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米国 PCEデフレータープレビュー

  • 5月のコアPCEデフレーターは前月比0.4%、前年同月比4.8%と予想

  • 7月のFOMCでFFレートを75bp引き上げが既定路線

  • 5月CPIは前月比1.0%、前年比8.6%、コアCPIは前月比0.6%、前年比6.0%で予想を上回った

高インフレが再び市場を驚かせるかもしれませんが、FRBの政策変更はなさそうです。

5月の個人消費支出(PCEデフレーター)の市場予想は、年率換算でやや緩やかになるものの、5月のCPIに追随する見通しです。コアPCEデフレーターは4月の0.3%上昇に続き、5月は0.4%上昇、年率換算では4.7%と4月の4.9%からやや低下、PCEデフレーターは年率換算で6.4%と予想されています。

これはFRBの公式目標であるコアPCEレート2%から大きく外れており、コアPCEレートは2008-2009年の金融危機から2021年の回復期まで、その目標を日常的に下回っていました。昨年春以降、コアPCEレートは2%を超えて推移し、物価はFRBのコントロールから外れており、6ヶ月平均は5.0%、12ヶ月平均は4.4%となっています。

5月の消費者物価は予想外に上昇しました。
消費者物価指数(CPI)は、4月の前月比0.3%増の後、0.7%増になり、コアCPIは4月の0.6%から0.5%に低下し。年率ではCPIは8.3%で変わらず、コアCPIは6.0%から5.9%に低下すると予想されていました。
この減少予想は、3月の40年ぶりの高水準となった8.5%、2月のコアCPI5.3%から物価上昇圧力が引き続き弱まったことを確認するものだったと思われます。

しかし、実際の結果は、CPIが前月比1%、年率換算で8.6%の上昇、コアCPIが前月比0.6%、年率換算で6.0%の上昇と、市場やFRBに衝撃を与えるものでした。

FRBの衝撃は大きく、FRBはFOMC開催前のブラックアウト期間中に、ウォールストリート・ジャーナルの記事を匿名でリークするという極めて異例の措置を取りました。
その記事で、パウエル議長が75bpの利上げを検討していることを市場に知らしめた後、6月のFOMCで、FRBは75bpの利上げに踏み切っています。
7月FOMCに対する市場の期待もこれに呼応し、2回目の75bpの利上げ確率が86.7%となっています。

製造業のインフレを追跡する生産者物価指数(PPI)は5月に緩やかな上昇となりました。全体では予想通り前月比0.8%上昇、前年比では10.8%とやや軟化し、コア指数は予想0.6%に対して0.5%、年率では予想の8.6%に対して8.3%となっています。

年間物価上昇率は3月に記録した11.5%、コア指数の9.6%から低下したものの、CPIよりかなり高く、生産者が自らの経費増加分を転嫁するため、さらなる小売価格の上昇が予想されます。

北米の原油価格基準であるWTIは、5月に10.2%上昇しました。
5月1日に103.44ドルで始まったWTIは、114.04ドルで終了し、経済全体の物価上昇がほぼ確実となり、5月のレギュラーガソリン1ガロンの全国平均は10.6%上昇しました。

FRBの政策は、7月のFOMC、年末まで非常に高い確率で想定されています。
7月に75bpの利上げを行い、FF金利上限を2.50%にしたとしても、年末に3.4%というFRB自身の予想に到達するには、残り3回の会合でさらに100bpの利上げが必要となります。
PCEデフレーターの結果が予想より高ければ、FRBの政策が強化されるだけであり、結果が予想を下回っても、物価上昇率はFRBの目標をはるかに上回っており、さらなる利上げが既定路線となっています。
言い換えれば、インフレ率の上昇がFRBの金融政策に与える影響はあまり無いことになります。

市場にとっての脅威は、インフレによる消費者心理の冷え込みと金利変動に敏感なセクターの減速が重なり、景気後退に陥るリスクが市場にとって最大の脅威となります。第2四半期のGDPは、FOMCの翌日(7月28日)に発表され、アトランタ連銀のGDPナウでの最新予測は0.3%となっています。

クリープランド連銀のCPIナウでは、PCEデフレーターは前月比0.71%上昇、前年比6.46%の上昇、コアPCEデフレーターは前月比0.46%上昇、前年比4.79%上昇との想定となっており、インフレが鈍化する兆候は見えていません。
よって、リスクとしては、予想が上振れした場合、景気後退懸念がより強まり、市場心理が悪化することが想定されます。


TEAM MAGICIANS FINANCEはFXに限らず、幅広い投資に対応することを目的とし、マクロ経済を中心に、米国、英国、欧州、アジア主要国の経済動向を配信し、ファンダメンタルズ分析の基礎を学べるコミュニティです。

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