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ひとり踊りのレッスン#02 「とまりながらおどる」 (2020年3月28日〜4月1日について)

よくわからないウイルスを誰にもうつしたくないから、3月半ばから、県をまたぐ移動も、都内で人に会うのも控えていました。身体を整え、これまでやってきたことを繕う日々。こうして生活していてそれ以上に何かを言う必要あるのだろうか、と思っていました。

はむ

(2020/03/30)

部屋のなかで、今村夏子の「ある夜の思い出」という短編を発掘しました。

朝から晩まで寝そべる生活を送っていると、二本足で歩くことがだんだん億劫になってくる。あの頃のわたしは、なるべく立ち上がらずに、いつも腹這いで過ごすことを心掛けていた。
起きている時も寝ている時もいつも同じ格好だった。たまに床をズリズリと這ってトイレに行った。テレビやティッシュやリモコンや漫画など、生活に必要なものは全て畳の上に置いていた。お腹が空けば手の届くところに転がっているお菓子を食べた。お菓子が見当たらなければ、猫を飼っていたので猫のエサを食べた。そのついでに猫のトイレを借りることもあった。猫とはよくけんかをした。(今村夏子「ある夜の思い出」『食べるのがおそい vol.5』 pp.14-15)

うげげと心臓と顔に皺をよせながら読んでいたのを覚えています。いまは、3月末のわたしは、この腹這い的な生活をする短編のなかのわたしと、意外と近かったんじゃないかということに驚いています。

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床ーつま先ー土踏まずー膝の裏ー肩甲骨にかけてほそいほそい線がずいぶん遠くから伸びている。毎日寝ているのか起きているのかわかろうとする手前で寝たり起きたりを繰り返し、その線を頼りに、腹這いになって進んでいる。そのままの体勢で、誰かが置いてったものをさがしに部屋や近所をズリズリする。みつけたものは、じぶんの袖のなかにおさめた。鼻の横に残るだけですぐにそれは解けた。 動きながら止まっている部分に意志を置く。棒になっていく。あの竹ほうきのように立とうとする。

雪だるま1

雪だるま2

雪だるま3,4

(2020/03/29)

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あるひ夢に、ビオラが出てきて、いなくなって、大声でよんだ。出てきた。目が覚めた。
ビオラを散歩に連れて行くと、鼻を地面にズリズリすりつけて歩くことがあった。
ビオラの命日が近い。

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(2020/03/29, 04/13)

ウイルスの話が聞こえはじめてきたころ、その2ヶ月前に全身の皮膚がかゆくなった大事件を思い出していた。幼い頃から白くてまるくて卵みたいだと言われ続けてきましたので、皮膚が凸凹したり、赤くなったりするのは、他人事だった。それがある朝自分の皮膚にぜんぶ一気に現れて、途端に人と会うことが怖くなった。身体は暗くて硬くて閉じており、自分の声も聞こうとしない。

盆踊りもそうですが、季節の変わり目に、悪い霊を追い払うために工夫をするのが慣習だそうです。そう、節分とか。あの皮膚の異変は悪い霊を追い払い損ねたことが原因なのかもしれないな。今は桜が咲いて、雪が降って、いつが季節の変わり目なのかわからないな。だからといってずっと追い払い続けるのはたいへんだな。

段々日付の変わり目もわからなくなり、段々夜に眠れなくなってきた。インターネットで「眠れない 夜」と検索する。インターネットは、運動不足だと教えてくれた。

YouTubeからVogueingをならうことにしました。

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「動かすことよりも止めることに意識をむける」(05:20)


手のひらを顔に向け、肘をあげて手首を90度折ると、基本の腕の位置。
腕は、常に手首から動かしてゆく。肘は手首より下に落とさない。
まず前に。左右の手を自分の前で交差してから、
手のひらを前に押し出す。
手首から自分に近づけ、指先を天井に向けて止め、基本の位置に戻る。
次は横。基本の位置から、
手首を両脇に押し出し、指先を天井に向けて止める。
手首から自分に近づけ、指先を天井に向けて止め、基本の位置に戻る。
最後は上。左右の手を自分の前で交差してから、手のひらを上に押し出す。
指先を天井に向けてから、腕を折りたたんで止め、基本の位置に戻る。
これを繰り返します。

この腕は、何かを追い払っているのか、強く欲しがって吸い込んでいるのか…

2020年6月14日

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