見出し画像

就活失敗して頭に来たので独立したが就活の方が楽すぎて草ww①


「ごめんなさい、あなたは不採用です。」

何度聞いたことだろう。
本当に理解ができない。

西南学院大学のキャンパスを 
一人でポツポツ歩きながら、
業務的なメールを見て、ため息をつく。

就職活動という言葉を最初に作った人が
いたとしたら、その真意を聞きたい。

他のオドオド吃っている学生を採用して、
 なんで、受け答えも明確に回答して、
「御社のセールスの部分で活躍したい」と
ハッキリ言っているのに、受け入れられないのか。

「なんで優秀な俺が採用されないのか?」

そんなことを思いながら、
 時間を持て余して、

学校の喫煙所で一人、
タバコを吹かしていた。

「知ってる?佐藤先輩は、地元の銀行に受かったんだって!」
「やっぱり、佐藤さんはさすがだなー!」

テラスハウスで見るような、
 イマドキの子たちが会話する横で、

人の成功を妬んでいる自分の心境に
気づいて、さらに自己嫌悪に陥る。

家に帰宅した際に、
母から言われた。

「結果はどうだった?」
「ダメやね。」

母は、自分のことではないのに
すごく辛そうな表情を見せて、
自分はとても嫌な気持ちになった。

なぜだろう・・・

自分のことで自分だけが損をするのは、
大して気にはならない。

ただ、自分のことで、
自分の親しい人の評価まで
下がることが嫌だったのかもしれない。

父が、いつもより早く帰宅して、
自分にかけた言葉を聞けば、 自ずと理解できた。

「就活はどうだった?」
「ダメだった。」
 「・・・」

父は、辛そうというよりは、
 どこか不機嫌な顔をして、 答えた。

「お前”ら”がやってダメなら、 俺がなんとかしてやる」

後日、父がとある建築デザイン会社の
アポイントを取ったから、
会いにいくことになった。

いわゆる、”コネ”というやつである。

入り口の受話器を手にとり、
総務課の番号にかけると、
とても綺麗な女性の声が返ってきた。

「株式会社日亜建築デザインです。総務課の上田です。」

 「私は、本日御社の飯田代表にお会いしにきました、 鳥部というものです。」

すると、すごく丁寧な声で、
返答を受けた。

「お聞きしております。2Fのソファーにて お待ちください。」

ゆっくりと、洗練されたオフィスを歩いて、
独創的な壁画を見ながら、2Fへ進む。

「こんなところで、働けるなんて 羨ましいな」

そう思って、ソファーに座ると、
 体験したことのないふわっふわで
快適な座り心地にとても感動した。

そして、先程と同じ声をした女性が 現れて、奥に通される。
そして、少し厚みのある、 濃い木目のドアの前で、 ノックを打つ。

「鳥部様がご来訪なさいました。」
「どうぞ、中へ」

通された部屋は、整理整頓とされ、
大きく社訓を掲げた、”社長室”というものだった。

「話は聞いているよ、鳥部さんだね。」 
「はい、貴重なお時間をありがとうございます。」

そうして、促されるまま、 今度は少し硬めの革のソファに座る。

「どうだい?就職活動は?」

凄く丁寧な言葉で聞かれる。

「思ったように上手くいかなくて、 どうしていいか、分からずで・・・」

しどろもどろしながら自分が言うと、
社長は答えた。

「そうか、でも気にしなくて良いよ。
もう内定は出す準備はできてるから」

その言葉を聞いた途端、
強烈な不快感を抱いた。

本来は、就活という激戦を勝ち抜いた中で、
 一握りの人達が合格というイスに座る。

その中には、色んな努力や苦労があり、
 そして、喜びがあるはず。

けれど、今回は激戦もなく、
魅力や来歴すら聞かれない。

まるで、”相手にされていない”
仕方なく、採用をするという流れに

不覚にも気づいて、父の思惑をフイにした。

「すいません。僕が間違ってました。 すべて、無かったことにして下さい。」

キョトンとした表情の社長の前で、
そう言った。

立ち上がり、一礼をして、再度謝る。 そして、会社を後にした。

せっかくのチャンスをフイにする。
それなのに、気持ちはとても軽い。

事実上の就活失敗。

これ以降、私は就職活動を辞めた。





この記事が参加している募集

自己紹介

最後まで読んでいただきありがとうございました。記事が気に入ったらシェアやいいねをしてもらえると嬉しいです。