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ひとり踊りのレッスン#03「夢に閉じこめられる」(2020年4月1日〜4月8日について)

4月1日。チーム・チープロ(松本・西本)でzoomする。散歩の記録を交換することを約束。それぞれが留まることになった特殊な状況を忘れない方がいいんじゃないか。
4月6日。2人の記録の一部をtwitterに投稿し始める。
それらを今、わたし(松本)が「ひとり踊りのレッスン(ordinary dance)」としてまとめています。

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(2020/04/08)

 60年代後半、就職や進学のために夢や希望をもった若年層が上京するようになったのだそうです。ひとり暮らしのための四畳半の木賃アパートや個室が現れたのはそのころで、人びとは自分の住まう四畳半から都市に繰り出し、自由に移動しながら生活していました。「ひとり」という状態は、そんな都市での暮らしとともにあらわれた、みんなの夢でした。

一人、孤り、独り、火取り。
夜、食べる寝るを繰り返す部屋で、都市は暗く沈んでいきます。


この時期わたしは頻繁に夢をみるようになりました。目が、息を、吸ってはくままに、お湯のはられた部屋を泳ぎ出してゆきました。のこされたからだはカレンダーにかいてあることばを口に出してみることにしました。ずいぶん奥にいたので声に出会うのはひさしぶりでした。ケトルのお湯が沸騰して細い湯気が揺らめいていました。ぬるくなった部屋にお湯を継ぎ足しました。開いた窓から老女の声が聞えます。
 声は、部屋を突っ切って玄関から出ていきました。わたしも乗り遅れないように、垂直に落下し続けるものをすくいとるように立って、玄関を出ました。広場に出て、いなくなってしまった鳩に挨拶をします。桜の花弁と砂とが一緒に吹き溜りになって、地面に近いところで渦をつくっています。春がきたんだなと思いました。
伽藍どうの電車の音にこっそり乗り込み、居眠りしていると家にいました。手洗いとうがいを20秒ずつして、上着を脱ぎ、仰向けに寝転び、さっきみた春の吹き溜りを思い出しています。わたしはずっと人びとが見てきた夢に閉じこめられています。夢は反復し、からだはそのうえをリニアモーターカーのように浮かんでいるよう。わたしは都市の動きに乗っかって「ひとり」をやっていたことに気づいています。止まるのにはすごくエネルギーがいる。ここから動き出すのにもエネルギーがいる。ベランダでかわいた花壇のなかにうずもれながら手を出して電話をとり、どう動けばいいのかきいてみても連絡がつかず。でも規則正しくおなかは空くのでした。

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4月7日、緊急事態宣言発令。

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(2020/04/07)

近所いくつかの飲食店がテイクアウトを始めていました。このひじきとツナマヨのサンドイッチは明日食べようと、自分との約束としてiPhoneで写真をとりました。

2020年7月6日
2020年11月3日追記
2021年1月8日追記

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