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正解の「ない」時代に必要な組織文化の「土台」

職場環境の改善や組織の活性化などについて議論される際、「心理的安全性」という言葉が頻繁に取り上げられます。しかし、心理的安全性だけがあれば働きやすい職場が成立するわけではありません。心理的安全性は、働きやすい職場環境を作る上で非常に重要な要素ですが、心理的安全性はあくまでも「土台」であり、職場の「風土」といえます

例えば、「良かれと思って行動しても、罰を受けるかもしれない」そんなリスクがある職場環境で、「私はこう思います」と意見しようと思いますか?

◾️心理的安全性が重要視されている時代背景

いままでの「正解がある時代」(過去の成功から未来の成功が予測できるような時代)では、これを「作れば、売れる」ような正解がある場合、「早く」、「安く」、「ミスなく正確に作れる」という効率性と結果重視が主流で、「正解がある」がゆえに意見の違いや失敗は避けられるべきものとされてきました。

しかし、これからの「正解がない時代」は、テクノロジーの発展による情報や技術格差がなくなりつつある世界で、世界全体の急速な変化や複雑な課題に対応するためには、創造力やチームワークが求められる時代に移行しています。

出典:石川遼介.(2020).心理的安全性のつくりかた「心理的柔軟性」が困難を乗り越えるチームに変える.JMAM.

そのため、こうした変化に伴い、模索・挑戦し、失敗や実践から学べる心理的安全性のある組織(チーム)がますます重要視されるようになっています。。

心理的安全性がある組織(チーム)とは、どのような環境なのか?
考察していきたいと思います。


◾️心理的安全性が「低い組織」と「高い組織」

▶️「心理的安全性が低い」

職場やグループの環境において、メンバーが自由に意見を言ったり質問したりすることが難しいと感じる状態を指します。
この状況では、失敗や間違いを恐れて意見を言えず、結果的にチームのコミュニケーションや創造性が損なわれることがあります。

▶️「心理的安全性が高い」

職場やグループの環境において、メンバーが自由に意見を言ったり質問したりすることができる状態を指します。
この状況では、失敗や間違いを恐れずに発言できるため、チームのコミュニケーションや創造性が促進され、全体のパフォーマンスが向上します。メンバーはお互いに信頼し合い、協力して問題を解決しやすくなります。

◾️「心理的安全性」と「目標達成する責任」で見た 4象限

まず、この図をご覧ください。

参考:エイミー.C.エドモンドソン,& 野津智子(翻訳).チームが機能するとはどういうことか : 「学習力」と「実行力」を高める実践アプローチ.英治出版.一部改変

▶️不安(Anxiety Zone)

心理的安全性が低く、目標達成する責任が非常に厳しい環境

  1. 高いストレスレベル:スタッフは常にプレッシャーを感じており、仕事をこなすために常に高いパフォーマンスを求められます。

  2. コミュニケーションの不足:上司や同僚とのコミュニケーションが少なく、意見や懸念を自由に言い表すことが難しい環境です。

  3. 仕事の不確実性と不透明さ:仕事の目標や評価基準が不明確で、成果が評価される基準が一貫していない場合があります。

  4. 過度な競争:チームワークや協力よりも個々のパフォーマンスが重視され、社内での競争が促進される傾向があります。

  5. 仕事とプライベートのバランスの欠如:長時間労働や休暇の取得が困難であり、従業員の健康やプライベートの時間が犠牲になることがあります。

これらの要素が重なることで、スタッフのモチベーションや健康に悪影響を与える可能性があります。

▶️無関心(Apathy Zone)

心理的安全性が低く、目標達成する責任が低い環境

  1. 低いモチベーション:スタッフがやる気を感じにくく、仕事に対する情熱や興味が薄れます。

  2. コミュニケーションの不足:意見やアイデアが共有されにくく、上司や同僚との関係が冷え切っていることがあります。

  3. 曖昧な目標:仕事の目標や期待が明確でなく、スタッフが何を達成すべきか分からない状況です。

  4. 評価の欠如:業績や努力が適切に評価されず、成果を出しても認められないことが多いです。

  5. 成長機会の欠如:スキルアップやキャリアの成長を支援する機会が少なく、従業員が自分の未来に対して希望を持ちにくい環境です。

これらの要素が組み合わさることで、スタッフは職場に対して冷淡な態度を取り、全体的なパフォーマンスや生産性が低下する可能性があります。

▶️快適(Comfort Zone)

心理的安全性が高く、目標達成する責任が低い環境

  1. リラックスした雰囲気:ストレスやプレッシャーが少なく、スタッフが安心して働ける環境です。

  2. オープンなコミュニケーション:意見やアイデアを自由に交換できる雰囲気があり、上司や同僚との関係も良好です。

  3. 曖昧な目標:仕事の目標や基準が緩く、具体的な成果や締め切りがはっきりしていないことがあります。

  4. 評価の甘さ:成果やパフォーマンスの評価が緩やかで、努力や業績が厳しく評価されないことが多いです。

  5. 成長機会の欠如:スキルアップやキャリアの成長を促進する機会が少なく、スタッフが自己成長に対する意識を持ちにくい環境です。

このような環境では、スタッフがリラックスして働ける一方で、仕事に対する意欲や生産性が低下する可能性があります。

▶️学習(Learning Zone)

心理的安全性が高く、目標達成する責任も高い環境

  1. 高い心理的安全性:スタッフは自由に意見やアイデアを出し合うことができ、失敗を恐れずに挑戦することが奨励されます。

  2. 明確な目標と期待:仕事の目標や期待が明確であり、高い基準が設定されています。スタッフは何を達成すべきかを理解しています。

  3. フィードバックと評価:定期的なフィードバックと公正な評価が行われ、スタッフの成長と成果が適切に認識されます。

  4. 継続的な学習と成長:スキルアップやキャリアの成長を支援する機会が豊富で、スタッフは常に学び続けることが奨励されます。

  5. 協力的な環境:チームワークが重視され、スタッフ同士が助け合いながら目標に向かって働きます。

このような職場環境では、スタッフは安心して高いパフォーマンスを発揮でき、持続的な成長とイノベーションが促進されます。

◾️さいごに

心理的安全性がある組織(チーム)とは、どのような環境なのか?についてまとめました。

心理的安全性が、「職場に信頼と協力をもたらし、社員が自由に意見を共有できる環境」の「土台」になることをみてきました。この環境下で、個々の成長と職場全体の学習が促進され、組織の持続的な成功に重要なことは、前回紹介した心理的安全性がフォーカスされるきっかけとなった、2012年にGoogleが実施した「Project Aristotle」という研究をご参照ください。

こちらの記事で、一部ご紹介させていただいております。

▶︎心理的安全性は、何をもたらすのか?

心理的安全性が組織(チーム)の学習を促進しパフォーマンスを向上させますが、学習を促進するメカニズムとして情報共有と衝突発生の頻度を上げ「失敗から学ぶ」行動を強化することも挙げられています。

出典:石川遼介.(2020).心理的安全性のつくりかた「心理的柔軟性」が困難を乗り越えるチームに変える.JMAM.

心理的安全性はチームへの満足度、エンゲージメントを向上させることが分かっています。

出典:石川遼介.(2020).心理的安全性のつくりかた「心理的柔軟性」が困難を乗り越えるチームに変える.JMAM.

これが、心理的安全性が職場にもたらす「最大の価値」だと思います。

 心理的安全性の高い組織文化では、メンバーが互いを尊重し合い、ミスや失敗を非難されることなく、自由に意見を言えるような雰囲気があることが重要です。

次回は、「快適(Comfort Zone)」と「学習(Learning Zone)」を分けるものについて、考察していきます!

◾️参考・引用

  • 石川遼介.(2020).心理的安全性のつくりかた「心理的柔軟性」が困難を乗り越えるチームに変える.JMAM.

  • エイミー.C.エドモンドソン,& 野津智子(翻訳).チームが機能するとはどういうことか : 「学習力」と「実行力」を高める実践アプローチ.英治出版.

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