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【TEALABO Channel_05】「お茶も人も成長する為には環境作りが全て」その想いに至った経緯とは-前原製茶 前原翔太さん-

鹿児島のブランド茶である「知覧茶」の作り手を直接訪ねて、その秘めたる想いを若者に届けるプロジェクト「Tealabo Channel」。

日本茶は全国各地に産地があり、各産地で気候や品種、育て方が違います。そんな違いがあるから「知覧茶」が存在します。一年を通して温暖な気候がもたらす深い緑色と甘みが特徴である知覧茶の作り手の話を皆さんにおすそ分けします。

第5回目は、前原製茶の前原翔太さんにお話をお伺いしました。

お茶の苗木を自ら育てる

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「ここで良くお茶を見ながら考え事をしたりします」そう言いながら案内して頂いたのは工場の目の前に広がる一面のお茶畑。実はこのお茶の苗木を育てているのも前原製茶の特徴の一つなんです。晴れている日は、奥の方に開聞岳を見渡すこともでき、なんともいえない絶景だそう。

といいつつお茶の苗木と言われても、ほとんど想像がつかない(笑)そんな中々見ることのない貴重なお茶の苗木を特別に見せていただきました!

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植えて1年目は黒いシートで覆われているそう。2年目以降になると、少しずつお茶の木らしさが見えてきます。2年目の苗木でも高さは大体膝下くらいの高さ。中々見れない小さいお茶の木たちを見ると、煎茶として私たちの口に入るまでの長い道のりを少しだけ想像できるかもしれません。

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鹿児島県は他の県と比べても多品種なことで有名な場所。「お茶の品種の特徴や良さをどれだけ伝えられるかが大切」苗木から育てているからこそ、他のお茶農家さんとはまた違った見え方があるのかもしれません。

後継者のバトンを若くして渡される背景

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25歳で茶業を継ぎ、現在は7年目の前原さん。ちょうど前原製茶が第三者認証(GAP)をスタートさせるタイミングで、人材が必要だったこともあり鹿児島に帰ってくることになります。

今では、メディア向けなど表に立つ際はお父様ではなく翔太さんの姿が頻繁に見受けられる前原製茶。若くして表に出ている理由を尋ねると翔太さんは答えてくれました。

父が早くして先代より茶業の後継者となり、色々な人に会って関係性を築いてきたからこそ、今度は息子の私に「前原製茶」の顔として覚えてもらえるようにしたい、そんな父の思いがあるのかもしれない。あとは、、単純に父が表に立たないからですかね(笑)

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笑いながら語る前原さんは「父がやりたいことはできるように協力するし、僕がやりたいこともやる。お互いが得意なことと不得意なこと、それぞれ活かしながらやりたいことはお互いやる」と話をしてくれました。そこには2人だからこその関係性と役割分担が見えてきました。

お茶農家さんだけではなく、どんな仕事でも家業となると父と子の関係性は複雑になってしまうことが多いと聞きます。尊重しつつ譲り合いつつ、言葉には出さずとも、大事に大事に繋がれつつあるバトン。そこにはお茶づくりだけではない「前原家らしさ」が色濃く出ているのかもしれません。

大学時代の土壌学研究と教員時代の経験の共通項

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高校まで地元鹿児島で過ごし、大学は名門である東京農業大学に進学。実はお茶農家を継ぐ前は、東京で教員をしていたというちょっと異色の経歴の持ち主。実家がお茶農家だったことと、漠然と「教員になりたい」という思いがあり進学を決めたそうです。

また、実家の助けになる勉強がしたいと大学では「土壌学」を専門に研究。論文も実家の土を使用し、土壌の成分を調査したり、土の状態を知る勉強をしていました。

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大学時代を経て、約4年間経験した教員生活時代を振り返り「今では財産にしている」と語るその姿には、教員として教壇に立ってきたからこそ見えている景色があると言います。

「教壇に立つと、生徒一人一人の手の動きがよく見えるんですよね」

何十人といるクラスの中でも馴染めない子がいたり、輪に入れていない子がいたり。勉強だけではなく、子供たちがこれから生きていくための土台になる部分を伝え共に学んでいく教育現場。

そんなリアルな現場に身を置きながら、どうにかしてあげようと思っても中々うまくいかず、生徒一人一人の今後の将来に関わってあげられない難しさも感じていたそうです。

「今後の生き方や、その子らしい人生を送れる選択肢を広げてあげれるような場所、ここだけじゃないんだよっていう環境を作ってあげたい」

「自分じゃなくてもいい、兄弟がお茶づくりをやりたいとなった時にできるような環境を用意しておきたい」

取材中に出てきたフレーズの端々には共通して、「ベースとなる環境の大切さ」を人一倍感じている前原さんだからこその言葉が多くありました。

お茶農家では珍しい教員での経験。そして大学時代の「土壌学」での学び。「お茶作り」にしろ「人」にしろ、1番大切なのは基礎基本になる環境。前原さんのお茶作りにはそんな想いが込められているのかもしれません。

自分の中のマイルール、大事なのは切り替えること


そんな前原さんですが、最近は通勤中に芸人さんのラジオを聞くことがちょっとした息抜きになっているそう。でもよくよく聞くとそこには前原さんなりのマイルールがありました。

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マイルール①
「その日の悩みはその日のうちに消化する」

マイルール②
「なるべく家庭や職場に悩みを持ち込まない」

仕事で起こる考え事や悩みは、仕事後のランニングや筋トレ、犬の散歩など、体を動かしながら自分の中で整理して反省会をするそう。時には1時間くらい走っていたなんてこともあったのだとか(笑)

通勤中のラジオにしても、体を動かしながらの反省会にしても、「1人の時間になるべく解決する、自分自身でリセットして次の行動に切り替える」という姿勢が伺えます。

危機感を持ちながらも柔軟でいたい

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 お茶用語の中に苗づくりなどで使われる「活着」という言葉があります。意味は「さし木や移植した植物がしっかり根付いて成長し続ける」ということ。まさに前原さんの目指す部分はそんな風に、「前原製茶」がしっかりと根を張り、これからも成長し続けて行くことなのでしょう。

 だからこそ、柔軟な姿勢を持ちつつ、時代に合わせて変わっていける基盤になる環境が必要なのです。現在、前原さんが力を入れているのは会社のアナログな部分をデジタル化へ移行すること。お茶作りをする上での様々な記録を数字で残し、これからの時代を生き抜くための基盤づくりに取り組んでいます。


 他にも、茶業の青年会などを通じてできるだけ県外のイベントやお茶に関わる行事に参加したり、お茶を違う視点から見るように意識していると話す前原さん。「消費者のニーズを生産者である自分たちが知っておかないといけない。自分では思い付かないような発見があるから、知っているか知らないかは違うかな」その言葉が印象的でした。

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  これからのお茶のあり方を聞くと、「お茶とアートとか、静かで綺麗な中でお茶を飲むのが素敵だと思えるような空間を作れたらいいなあ。まだ全然思ってるだけですけどね(笑)」と話してくれました。その言葉からも「柔軟でいること」を大切にしている姿が伺えます。

 そんなことを考えながら、これからの前原製茶のあり方を探っている真っ最中の前原さん、これからどんな前原製茶になっていくのか?期待が膨らみます!!

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【プロフィール】
前原 翔太(まえはら しょうた) 
有限会社前原製茶 
1989年南九州市知覧町生まれ。東京農業大学では土壌学を専攻し、卒業後は都内で教員生活を経て、家業である前原製茶にUターンし入社。自社で苗木の栽培や荒茶製造を行う。

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