リレー小説 No.11 『魔法・万華鏡』
こんにちはこんばんは、k子です。
リレー小説No.11の担当になりました。
早いものでもうNo.11です。
それでは、小説とそれに対する振り返りを書かせて頂きます。
▼今までのリレー小説はこちら
テーマ: 魔法・万華鏡
執筆時期: 2021/2/22 ~ 2021/3/25
道化のような胡散臭い風体の子供が二人。
「ガラクと!」と、ふとっちょのガラク。
「ラクタの!」と、やせっぱちのラクタ。
阿吽の呼吸で「魔法工房へようこそ!」と慣れたようにつなげる。
「さぁさ、肩で風切って歩くそこのかた」とガラク。
「ここに見えるは、魔法の万華鏡」とラクタ。
「覗けば、あなたの真に望むものが見えるでしょう」
「だけどもご注意を! なぜならこれは万華鏡」
「映るのは何重にも重なる望みの切れ端」
「誠実な心でさぁごらんあれ」
そうしてふたりは、困惑の最中にいる私に、薄汚い筒を渡してきた。
筒を覗いた瞬間、突如暗闇になり、頭上に大きな口が2つ現れた。思わず、ひっと小さな声を出してしまった。
「万華鏡からの眺めはいかが?」とガラク。
「覗くも望むも、あなた次第!」とラクタ。
よく動く口だな、そう感じた。
気を取り直して、見渡すと、鏡の世界が連なっているように、あたり一面色々な私の姿があった。
満面の笑みを浮かべる私や涙を流す私の姿、今とは違うかつての私の姿もある。
その中でひと際目を引く私の姿があった。
今とは違ってだいぶ顔にしわが刻まれてしまっている。
その姿に思いいたると万華鏡をこのまま覗いていいものか不安を覚える。
気を落ち着かせようと万華鏡から目を話すと万華鏡を渡してきた子供が陽気に話しかけてきた。
「いつだったか。父が私に向けた面影に似ている」と私。
そのシワだらけの私は、柄にもない柔和な口元をなにかに向けていた。
それは父にこそ似合えど、今の私には全く似つかわしくない姿。
貧する自身と家族ともども決別した時、一切を捨て去ったはずの弱さそのもの。
「恨まれても仕方がない、それでも私に微笑みかけた父の表情を私がしていた。……だが」
「だが?」と子どもたち
「私しか、見えなかった」
笑みを向ける対象など、どうでも良いと言わんばかりに。
思えば、どの私の切れ端も私しか映っていない。
「ならばそれが」とガラク。
「あなたの真実」とラクタ。
「それがあなたの真に望むもの」と声を揃える子どもたち。
父への反発だったかもしれない、でも満たされなかった。
「地位でも財でもない」とガラク。
それでも、がむしゃらに頑張ってきた。
「真に望むもの」とラクタ。
なんだ、とっくの昔に知っていたのだ。
「私が真に望むもの」と私。
ふと、家族の記憶で脳裏が埋め尽くされた。まるで万華鏡のように何重にも美しい思い出だった。
完
▼感想や振り返りなど
今までにはなく出だしが軽快でテンポよく始まったのが印象的でした。
リズムよくトントンと物語が先に進んでいったような気がします。
途中、出だしが面白いと感じた半面、
小説の終着点がどう落ち着いていくんだろう...?と
先が読めない作品でもありました。
そんな中でも、このリレー小説のルールとして2巡で終了させるというものがあるため、
2周目からは物語が少しずつ動いて上手くまとまったなあ...と思います。
普段、読んでる小説でもなかなかこういったテンポのよい小説に出会うことがなかったので、
メンバーの表現の幅広さにびっくりしたのと同時に、
自分もインプット頑張ろうと思った作品でした...!
ここまで読んでくださりありがとうございます!
次回の記事でまたお会いしましょう!!
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