物件を、美大時代の人脈とアイデアで自分らしい店に作り変え、借入金なしの低予算でスタート。味も空間も他にはないコロッケバルとして、瞬く間に人気を集めた小さくて強い店です。


【2016年】独立志向に留まらない、小さくて強い店の「役割」とは?


『料理通信』2016年12月号
表紙は広尾のコーヒーショップ「_Nem_Coffee & Espresso」

画像8

2年ぶりの特集となった第8弾。実はこの頃、店づくりブームは一旦落ち着いたと感じていました。どの街にも使い勝手のよい個人店ができ、「店を開く」ことのハードルはシリーズ当初より低くなっている。果たしてこの特集は今も必要とされるのか? と編集部内で自問していた時期です。それが、「やっぱり続けよう」となったのは、世田谷線の松陰神社前駅で牡蠣とおばんざいの店を営む「マルショウ アリク」廣岡好和さんを取材したことがきっかけでした。

201508_098-099_アリク

『料理通信』は小さくて強い店特集のほかに、毎月「新米オーナーズストーリー」という2ページの連載で個人店の店づくりを追っています。そこで廣岡さんを取材した際、飲食店には「役割」があるという話に、あれ、意識が変わってきたなと感じました。

大企業の不倒神話が崩壊する中で「自分の足で立ちたい」と考える人たちが従来の価値観を覆すアイデアで独立していった「小さくて強い店」。それが経済的な自立だけではなく、「地域や社会に働きかける意識」をもって独立する人が増えているのでは?と気付き、第8弾では「“未来を耕す”小さくて強い店の作り方」をテーマに特集を組みました。

201612_012-013_トビラ

特集後半では、数年前から続々新店が登場していたコーヒーショップのオーナーたちに、コーヒーやコーヒーショップがもつ発信力についてそれぞれの想いを取材。SNSが浸透し興味の近しい人たちと深く繋がる一方で、リアルなコミュニケーション、繋がりを人は求めている。一杯のコーヒーやワイン、一皿の料理が食べ手の意識を変えることがある。飲食店のもつ力、飲む、食べるだけではない役割を実感した特集です。

201612_054-055_コーヒーショップ


【2017年】ハードは最低限、「ヒットする味の磨き方」を徹底取材


『料理通信』2017年11月号
表紙は浅草のマイクロビストロ「ペタンク」

画像9

開業費用の内訳から坪単価まで、店づくりに欠かせない「お金の使い方」をリアルに数字で公開してきた「小さくて強い店は、どう作る?」シリーズですが、回を重ねるにつれ低予算でセンスのいい店を作る人がどんど増えているなと思う一方で、「どこかで見たような……」と既視感を覚えることも多くなっていました。

201711_014-015_ドレスドビラ

そんな中、渋谷駅近くの三畳に満たない極小物件、洒落た空間も音楽もサービスもないのに夜な夜な人が群がるサンドイッチスタンドに遭遇。ハードは最低限でも「味」だけで強い店になれるんだと軽いショックを受け、「ヒットする味の磨き方」をテーマに特集を組んだのが「小さくて強い店のレシピ集」です。

201711_016-017_ドレスレシピ

巻頭のサンドイッチスタンド「ドレスのテイクアウト店」のオーナー森谷義則さんの人生経験が生みだす唯一無二のサンドイッチは、ワインのアテとなる様々な味覚、食感の工夫、時間が経ってもおいしさを保つ細やかな気配りに溢れていました。

201711_043_元祖

201711_046-047_ドレスレシピ

また、第1弾、第2弾で取材した元祖・小さくて強い店「organ」(「uguisu」紺野真さんの2店目)、「アヒルストア」「パーラー江古田」の新作の生み出し方、定番の味の磨き方を徹底取材した企画も。オープン以来、先頭を走り続ける人気店は、味づくりも進化し続けているのだと止まらない強さの理由に心の底から納得した取材です。


【2018年】深刻な人材不足を“逆転の発想”で武器にするワンオペの店

『料理通信』2018年11月号
表紙は蔵前のナチュラルワイン酒場「コントワールクアン」

画像10

「狭い」「お金がない」「立地が悪い」を逆転の発想で武器にする小さくて強い店。しかし2坪でも店を開くツワモノが現れる時代、人気店ですら求人しても応募のない「深刻な人材不足」こそが制約では? と、「ワンオペでも強い店づくり」をテーマに特集を組みました。すると思いもかけない発想の転換でマニアックに味を追求する人、時間を自由に使い無理のない営業スタイルを築く人と様々。最初から「一人を前提」に店づくり、味づくりをすることで、伸び伸びとやりたいことに邁進する個性的な店主が揃いました。

201811_027_エルセビチェロ

店主も個性的ならレシピも個性派揃い。

・セモリナ粉と強力粉を同割に、オーブンと直火で焼く「ナポリ風ピッツァ」
・ラム肉にニラミントソースをかけた南方中華料理
・塩できっちり締めてライムと唐辛子を効かせる「本格セビーチェ」
・もっちり発酵の風味豊かなロシア式クレープ生地「ブリヌイ」

など、マニアックに極めた味を惜しげなくポイントカット付きで紹介しています。

201811_038_ペリメニ

そして、吸引力の強い小さくて強い店が街の流れを変えてきたように、日本各地で地域の起爆剤となるような小さくて強い店が登場している。その潮流を山梨、熊本、福井からリポート。人口が少ない、車社会でアルコールが出ないなど地方には地方の制約があるけれど、「固定費が安価な分、店の質を高めることに集中できる」「自分で釣った魚で料理を作るから、釣果によって毎日違う味のブイヤベースが楽しめる」など、地方でしかできない店づくりは、思わず「うらやましい……」と漏らしてしまう魅力に溢れていました。

201811_048-049_山梨


【2020年】「理想の働き方」を叶える新しい飲食店のかたちとは?


『料理通信』2020年1月号
表紙は目白のティジェッレ(エミリア=ロマーニャ州の郷土パン)専門バル「ティジェッレリア ガタリ」

画像11

好きで始めた仕事を、好きな気持ちのまま続けたい。

ここ数年、店をもたない料理人やソムリエ、フリーで活躍するパティシエが増えている背景には、食べること、作ること、人を喜ばせることは好きだけど、飲食店を続けていくのは難しい……という現実があります。もともと労働時間が長く休みも少ない、さらに深刻な人手不足が追い打ちとなって、飲食店で働くことが喜びよりも悲壮感を伴うイメージで捉えられている気がします。

しかし、ここでも「好きを仕事にする」ために、その手があったか!という目から鱗の発想で、自分も周りもハッピーな店づくりを実現する店主たちを発見! 飲食業の未来を拓く店づくりを特集しました。


画像12

巻頭の店、月島「カモンチ」は、メニューに定食はあれど選りすぐりのナチュラルワインや日本酒を揃える酒場。にもかかわらず営業は平日のみ(月2回土曜営業)、月~水曜は18時半閉店という驚くべき営業スタイルを打ち出しています。働いているのはいずれもプロのサービス経験者で家庭をもつ女性4人。長らく女将として飲食店を任されてきたオーナーの坂本雅美さんは結婚後、一度は飲食業を離れるも、「自分の居場所がほしい」とかつての仲間を誘って店を開きました。


202001_028_サボラミ

女性はライフステージによって働き方の変化を余儀なくされ、特に飲食業は続けにくいと言われてきましたが、「ならば自分で続けられる店を作ってしまえ」、あるいは「能力ある女性の力をもっと活用できる仕組みを作ろう」と考える男性オーナーによって、新しい働き方、店の在り方が模索されています。


202001_034_コマヤましか

前例のない店づくりは、それで本当にやっていけるだろうか?という不安はもちろんあるけれど、「飲食業とはこういうもの」という固定概念を打ち破り、多様な働き方の選択肢を提示することは、飲食業の未来に不可欠な作業だと取材を終えて実感しています。特集タイトルも今回初めて「理想の働き方を叶える店づくり 21の事例」と“働き方”を打ち出す言葉を選びました。


画像15

noteで話題になっていた池尻大橋のストリートバー「LOBBY」の取材も、ビジネスバックグラウンドを強みとする彼らの「好きな仕事で生きていくために日々考えていること」が新鮮で、代表の井澤卓さんの一言一言に地球の裏側から聞こえるような発見が(笑)。こちらの記事は次のnoteで全文公開します。


10年を振り返って……

この10年、人々の志向や価値観、コミュニケーション手段や行動様式はかつてないスピードで変化しているように思います。そんな時代に同じシリーズを発刊し続けてこられた理由はなんだろう? と考えると、当たり前ですが店を開きたい、続けたい人たちがいるから。

時代が目まぐるしく変わっても、新しい波がくれば新しい波の乗り方を考えだす。人間ってすごいな、とつくづく思います。そして、店を開く、店を続けることは苦労も半端ないけれど、他の仕事では決して得られない喜びがあるのだろうなと。

一方で、雑誌を作っている私たちにはプロ向けの開業本を作っているという意識はまったくなく(もちろん役に立つ本であることは大前提で)、食べ手として店側の視点を知ると「もっとその店を味わえる」ことを多くの人に知ってもらいたいなと思ってこの特集を作ってきました。

編集者としてありがたいのは、とにかくネタが尽きないこと(笑)。「こんなに強い店が出てきたら、来年取材店探しに苦労するな……」と思っても、また翌年には「その手があったか!」と膝を打ちたくなる発想でこれまでにない店づくりをする人が現れる。

ある時、他誌の編集者から「料理通信の小さくて強い店特集は、今行っとかなきゃいけない店特集だよね」と言われて確かに、と思いました。「今、流行りの」「どこかで見たような」ではなく、その人でなくては作れない店。今回10年を振り返って、あらためて時代は個人によって作られると確信しました。

長くなりました。
でも本誌には、ここに書いた何十倍もの小さくて強い店のオーナーたちの話、人生が詰まっています。もっと読みたいという活字好きな方は、ぜひ、ご覧ください(2020年1月5日まで本屋さんに並んでいます)。

こちらから立ち読みもしていただけます。

112ページと決して厚い本ではありませんが、文字数には自信があります(笑)。ここまでお読みいただき、どうもありがとうございました。

(『料理通信』編集長・曽根清子)


【追記】こちらもどうぞ! 最新号から記事を全公開しています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?